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政府は5月25日、ついに東京など5都道県への緊急事態宣言を解除しました。これで、4月7日に発令された宣言は、約7週間ぶりに全面解除となりました。この解除をもって、政府は経済活動再開へ軸足を移します。
政府は7月末までを移行期間として、外出の自粛や施設の使用制限の要請などを緩和しながら、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げる方針です。このように、政府が経済重視のスタンスを明確にしたことは日本株には強烈な追い風です。
政府による「第2次補正予算案」は100兆円規模!
大規模な財政出動は、日本株にとって強烈なサポート材料に
緊急事態宣言の解除後は「社会・経済活動を段階的に引き上げて、コロナ時代の新たな日常を作り上げる」というのが政府の方針です。
安倍晋三首相は5月25日の記者会見で、「ガイドライン(各業界が作成する感染防止指針)に沿った感染防止の取り組みに100%を補助する」「テレワークはコロナ後の世界でも大きな働き方の柱になる」などと述べています。このため株式市場では、企業や家計部門がコロナ感染防止策を講じることでメリットを享受する企業や、テレワークのさらなる普及と定着がメリットになる企業が「国策銘柄」としてロングランで物色されることでしょう。
また、5月24日、「政府は2020年度第2次補正予算案の事業規模を100兆円超とする調整に入った」と一部で報じられました。27日に閣議決定するとのことですが、今回、真水(政府による直接支出)をいくらにするかは調整中だそうです。今回の補正では、企業の財務基盤を安定させると同時に、休業者向けの給付の拡充や、医療の支援を強化することが柱になるもようです。過去最大だった4月の第1次補正予算を含む約117兆円の対策に続き、このような大規模な財政出動が実行される見通しとなったことは、日本株にとっては強烈なサポート材料といえるでしょう。
さらに5月25日には、政府が、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた国内旅行や飲食店で使えるクーポン券を7月下旬から発行する方針を固めたと報じられました。観光業や飲食業の支援策は「Go To キャンペーン」と題され、国内旅行の支援策では、旅行代金の半額を最大2万円まで補助したり、土産物店や観光施設などで使えるクーポン券を配布したりするそうです。政府は、自由な移動が可能になると見られる8月の夏休みを見据えて準備を急ぐとのことで、これもポジティブな材料です。
なお、緊急事態宣言が首都圏などでも解除されることに伴い、飲食業界では、営業自粛の緩和に向けた動きが始まっているとも伝わっています。例えば、くら寿司(2695)では、現在、東京と神奈川で午後8時までとしている営業時間を、5月26日以降、順次、午後10時までに延長する予定だそうです。また、串カツ田中(3547)でも同様に、自治体のガイドラインに沿って営業時間を延長していく方針ということです。
なお、一般社団法人日本フードサービス協会が5月25日発表した4月の外食産業売上高は、前年同月比39.6%減とマイナス幅は3月の17.3%減を上回り、単月として過去最大でした。なかでもパブは前年比95.9%減、居酒屋は90.3%減、ディナーレストランは84.0%減、喫茶は72.4%減と、それぞれ壊滅的な打撃を受けました。
「緊急事態宣言の全面解除」などにより、
新型コロナでダメージを受けた業種が買い戻される流れに
緊急事態宣言の全面解除や第2次補正予算案の大規模化、「Go To キャンペーン」、営業時間の延長(営業活動の正常化)などの各種報道を受け、5月25日の東京株式市場では、エアトリ(6191)、鳥貴族(3193)、一家ダイニングプロジェクト(9266)、KNT-CTホールディングス(9726)、エイチ・アイ・エス(9603)といった、新型コロナウイルス拡大と経済活動の自粛で最も手痛く、直接的且つ致命的なダメージを被った旅行・飲食関連の銘柄群が大幅高となりました。ちなみに、この日の業種別株価指数(東証33業種)では、空運業が前週末比で8.36%上昇し、値上り率トップでした。
目先の物色傾向に関しては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の自粛で、業績面で直接的、致命的なダメージを被ったため、株価が相対的に出遅れている旅行、飲食、イベント企画などのセクターが買い戻される見通しです。
一方、経済自粛が業績面でメリットになると見られている「巣ごもり消費」「ゲーム」「電子書籍」、そして「テレワーク」関連などの「ウィズ コロナ銘柄群」は、利食い売りが優勢になり、“スピード調整入り”する可能性が高そうです。しかし、これは健全な循環物色と言えるでしょう。
「ウィズ コロナ」銘柄群に関しては、過熱を冷ますスピード調整が入ることで、むしろ上昇相場が長続きしやすくなると考えます。一方、出遅れ銘柄の株価水準の訂正が加速すれば、当該銘柄群を保有し、これまで多額の評価損に苦しんでいた投資家のマインドも回復してくるはずです。その結果、日本株は全体的に底上げされ、多くの投資家の手の内が改善してリスク許容度が高まるため、「強気相場」は継続することになると見ています。
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「米中の対立激化」が株価上昇を阻害する大きな懸念材料に!
「香港国家安全法」の導入に対し、米国が中国に制裁を科す可能性も
ただし、相場の「ノイズ」になりそうな大きな懸念材料がひとつだけあります。それは「米中の対立激化懸念」です。
米上院本会議は5月20日、中国企業を念頭に、米国に上場する外国企業に経営の透明性を求める「外国企業説明責任法」を可決しました。さらに、米商務省は22日、新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧や米国技術の軍事転用に関わっているとして、中国の政府機関やハイテク企業など計33団体・企業に対して事実上の禁輸措置を発動すると発表しました。
一方、中国は5月22日開幕した全人代で、香港の社会統制を強める「香港国家安全法」を制定すると発表しました。これを受けて香港では24日、数千人規模のデモが発生しました。そして、オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は24日、香港へ国家安全法制を導入すれば、米国は中国と香港に制裁を科す可能性があると述べました。
これら一連の動きや報道を受け、市場では米中摩擦の激化が懸念されているのです。現時点のレベルなら株式市場は動揺しないとは思います。しかしながら、一段とヒートアップするようだと、買い方に利食い売りの格好の口実を与えることになりかねないので、警戒だけはしておきましょう。
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