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米国市場では、第2四半期の決算発表シーズンがスタート!
滑り出しは好調だが、好決算に対して株価の反応はいまひとつ
米国の株式市場では、2021年第2四半期の決算発表シーズンが始まっています。これまでにS&P500採用銘柄の8%の企業が決算発表を終えましたが、そのうち予想を上回ったのはEPS(1株当たり利益)で全体の85%、売上高で90%でした。つまり、滑り出しはすこぶる好調です。EPSのポジティブサプライズ幅も22.9%と大きく、市場予想を凌駕しています。
しかし、それにもかかわらず、ポジティブサプライズを出した企業の株価は決算発表の前後2日間の通算で+0.5%しか上昇しておらず、普段(+0.8%)よりも好決算に対する反応は鈍いです。それは今回、好決算が出ることを市場参加者はとっくに見越しており、株価に織り込み済みになってしまっていることを示唆しています。
「台湾セミコンダクター」の決算は市場予想を下回ったものの、
単に市場予想が高すぎただけで、会社側のガイダンスは無事達成
ここまでの決算発表で最も注目を浴びたのは、台湾セミコンダクター(ティッカーシンボル:TSM)でした。
EPSは予想5.24NTドル(新台湾ドル)に対して5.18NTドル(ADR換算で93セント)、売上高は予想3725.8億NTドル(米ドル換算で132.9億米ドル)に対して3721.4億NTドル、売上高成長率は前年同期比+19.8%でした。
つまり、EPSでも売上高でも市場予想を下回りましたが、その原因は、そもそもアナリストの期待が高過ぎたからです。
実際、会社側は第2四半期の売上高ガイダンスとしてかねてから129億〜132億米ドルを提示しており、今回の結果の132.9億米ドルはその数字をちゃんと上回っています。強いて言えば、グロスマージンは、ガイダンスの中値50.5%に対して結果50.0%と少し届きませんでした。しかし、会社側はきちんと自分の約束したことは達成しており、悪いのは無節操に楽観的な展望を持ちすぎたアナリストたちのほうだと思います。
なお、昨今の車載半導体を中心とする半導体全般の品薄に関して、台湾セミコンダクターの経営陣は「この先、需給バランスは改善し、それに伴って調整局面が訪れるかもしれないが、構造的に5Gなどで半導体への需要が底上げしている関係から調整はいつもより浅い」との考え方を披露しています。
主要メガバンクの決算は楽々と予想を上回ったものの、
すでに織り込み済みなのか、株価の動きは冴えない状態
一方、ゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)、JPモルガン・チェース(JPM)、バンクオブアメリカ(BAC)、シティグループ(C)、モルガン・スタンレー(MS)といったメガバンクの決算も出揃っており、バンクオブアメリカが売上高で予想を下回ったほかは、すべてのメガバンクがEPSでも売上高でも楽々と予想を上回りました。
とりわけ消費者や企業を相手にした商業銀行部門では、貸付の内容が健全で、貸倒引当金を多く積む必要がなかったことが業績に寄与しました。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、消費者が預金を増やしている一方で、借り入れの需要は低迷しており、各行とも貸付余力がありすぎて、それを持て余している状況になっています。しかし、経済再開が進んで消費が復活してきているので、この問題は徐々に解消してゆくと予想されます。
一方、企業に対して株式・債券の発行やM&Aの助言をする投資銀行ビジネスは、現在は好調なものの、そろそろピークを迎えそうな雰囲気になっています。
下は、メガバンク各行の投資銀行フィーをまとめたグラフです。
投資銀行のもうひとつの主要業務は、市場部門と呼ばれる債券や株式のトレーディングです。メガバンク各行の市場部門の売上高は、下のグラフのようになっています。
同じ市場部門のデータを前年同期比で示すと、下のグラフのようになります。シティグループとバンクオブアメリカの株式部が好調だったことが読み取れる一方、債券部のトレーディングは各行とも低調でした。
いずれにせよ、各行とも決算発表後の株価の動きは冴えませんでした。それは、投資家が好決算を見越して「理想買い、現実売り」に転じていることを示唆していると思います。
今が株式市場のすべてがバラ色に見えるかもしれないが、
ここがピークで、秋以降はかなり厳しい相場になる可能性も!
今回の決算発表シーズンでは、対前年比での目標達成が簡単なことも手伝って、EPSが+70%近く成長する企業が続出しています。市中金利も極めて低い水準にあることから、株式バリュエーションを決定する主な要因はすべて良好です。
しかし、それにもかかわらず株価が上昇しあぐねているのは、すでにそれらの好材料が一通り株価に織り込まれてしまっているからかもしれません。
ちなみに、S&P500指数の向こう12カ月のEPS予想に基づいた株価収益率(PER)は21倍です。これは、過去平均に比べると割高な水準です。
さらに、現在は株価の先行きに関して楽観的な意見を持っている投資家が多いです。とりわけ機関投資家に比べると、個人投資家のほうがはるかに強気な相場観を持っています。
足下のインフレ率が5.3%であることを考えると、連邦準備制度理事会(FRB)は、この夏から秋にかけてのある時点で金融の引き締めに転じないといけません。また、第3四半期以降は企業業績の前年比較もだんだん厳しくなります。つまり、今はすべてがバラ色に見えている楽観のピークなのです。
現在は相場にモメンタムがあるので、7〜8月のマーケットは何とか持ちこたえるかも知れませんが、FRBが緩和から引き締めに転じる秋以降の相場は、かなり厳しいと覚悟したほうがいいでしょう。
実際、ラッセル2000指数のような小型株指数は、3月以降ずっと頭打ちです。小型株は「炭鉱のカナリヤ」のごとく、景気暗転の先行指標の役目を果たすことで知られており、その小型株が上昇しなくなっているということは、いずれ景気全般も暗転するリスクを孕んでいると思います。
今は、アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)、アップル(AAPL)、アルファベット(GOOG)、フェイスブック(FB)、マイクロソフト(MSFT)などをポートフォリオのコアとしてしっかり残しつつ、泡沫的で投機色の強い材料株はどんどん整理・処分すべき局面と考えましょう。
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