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厚生労働省が2020年9月17日に発表した「人口動態統計(確定数)」によると、2019年の出生数は90万人の大台を下回る86万5239人となり、1899年の調査開始以来の過去最少を更新しました。さらに、合計特殊出生率(15〜49歳の女性1人が産む子供の数の平均)も1.36と、前年の1.42から大きく低下しました。
こうした日本の少子化の背景には、日本がそもそも将来に希望を持てない国になってしまっていることや、実質賃金指数が低下したことなど、日本人が徐々に貧しくなってきており、多くの家庭が生活を安定させるために夫婦共働きを選択しなければならないという状況があります。さらに、核家族化が進行していることで、共働き家庭はより子供を産みにくい環境となっていることも関係しているでしょう。
現在、少子化が進むことで現役世代の社会保険料の負担は増加し、それ伴い共働き家庭が増えて、結果としてますます少子化が進むという負の連鎖が起こっています。それを証明するかのように、2019年に国連の人口部は「日本の人口は2058年に1億人を下回り、2100年には7500万人になる」との推計を発表しています。
当時の菅官房長官が不妊治療の保険適用拡大について発言すると、
株式市場では「少子化対策」関連の銘柄が軒並み急伸!
このような状況に対して、安倍政権はこれまで「希望出生率1.8」の実現を掲げて保育所の増設などに取り組み、十分ではないものの子育て支援を拡充してきました。基本的には安倍政権の方向性を引き継ぎつつ、独自路線を加えていくことになる菅政権においても、そしてその後に続く将来の政権においても、少子化対策に注力し続けていく必要があるでしょう。
すでに菅首相も少子化対策の一環として、9月17日に田村厚生労働大臣と会談した際、厚生労働省が不妊治療に公的保険を適用することを検討するように指示したと報じられました。
そこで今回は「少子化対策」関連銘柄に焦点を当てました。
「少子化対策」は、投資テーマとしては以前から存在していますが、これまでに大きく注目を集めたという印象はありません。しかし、9月8日の自民党総裁選の立候補者による演説会で、当時の菅官房長官が不妊治療への公的保険適用に関して発言した際は、「少子化対策」関連銘柄が軒並み急伸しました。
菅政権の施策に関しては、当面は助成金の拡充による支援に留まるようですが、今後の進展によっては不妊治療をはじめとした「少子化対策」関連銘柄が再び人気化する可能性は十分にありますし、菅政権の政策に関わらず、長期的な目線でも注目しておきた投資テーマと言えるので、今のうちから関連銘柄をチェックしておき、報道を注視しながら買うタイミングを見極めたいところです。
具体的な銘柄発掘の基準ですが、今回は、医薬品関連などの不妊治療に関連している企業に加え、出生率の増加で恩恵を受ける銘柄を選定しました。それぞれの株価を見ると現時点で高値圏に位置する銘柄もありますが、菅政権のスピード感を評価する声も聞かれており、押し目買い意欲は強いだろうと考えています。
【あすか製薬(4514)】
「少子化対策」関連や「不妊治療」関連の中核的な銘柄
あすか製薬(4514)は不妊治療薬などを展開しています。「内科」「産婦人科」「泌尿器科」を重点3領域に定めており、医薬品の研究開発や生産、医薬情報提供活動を実施。特に産婦人科領域においては女性ホルモンを中心とした医薬品の販売を行っており、株式市場では「少子化対策」関連や「不妊治療」関連の中核的な銘柄と見られています。
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【富士製薬(4544)】
中期経営計画で「女性医療領域ナンバー1」を目指すことを表明
富士製薬工業(4554)は不妊治療製剤などを手掛ける企業です。女性医療領域やバイオシミラー事業、海外事業、造影剤事業などを展開しており、中期経営計画でも「女性医療領域ナンバー1」を目指すことを掲げています。前出のあすか製薬同様、「少子化対策」関連や「不妊治療」関連の代表的な銘柄となります。
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【綿半ホールディングス (3199)】
グループ企業が自然由来の不妊治療薬の原料を製造
綿半ホールディングス (3199)は、ホームセンターとスーパーをかけ合わせた「スーパーセンター」やネット通販、立体駐車場をはじめとした建設事業などを展開する企業です。「少子化対策」関連としては、グループ企業である綿半トレーディングが自然由来の不妊治療薬の原料で高シェアを獲得。中国で閉経期・妊娠期の女性の尿を採集し、横浜の製薬研究所で注射剤となる原薬を製造しています。
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【ナノキャリア(4571)】
多血小板血漿(PRP)を用いた不妊治療を手掛ける
ナノキャリア(4571)は、ナノテクノロジーによる医薬品の開発を目的に設立された創薬ベンチャーで、多血小板血漿(PRP=血液を遠心分離して調製した血小板を多く含む血漿)を用いた不妊治療を手掛けています。PRP療法は、自然治癒力によってケガや病気を治療する療法で、不妊治療にも応用されています。
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【西松屋チェーン(7545)】
「出生率の増加で恩恵を受ける銘柄」として株式市場で人気化
西松屋チェーン(7545)は、子供服などを展開するほか、「赤ちゃんに届くDHA」などのサプリを扱っています。不妊治療の公的保険適用に向けた政府の取り組みが進展するというニュースが出るたびに「出生率の増加で恩恵を受ける銘柄」として株式市場で先回り的に人気化することの多い銘柄です。
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【ピープル(7865)】
「出生率の増加」に注目が集まると影響を受けやすい銘柄
ピープル(7865)は乳幼児玩具メーカーで、知育玩具やベビー玩具、自転車、ジャングルジムなどを展開しています。最近では、新型コロナウイルスの感染拡大による生活スタイルの変化に伴い、屋内遊具や幼児向け自転車の売上が好調です。「出生率の増加」が注目を集める際にはインパクトを受けやすい銘柄と言えます。
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不妊治療への保険適用拡大は、少子化という大きな問題の根本的な解決策ではなく、あくまで出生率の増加に繋がる可能性のある施策の1つでしかありません。少子化問題を解決するには、働き方を含めた社会全体の在り方を改めて見つめなおし、予算が限られている中で未だ十分とはいえない子育て支援を拡充し、この国を将来に希望が持てる国に変えていくことが重要となります。私も相場関係者としてだけでなく、一人の国民として「少子化対策」に関する今後の動向に注目していきたいと思います。
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