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米国株がようやく落ち着きを取り戻しつつあります。やはりこれは、大型経済対策で、トランプ米政権と議会が合意したことが大きいでしょう。
ちなみに、3月30日のNYダウは反発、前週末比690.70ドル高の2万2327.48ドルでした。この日は、WHOが「初期研究によると、いくつかのワクチンは新型コロナに効果があるかもしれない」と指摘したこと、さらに、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)が「9月までにワクチンの臨床試験を開始する」と発表したことなどが買い材料になりました。
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米国では2.2兆ドルの経済対策法案が成立!
4月をメドに大人には最大1200ドル、子供には500ドルを給付
ご存じの通り、トランプ米大統領は3月27日、議会が可決した2.2兆ドルの新型コロナウイルスの経済対策法案に署名し、同法は同日成立しました。対策の規模は米国のGDPのほぼ1割に相当し、まさに大盤振る舞いです。ちなみに、家計には4月をメドに大人で最大1200ドル、子供にも500ドルを現金給付するほか、失業保険も拡充します。
さらに、FRBにも4000億ドル規模の「政府保証」を与え、大企業などへの新たな資金供給を開始します。このスキームでは、一定のレバレッジを利かせることが可能なため、ムニューシン財務長官によれば、新たに資金供給できる枠は「4兆ドル規模になる」そうです。
このように、家計にも、企業の資金繰りにも対応した大型経済対策が実行されるとの安心感から、NYダウなどの株価指数は底入れを鮮明にしています。
米国の家計の金融資産は、リーマン・ショック時を上回る規模で減少!
新規失業保険申請数も328万3000件と過去最多に
ですが、ここまでの株価急落で、米国の家計の金融資産が急減しています。今年1~3月の減少額は12兆ドル程度に達し、リーマン・ショック前後の1年半に失った額(8.5兆ドル)を上回る規模だそうです。
また、3月26日に発表された米国の新規失業保険申請件数は328万3000件と、過去最多でした。そして、米国内の新型コロナの拡散を防ぐため、全米で外出禁止や渡航制限が広がり、家計や企業の経済活動はほぼストップしています。
もちろん、このような経済停止にともなう損失を補填するために先述の大型経済対策があるのですが、やはり、実際の経済・生活・生産活動がストップしたままだと、「コロナ・ショック」が発生する前のような「リスク・オン」相場にはなかなか戻れません。このため、3月30日のVIX指数は、前日比8.46(12.91%)安の57.08と、60の大台を割り込んだものの、まだまだ高水準です。
日本では「東京がロックダウンされるリスクは高い」と
多くの投資家が考えており、日本株が積極的に買われる展開は望み薄
その一方、日本では、東京都の小池都知事が3月30日夜に緊急記者会見を開き、「若者はカラオケ・ライブハウス、中高年はバー・ナイトクラブなど接待をともなう飲食店を控えて」と訴えました。
また、3月30日、ネット上で、「政府が4月1日に緊急事態宣言を発表し、2日から都市封鎖が行われる」といった趣旨の書き込みが相次いだり、同様の趣旨のチェーンメールが株クラ界(SNSにおける株式投資家のグループ)で飛び交ったりしていました。これを受け、菅義偉官房長官は30日午後の記者会見で、「そうした事実はない。明確に否定しておく」と語っています。
しかしながら、東京を中心に日本国内での新型コロナ感染者数の増加に歯止めが掛かっていないため、いずれ近い将来、安倍首相が「緊急事態宣言」を出し、その後、東京がロックダウンされるリスクが高いと多くの投資家は考えているようです。このため、日本株については、上値が積極的に買われる展開は望み薄でしょう。
欧米の経済活動が「コロナ・ショック前」に戻るには時間が必要。
そのため世界の株式市場は当面、上値が重たい状態が続く
なお、世界の感染事情について、WHOのテドロス事務局長の上級顧問を務める渋谷健司氏は、「(ピークは)イギリスにおいては、やはり5月6月以降だと思いますけれども、欧州においては、これから1~2カ月の間、社会的隔離が緩くなると、また感染拡大が戻る可能性が大きい」と指摘しています。
また、英国のジェニー・ハリーズ副首席医務官は3月29日、感染拡大防止のための外出制限措置は半年以上続く可能性があるとの見解を表明しています。つまり、欧州が普通の生活に戻るのは相当先になりそうです。
一方、米国でも、これまで4月12日の復活祭までに経済を正常化させたい意向を示していたトランプ大統領が、それを撤回し、3月29日、国民に対する外出などの行動自粛要請について4月30日まで延長する方針を明らかにしています。
また、ファウチ国立アレルギー感染症研究所所長は3月29日、米国で数百万人が新型コロナウイルスに感染し、10万~20万人が死亡する可能性があると警告しています。米国東部時間の3月30日夕方時点における米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米国の感染者数は16万人を超えました。ファウチ国立アレルギー感染症研究所所長の予想通りになるようなら、米国ではまだまだ感染者数が増加する見通しです。
米国では、ネバダ州やアリゾナ州など7つの州以外の全州で外出制限令が発令されています。正直、米国に関しても、今回延長された4月30日で、行動自粛をする必要がなくなるのかは微妙な情勢といえます。
つまり、欧米ともに、市民の生活や企業の生産活動などが「コロナ・ショック」が起こる前の姿に戻るには相当な時間が必要であり、「人類と新型コロナウイルスの戦い」は長期戦になるとの覚悟が必要ということです。これが、当面の世界の株式市場の上値を圧迫することになるでしょう。
中国では感染拡大がピークアウトし、景気回復への期待が高まるが、
「中国は自国の感染者数について嘘をついている」との指摘も
その一方で、中国では感染拡大がピークアウトしています。このため、3月31日に発表された3月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、過去最低だった前月から16.3ポイント上昇の52.0と、2017年9月の52.4以来の高水準でした。また、同時に発表された3月の非製造業PMIは、前月から22.7ポイント上昇の52.3でした。
この好調なPMIを受け、市場では、中国の景気が新型コロナウイルスによる落ち込みから回復に向かうとの期待が高まりました。これは、世界の株式市場の下支え要因になる見通しです。
ただし、「中国の感染者数は発表されている数の最大で40倍にのぼる可能性がある」との科学者からの警告を受け、英国のジョンソン政権は「中国が新型コロナウイルスに関して誤った情報を拡散し、自国の感染者数について嘘をついている」と非難しているとの報道もあります。このため、「中国は感染拡大を隠蔽しているのではないか」とか「発表された3月のPMIの数字は本当に信用できるのか」という一抹の不安があることは事実です。
日経平均株価が終値で25日移動平均線を超えれば、
「半値戻し」も期待できる!
最後に、当面の日経平均株価に関してですが、1月17日の2万4115.95円から3月19日の1万6358.19円までの下落幅は7757.76円、下落率が32.17%でした。この38.2%戻しは1万9321.65円ですが、3月25日に1万9564.38円まで上昇し、これはすでに達成済みです。よって、次に意識されそうなのは半値戻しの2万237.07円です。
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ただし、25日移動平均線は3月30日時点で1万9641.86円です。日経平均株価が終値で明確に25日移動平均線を超えるまでは、半値戻しは期待できそうにありません。25日移動平均線を下回っている間は、調整が継続中だと見ています。
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