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今回の新型コロナウイルス騒動は、世界、そして日本の様々な問題点を浮き彫りにしました。企業活動に関わる部分で言えば、「サプライチェーンの脆弱性」がそのひとつとして挙げられます。
「世界の工場」とも呼ばれている中国の経済活動が、新型コロナウイルスの感染拡大により停止したことで、多くの製品の供給が危機に陥りました。そこで、生産拠点の集中度が高い製品・部素材、または国民が健康な生活を営むうえで重要な製品・部素材について生産拠点の国内回帰を図るべく、令和2年度の補正予算には、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」(2200億円)が盛り込まれました。
さらに令和2年度の補正予算には、「脱中国」という観点から、ASEANでのサプライチェーンを強靱化するための「海外サプライチェーン多元化等支援事業」(235億円)も採用されています。
国がこうした支援策を用意しても、今のところ、現在のサプライチェーンを劇的に変化させることを表明する企業は限られています。もちろん、見直しの議論は各所で進んでおり、一段の多角化に動いている企業も多いのですが、現実問題としてグローバルに拡大・存在している既存の枠組みを大きく変更することは、非常に大きな困難を伴います。
ただ、ここに来て米中の対立が再燃し、中国が軍事面や政治面において強硬な姿勢を見せ始めている中、今後サプライチェーンの姿が大きく変化していくことは間違いないでしょう。特に、生産拠点の国内回帰という流れにおいては、人員削減を含む自動化による生産効率の上昇だけでなく、今回のようなウイルス感染の対策という観点からも、製造面の安定性を高めるために中長期的な「FA(Factory Automation)=工場の自動化」の需要拡大が期待できます。
「FA」関連銘柄は、足元でこそ自動車産業の不振がマイナス要素だが、
中長期的には需要拡大が期待できる!
決算発表シーズンのピークを通過し、新型コロナウイルスの影響から決算発表を延期していた企業についても、概ね決算内容が出揃ってきました(今期見通しは非開示の企業も多いのですが)。先ほど中長期で需要増が期待されると書いた「FA」関連については、大手関連会社の業績が伸び悩んでいます。その一因となっているのが、自動車業界の苦戦です。
例えば、自動車向け製品の比率が高いファナック(6954)では、2020年3月期にFA 部門の連結売上高が前期比 32.1%減の1432.47億円でした。ロボット部門やロボマシン部門を入れるとさらに厳しい状況です。2021年3月期の上期予想も、売上高(全社)が前期比24.2%減の1979億円、営業利益(全社)が同61.4%減の189億円を計画しています。また自動車メーカー本体も、下期からの緩やかな回復期待はあるとはいえ、言うまでもなく厳しい業績予想を示しています。
一方で、中長期的に見ると、前出の政府支援が後押しする形で、物流インフラなどの「FA」関連を手掛けている企業は需要増大が見込まれます。
また、「FA」関連を取り巻く市場環境としては、新型コロナウイルスの影響以外に、災害問題も挙げられます。もともと台風や地震などが多発する日本では、災害によりサプライチェーンが寸断されるリスクがあると言われています。そのことがあり、これまでのように効率優先で大型の物流施設を1カ所に集中させていた流れから中規模の物流施設を各地に配置する流れに変わりつつあります。
【※「物流」関連銘柄の詳細記事はこちら!】
⇒「物流」関連の銘柄に注目! 新型コロナのピークアウトが見えてきた今、経済活動の再開による活性化が期待できる「運送会社」や「物流施設」関連株を紹介
「生産拠点におけるモノの移動」に関わる「マテハン」は、
工場や物流拠点の生産性を左右する重要な要素!
これらの状況を踏まえつつ「FA」関連に注目したいと思いますが、「FA」関連という括りだと対象銘柄が広がりすぎてしまいます。そこで今回は、その中に含まれる「マテリアルハンドリング(Material Handling)」、通称「マテハン」の関連銘柄に焦点を当てました。
「マテハン」は、「生産拠点や物流拠点における、原材料や部品、製品など、モノの移動に関わるすべての作業」を意味します。具体的なイメージとしては、材料を用途別に仕分けして保管したり、組み立て中の部品をカートに載せて工場内を移動させるといった作業になります。こうした「マテハン」が効率的に行われているかどうかで、工場の生産性が大きく変わることは言うまでもないでしょう。
具体的な「マテハン」関連銘柄は、以下の8銘柄です。
【ダイフク(6383)】
「マテハン」分野の世界的リーディングカンパニー
ダイフク(6383)は物流システムを手掛けており、「マテハン」分野では世界トップクラスの企業です。パレットタイプの自動倉庫や、ビルと一体化した立体自動倉庫などを手掛けています。2021年3月期見通しとして、売上高が前期比3.7%増の4600億円、営業利益が同1.2%増の410億円と堅調な業績見込みを示しています。ダイフクは、基本的に物流の自動化需要を強く引き寄せることができる企業だと、市場では高く評価されています。ただ、弱点として海外の利益率が国内と比べて相対的に低いことが挙げられるため、保有後は海外利益率改善の動きに注目するといいでしょう。
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【コンテック(6639)】
「スマート農業」「社会インフラ」など、幅広いテーマ性が魅力
コンテック(6639)は、前出のダイフクの子会社で、産業 IoT・計測制御・組み込み用コンピュータなどを手掛けています。「マテハン」関連としては、無線LANソリューションや在庫管理システム、音声対型ピッキングシステムなどの物流ソリューションを扱っています。ダイフクの子会社ということで、固定イメージを持たれがちですが、計測制御の技術を用いて「スマート農業」に貢献したり、IoT技術で「社会インフラ」に貢献したりと、幅広いテーマ性を持っていることが特徴です。
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【椿本チエイン(6371)】
当面は自動車部品事業が重しだが、今後の成長は期待できる
椿本チエイン(6371)は、ベルトコンベアに流れてくる背品を仕分けするソーターの製造・販売だけではなく、物流の少人化や効率化を実現する搬送システム全体の提案を手掛けています。椿本チエインの「マテハン」事業は、直近はもちろん中長期的にも成長が期待できます。ただ、コロナ禍で自動車生産台数の落ち込みが続いている影響もあり、自動車部品事業が当面の重石になる可能性が高いため、自動車の生産販売状況を追っていく必要があるでしょう。なお、2021年3月期の予想は非公表としています。
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【西部電機(6144)】
売上高構成比率のバランスが取れている点に安心感
西部電機(6144)は、立体自動倉庫やコンテナ積み下ろしロボットシステムなどの物流システムを手掛けています。基本的に搬送機械事業を中心としつつ、産業機械事業、精密機械事業の3セグメントで売上高構成比率のバランスが取れている点は安心感があります。なお、2021年3月期は中期経営計画「チャレンジ240」の締めくくりに当たります。その名の通り、240億円を売上高目標として掲げており、新型コロナウイルスの影響がある中でそこを達成できるかが注目されています。
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【キトー(6409)】
第1四半期決算の時期に開示予定の「通期見通し」に注目
キトー(6409)は、ホイストというワイヤロープで重量物を上げ下げする機械やチェーンブロックに強みがあります。前出の西部電機で売上高構成比率のバランスに言及しましたが、キトーはグローバル展開が進んでおり、販売地域や顧客の分散ができている点が強みです。また、中国を含む東アジア地域では、新型コロナウイルスの影響から回復基調にあるとのこと。第1四半期決算の時期を目途に通期見通しを開示する方針とのことなので、要注目です。
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【サトーホールディングス(6287)】
物流現場における「働き方改革支援サービス」を提供
サトーホールディングス(6287)は、ハンドラベラーやバーコードラベルプリンタなどを手掛ける企業で、「マテハン」関連としては物流現場における働き方改革支援サービスを提供しています。バーコードや2次元コードなどを活用した自動認識ソリューションにより、需要予測や生産管理、物流管理を支援します。株価は、3月17日の安値1778円を底値に緩やかなリバウンド基調が継続しており、直近では75日移動平均線を突破してきました。なお、2021年3月期見通しは非公表としています。
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【三機工業(1961)】
上昇トレンドが続き、「ゴールデンクロス」が発生
三機工業(1961)は、空調設備や照明設備などを手掛ける企業で、「マテハン」関連ではコンベアなどの搬送システムを手掛けています。株価は、3月13日の安値1047円を底値に緩やかな上昇を続けており、直近では75日移動平均線を突破。25日移動平均線と75日移動平均線とのゴールデンクロスが発生しています。
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【トーヨーカネツ(6369)】
前期と変わらずの100円の配当予想を維持
トーヨーカネツ(6369)は、「運用設計」と「情報システム」「マテハン設備」を融合させた物流システムを構築。仕分けシステム、保管システム、物流センター管理システムなどを展開しています。主力の物流ソリューション事業の受注が好調に推移しており、不透明な事業環境の中でも一定の安心感があるほか、配当予想も前期と変わらずの100円を維持していることもポジティブな材料です。株価は、3月13日の安値1612円を底値に緩やかなリバウンドが続いており、直近で75日移動平均線を突破してきました。
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なお、各社の2021年3月期の決算発表を見ると、予想非公表の企業や苦戦する企業もありますが、「マテハン」関連銘柄は、中長期的な目線で分析をしてみることをおすすめします。
緊急事態宣言解除から経済再開の流れになったからと言って、企業の設備投資計画が一気に進む可能性は低そうですが、現在のサプライチェーンの脆弱性を考慮すると「物流」関連の需要は高まりやすいと考えられます。その流れから、今回の「マテハン」関連以外にも、「物流倉庫・物流設備」や「3PL(サードパーティー・ロジスティクス)」といった「物流」関連事業を展開している企業は幅広く注目しておきたいところです。
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