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民泊マーケットプレース企業のエアビーアンドビーは
上場申請書類を提出し、ナスダック市場への上場を発表!
11月16日、民泊のマーケットプレース企業、エアビーアンドビー(Airbnb、ティッカーシンボル:ABNB)が、米国証券取引委員会に新規株式公開(IPO)の書類を提出しました。上場先はナスダックで、主幹事はモルガンスタンレーとゴールドマンサックスです。
米国では今週、サンクスギビング(感謝祭)がある関係でいまだロードショーはキックオフされておらず、したがって細かい発行条件も決まっていません。ただ、上場書類からエアビーアンドビーのビジネスの近況を窺い知ることができるので、今回はそれについて解説したいと思います。
エアビーアンドビーの掲載物件は740万件あり、
2019年の1年間で3.27億泊もの利用実績が!
エアビーアンドビーは、2007年にサンフランシスコで創業された民泊のグローバル・マーケットプレースです。
エアビーアンドビーでは、自分の家を宿泊者に提供したいオーナーのことを「ホスト」と呼びます。2020年9月30日時点で、世界には400万人のホストが居ます。ひとりで複数の物件を所有し、エアビーアンドビーでそれを貸し出している人もいるので、掲載物件数は740万件となっています。そのうち560万件がアクティブに稼働している物件です。
こうした貸し物件は、一部屋だけの場合もあれば、一軒家やリゾートのラグジャリー・ヴィラ、ツリーハウスなどもタイプがあり、バラエティーに富んでいます。世界の220カ国、10万もの町でエアビーアンドビーの掲載物件が存在します。
宿泊客は「ゲスト」と呼ばれ、2019年の1年を通じたゲスト到着数は2.47億回、年間宿泊日数は3.27億泊でした。
2019年の売上高のうち63%は、米国の掲載物件から上げられました。2019年のグロス・ブッキング・バリュー(GBV=総宿泊料)は380億ドルで、前年比+29%でした。
なお、GBVはエアビーアンドビーの売上高とは別物です。エアビーアンドビーは、ホストやゲストから徴収するフィー(手数料)を主な収入源としています。架空の例で説明すると、ホストからは宿泊料の3%、ゲストからは宿泊料の16%を徴収する物件があったとします。その16%のうち4%前後は宿泊税で、その分はエアビーアンドビーから市町村などの納税先に右から左へと納税されます。
すると、一晩の宿泊料が100ドルだとすれば、宿泊税を抜いたエアビーアンドビーの売上高はホストから3ドル、ゲストから12ドルの合計15ドルという計算になります。エアビーアンドビーの損益計算書には、この15ドルだけが記載されるわけです。
エアビーアンドビーの年間売上高は、下のグラフのように推移しています。
2020年は新型コロナウイルスの影響で苦戦する中、
オフィス代わりのリモートワーク利用を積極的に推進!
今年は新型コロナウイルスの関係で、春先から旅行がパタリと止まりました。したがって、今年に入ってからの四半期宿泊日数は、その悪影響を受けています。
2020年第3四半期に宿泊数が反発している理由は、「リモートワークのために宿泊先をオフィス代わりに使おう!」というキャンペーンが功を奏したことによります。
エアビーアンドビーの収益は、まだ安定しているとは言い難いです。利益の尺度のひとつとして修正EBITDA(利払い、税金、償却前利益)を見る方法がありますが、2019年は大幅な赤字でした。
今年にはいってからのEBITDAのトレンドも、あまり芳しくありません。
第3四半期に修正EBITDAが5億ドルの黒字になったのは、上に書いた通り、リモートワークで自宅が手狭になった人が、近所の物件をオフィス代わりに借りたことが要因です。これは、新型コロナウイルスが終息すればなくなる需要だと考えるべきです。
つまり、新型コロナウイルス向けワクチンが承認され、普通の暮らしが戻ってきた場合、エアビーアンドビーは以前と同じように旅行による宿泊者を獲得しないといけないということです。その点、エアビーアンドビーのトラックレコード(過去の実績)はあまり感心しません。
エアビーアンドビーのもうひとつの問題点として、リピート・ゲストが2年目で36%に過ぎないという点を挙げるべきだと思います。これは、ゲストの旅行回数にも因ると思いますが、宿泊者の立場から見て満足度が低いのが原因かもしれません。
エアビーアンドビーに関する投資リスクには、
民泊を巡るトラブルや事件が発生する可能性も
エアビーアンドビーの売上高成長率は、新型コロナウイルスの影響で大きく鈍化しましたが、これが元に戻る保証はありません。いまはホテルもガラガラなので、ホテルの予約が一杯であることが原因で民泊に流れてくるゲストは期待できません。
民泊のビジネスが儲からないようになると、廃業するホストが出てくる可能性もあります。
また、宿泊を巡るトラブルや事件などでエアビーアンドビーが訴訟されるリスクもあります。実際、ホストの一部には、偽物件を掲載して客寄せをした後、別の物件にゲストを案内するなどの悪質な不正も報告されています。
さらに、民泊のビジネスはさまざまな規制を受けており、ルール変更によってエアビーアンドビーが不利になるリスクもあります。
【今週まとめ】
エアビーアンドビーは今年最も注目されるIPOだが、
あわてて投資する必要は感じない
エアビーアンドビー(Airbnb)は、今年最も注目されるIPOのひとつです。しかし、これまで書いてきたように、エアビーアンドビーの業績はかならずしも良くはありません。リモートワークの関係で近場の物件をオフィス代わりに借りる利用者が多いことに助けられ、かろうじて第3四半期は修正EBITDAベースで黒字化していますが、今後も黒字を維持できるとは限りません。
以上を踏まえると、エアビーアンドビーは慌てて飛び乗る必要はないIPOだと思います。
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