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「戦略物資の国内生産の推進」や「気候変動対策」などを理由に、
米国政府はヒートポンプ式空調機メーカーに資金を提供
米国のバイデン政権は4月、戦略物資の国内生産を推進する「国防生産法(DPA)」と、過度なインフレを抑制すると同時に気候変動対策を進める「インフレ抑制法(IRA)」に基づき、ヒートポンプ式空調機の生産設備を新設・増設する企業に対して最大2億5000万ドル(約360億円)を提供する計画を発表しました。
DPAは、バイデン政権が2022年6月に発動した法律で、民間のヒートポンプ製造業者に対してヒートポンプの生産を命ずることができるものです。生産されたヒートポンプは政府が購入を保証しますが、対象は米国国内で製造されてものだけとなります。
一方、IRAは2022年8月に成立した法律です。その内容は広範囲に渡り、処方薬剤の原価を下げること、15%の最低法人税率の導入などの税制改革、クリーン・エネルギーにインセンティブを提供することによる温室効果ガスの排出削減などが盛り込まれています。
空気中から熱を汲み上げて活用する「ヒートポンプ」は、
世界のカーボンニュートラルを実現する切り札に!
ヒートポンプは、気体を圧縮すると温度が上がり、膨張すると温度が下がる性質を利用して、空気中などから熱をポンプのように汲み上げる技術です。ヒートポンプを使えば、熱を低温部分から高温部分に効率的に移動させることが可能で、身近な家電製品ではエアコンや冷蔵庫に使用されています。燃焼や電気ヒーターなどで熱を「作る」のではなく熱を「移動させる」だけなので、CO2の排出を抑えながら効率的に熱エネルギーを利用することができ、CO2削減につながる技術として注目を集めています。
米国の住宅や商業施設では、古くからボイラーを使った全館暖房やガス給湯器など、天然ガスや石油を燃やして暖房や給湯するのが主流ですしたが、最近になって米国西部・北東部地域では、新築の住宅・建築物でのガス利用を規制する動きが出ています。例えば、ニューヨーク州では5月、病院などの一部例外を除いて、新築の住宅やビルの暖房や調理器具などでガスを含む化石燃料の使用を禁止し、オール電化にすることを事実上義務づけることが決まりました。
この動きは米国だけではなくヨーロッパでも広がりを見せており、化石燃料業界からの反発が予想されるものの、ヒートポンプ式空調機などを手掛けている企業にとっては追い風になるでしょう。そこで今回は「ヒートポンプ」関連銘柄に注目しました。
具体的な銘柄選定については、ヒートポンプ製品を手掛けている企業のなかから、株価やチャート形状といったテクニカル面などを考慮しました。
【ダイキン工業(6367)】
ワシントンD.C.に省エネ技術を訴求する事務所を開設
ダイキン工業(6367)は、海外売上高比率が7割を超えるグローバル企業で、2023年6月にはワシントンD.C.にダイキン・サステナビリティ&イノベーション・センターを開設。ホワイトハウスから徒歩3分という好立地で、省エネ技術である「インバータ」や「ヒートポンプ」、低温暖化冷媒「R32」など、空調による環境負荷を低減する技術を訴求しています。8月8日に発表した2024年3月期・第1四半期決算は予想通りの進捗でしたが、通期計画を据え置いたことから先行きに対する慎重な見方につながり、株価は翌9日に10%を超える急落となりました。一気に200日移動平均線水準まで調整しており、底入れを見極めて押し目を狙いたいところです。
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【富士通ゼネラル(6755)】
ニューヨーク州で省エネ技術の実証実験を実施
富士通ゼネラル(6755)は2021年5月、米国のニューヨーク州エネルギー開発研究機構(NYSERDA)が主催する「新空調技術開発支援プログラム」において、州内の公共施設などにVRF(ビル用マルチエアコン)を活用した空調システムを設置し、ヒートポンプ技術の省エネ性を実証する実験を実施しました。株価は、7月25日に発表した2024年3月期・第1四半期決算が嫌気されて急落しましたが、その後は下げ渋る動きを見せており、目先の底入れ感が意識されます。
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【パナソニックホールディングス(6752)】
米国のカリフォルニア州政府使節団と意見交換を行う
2023年3月に米国のカリフォルニア州政府使節団がパナソニックホールディングス(6752)を訪れ、環境ビジョンや技術についての視察・意見交換を行いました。その際、同社は、独自の熱回収技術やIoTを使ったモニタリングなどにより電力負荷平準化を実現するヒートポンプ式温水給湯暖房機などの説明を行いました。株価は、7月6日につけた高値1796円をピークに高値圏での調整が続いていますが、すでに下値支持線として意識される13週移動平均線まで下げており、リバウンド狙いのスタンスになります。
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【三菱電機(6503)】
欧州の離島でヒートポンプを制御するシステムを構築
三菱電機(6503)は5月、欧州の現地法人を通じて、離島のエネルギー自立化に関する欧州での実証プロジェクト「REACT」を開始。ヒートポンプを制御するシステムをアイルランドのアラン諸島に構築し、エネルギー自立化への効果を検証する実証実験を行っています。2024年3月期・第1四半期決算は良好な進捗でしたが、株価は材料出尽くし感から利益確定の売りに押されています。しかし、下げ渋る動きも見られるので、リバウンド狙いのスタンスで臨みましょう。
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【神戸製鋼所(5406)】
CO2排出削減に関するワンストップサービスの提供を目指す
神戸製鋼所(5406)は、空気などの気体の容積を縮めて高圧にして次の工程へ送る圧縮機や、業務用空調から産業用冷却加熱まで幅広い温度範囲に対応するヒートポンプなどを手掛けています。2021年3月には、CO2排出削減に貢献するワンストップサービスの提供を目指し、ボイラー製品を手掛ける三浦工業(6005)と資本業務提携を行いました。株価は、2023年に入って強いトレンドが続いており、評価決算から一段高を見せています。過熱感が意識されやすいものの、長期的なトレンドとしては2015年2月の高値2400円が意識されるので、押し目を狙いたいところです。
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【三菱重工業(7011)】
英国の現地法人が、低炭素ソリューションで高い評価を受ける
三菱重工業(7011)は、グループ会社の英国現地法人MHIAEが2023年7月、欧州における業務用ヒートポンプに関する取り組みで「カンパニー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。「カンパニー・オブ・ザ・イヤー」は、米国を本拠とする国際的な成長戦略コンサルティングリサーチ会社フロスト・アンド・サリバンが、世界のサービスや技術などを対象に毎年選定するもので、MHIAEは、ヒートポンプ製品群による低炭素ソリューションの提供を通じ、給湯・暖房による欧州のCO2排出量低減に貢献した点などが評価されました。株価は足元で強い上昇トレンドがつづいており、2015年6月の高値8050円が視野に入ってきました。
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以上、今回はカーボンニュートラル対策として注目される「ヒートポンプ」の関連銘柄を紹介しました。
なお、国内においても住宅の省エネ化推進を目的として、経済産業省と国土交通省、環境省の3省連携により行われる「住宅省エネ2023キャンペーン」が実施されており、空気清浄機能・換気機能付きエアコンや、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入に対して補助金が受け取れます。そのため、エコキュート(電気給湯器)を手掛けている電力各社などへ物色が広がる可能性もあるので、そちらも注目しておくといいでしょう。
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