「量子コンピューター」関連銘柄を解説！ AI開発やCO2の削減、交通渋滞の解消などを加速する次世代コンピューターの開発競争で日本企業の成長に期待！

「誤り訂正」機能を持たせた「量子ビット」の開発成功で、
次世代計算機「量子コンピューター」実用化の加速に期待！

　次世代の計算機「量子コンピューター」は、従来型のコンピューターでは膨大な時間がかかってしまう処理を高速で行うことができるとして大きな期待が寄せられています。もし実用化されれば、交通渋滞の解消や二酸化炭素の削減、AI（人工知能)の開発など、私たちの生活に大きな進展をもたらすと言われています。

　量子コンピューターは世界中で開発が進められていますが、計算途中で発生しやすいエラーを修正する「誤り訂正」の機能をいかに持たせるかが実用化に向けた課題とされています。そんななか、東京大学と情報通信研究機構（NICT）などのチームは 1月19日、量子コンピューターで計算を担っている「量子ビット」に、「誤り訂正」の機能をもたせることに成功したと発表。この成功により、量子コンピューターは実用化に向けて大きな一歩を踏み出したと言えそうです。

「量子コンピューター」は、得意分野の計算であれば、
従来型コンピューターの1億倍以上の処理速度も可能！

　従来型のコンピューターは、計算を行う際に情報をすべて「0」か「1」で表し、この組み合わせで計算処理を行います。この「0」と「1」で表される情報単位は「ビット」と呼ばれます。しかし量子の世界では、「0」「1」に加え、「0でもあり1でもある」という「重ね合わせ」と呼ばれる特殊な状態が存在します。この「0」「1」「0でもあり1でもある」を用いた情報単位は「量子ビット」と呼ばれます。

　量子コンピューターは、この「量子ビット」を利用することで並列処理が可能となり、従来型のコンピューターと比較して計算の処理速度が大幅に速くなります。「膨大な組み合わせのなかから最適解を選ぶ」など得意分野の計算であれば、従来のスーパーコンピューターの1億倍以上の処理速度を実現することも可能とのことです。

　実例としては、ドイツのフォルクスワーゲンが量子コンピューターを活用し、中国の北京市内中心部と北京空港との間での渋滞緩和を目指した検証を行っています。数百万台の車両と乗客、数十億通りのルート、目的地など莫大な要因から最適なルートを割り出すのは、従来のコンピューターでは膨大な時間がかかってしまいます。しかし、膨大な選択肢のなかから最適解を導き出すのを得意とする量子コンピューターであれば、計算時間を大幅に短縮することが可能となります。

　そこで今回は「量子コンピューター」関連銘柄に注目。「量子コンピューター」に関わる事業を展開する代表的な銘柄を中心に選定しました。

【島津製作所（7701）】
量子コンピューターの実現に寄与する新技術を開発

　島津製作所（7701）と京都大学の研究グループは1月19日、波長2〜5マイクロメートル（1/1000ミリメートル）で赤外光子を発生する「超広帯域量子もつれ光源」を開発し、それを用いた量子赤外分光の実現に世界ではじめて成功したことを発表しました。この技術は量子コンピューターの実現に寄与する可能性を秘めているとのことです。株価は、上向きで推移する25日移動平均線が下値支持線として機能しており、1月11日には4282円まで買われました。その後の調整で25日・200日移動平均線を下回ってきましたので、押し目を狙いたいところです。

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【NTT（9432）】
世界ではじめて「電子の飛行量子ビット」の動作を実証

　NTT（9432）は物質・材料研究機構などと共同で、世界初となる「電子の飛行量子ビット」の動作を実証。2023年12月15日には、米国のサイエンス誌に掲載されました。将来的には、空間的に離れた量子コンピューターの接続や量子通信への応用などを目指しているとのことです。株価は、2023年9月の高値183.4円（分割考慮）をピークに調整が継続していましたが、年明け以降の強いリバウンドによって1月23日には192.9円まで買われました。足元で調整を見せていますので、25日移動平均線を下値支持線とした押し目狙いのスタンスとなります。

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【NEC（6701）】
東北大学と量子アニーリングマシンを用いた共同研究を開始

　量子コンピューターには大きく「アニーリング型」と「ゲート型」の2タイプありますが、NEC（6701）は、経済産業省の主導する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）プロジェクトに参加し、国産の量子アニーリングマシン研究開発を進めています。さらに2023年6月には東北大学と共同で、インターネット経由で量子アニーリングマシンを利用する研究を開始しました。株価は、上向きで推移する25日移動平均線が下値支持線として機能。1月23日に9468円まで買われた後は調整が続いていましたが、1月31日に急騰しています。短期的には過熱感がありますが、2003年以来となる1万円の大台回復をにらんだ押し目買いが狙い目です。

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【日立製作所（6501）】　
「シャトリング量子ビット方式」の効果を確認

　日立製作所（6501）は2023年6月12日、シリコン量子コンピューターの実用化に向け、量子ビットを効率よく制御できる「シャトリング量子ビット方式」の効果を確認したことを発表しました。量子コンピューターにはさまざまな方式が存在しますが、その中でも「シリコン量子コンピューター」は、成熟技術である半導体技術を活用することができるため、量子ビットの大規模集積化に有利な方式として期待されています。株価は、1月23日に1万1710円まで買われた後は調整を見せていましたが、足元で再度上昇に転じて上場来高値を更新。ボリンジャーバンドの「+1σ」から「+2σ」に接近していることから、押し目を拾いたいところです。

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【フィックスターズ（3687）】
量子コンピューターの活用支援事業を展開

　フィックスターズ（3687）は、さまざまなハードウェア仕様・構成でのソフトウェア開発に携わっています。量子コンピューティング活用支援としては、2021年から量子アニーリングクラウド「Fixstars Amplify」で、量子アニーリングと相互運用できるGPUベースの高性能な計算基盤を提供。富士通（6702）や日立製作所（6501）、東芝、NEC（6701）など、多くの関連企業とも協業を行っています。株価は、2023年11月から強い上昇トレンドが続いており、2月1日には一時1735円まで買われました。長期目線では2019年7月の高値2124円が意識されます。

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【テラスカイ（3915）】
子会社が、量子コンピューターを活用したビジネスの効率化を提供

　テラスカイ（3915）は子会社の Quemix（キューミックス）が、量子コンピューターや擬似量子コンピューターを活用することで、課題の最適化を行い、ビジネスの効率化を支援するサービスを提供。Google Cloudを用いての生データのフォーマット化、データをもとにしたAI分析、量子コンピュータ・擬似量子コンピュータによる最適解の算出などを手掛けています。株価は、1月16日にマドを空けて急落し、その後は25日・75日移動平均線を下回って推移しています。これまでのボトム圏で膠着した状態が続いているため、リバウンド狙いのタイミングになりそうです。

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　以上、今回は「量子コンピューター」関連銘柄を発掘しました。

　社会を大きく変える可能性を秘める量子コンピューターは世界でも開発競争が激化していますが、日本は量子コンピューターへの投資規模が世界と比べてはるかに小さく、開発競争で遅れをとっています。

　そうした状況を改善するため、政府は2020年1月に発表した「ムーンショット目標（野心的な目標）」のひとつとして、2050年を期限に「誤り耐性型汎用量子コンピューター」の実現を目指すとしています。また、2023年3月には量子コンピューターの国産初号機が、10月には2号機が稼働を開始しました。

　量子コンピューターの開発競争において、日本が世界に対抗していくための態勢が整ったと言えることから、今後の成長に大いには期待したいところです。
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