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8月26日のパウエルFRB議長の講演をきっかけに
日経平均株価はボックス下限を下抜けて急落!
前回(8月23日)の当コラムで、以下のように書きました。
〜最下層からの成り上がり投資術!(2022年8月23日号)
そして8月26日、実際に米国株が急落し、週明け29日の東京株式市場も大幅安に見舞われました。
8月26日のNYダウは3日ぶりに大幅反落し、前日比1008.38ドル安の3万2283.40ドル。下げ幅、下落率ともに今年3番目の大きさでした。また、ナスダック総合株価指数も3日ぶりに大幅反落し、前日比497.555ポイント安の1万2141.710ポイントでした。
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この急落を受けた8月29日の日経平均株価の終値は、前週末比762.42円(2.66%)安の2万7878.96円と大幅に下落。ボックス下限(サポートライン)と見ていた25日移動平均線(29日時点で2万8245.48円)をあっさりと割り込みました。なお、翌30日の終値は、前日比316.62円(1.14%)高の2万8195.58円と上昇しましたが、依然として25日移動平均線(30日時点で2万8265.33円)を下回っています。
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8月26日の米国株急落のきっかけは、カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でのパウエルFRB議長の講演です。議長は「インフレを抑え込むには家計や企業に何らかの痛みをもたらすことになるが、それは避けられないコストだ。ただ、物価の安定を取り戻すことに失敗すればもっと大きな痛みを伴うことになる」と発言。さらに、記録的なインフレを抑え込むための金融引き締めについて「やり遂げるまでやり続けなければならない」と述べたことで、高い政策金利の水準が市場の想定よりも長く続くとの見方が強まり、リスク資産である株式が大きく売られました。
パウエルFRB議長の「タカ派スタンスの発言」について
すでに株式市場は織り込み済みだった!?
しかし、8月26日の米国株の急落は、個人的には意外でした。というのは、ジャクソンホール会議の前から、複数のFRB高官がタカ派スタンスを維持する発言を繰り返していたので、議長がタカ派的な内容の講演を行うことを市場は織り込み済みと考えていたからです。
例えば、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は8月10日、「フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジについては、年末までに3.9%、2023年末までに4.4%への上昇を見込む」としていました。また、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、8月11日に「インフレとの戦いで勝利を収めたと宣言するには早すぎる」と述べ、次回9月のFOMCでは0.5%の利上げが「ベースライン」としつつも0.75%の利上げを否定しませんでした。そして、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は8月24日、「連邦準備制度は政策金利を景気抑制的な水準まで引き上げておらず、当面は4%を上回る地点に持っていく必要があるかもしれない」と語っていました。
ちなみに、ジャクソンホール会議の直前・直後ともに、市場は次回9月20~21日のFOMCにおける「0.50%または0.75%の利上げ」を織り込んでいます。会議の後、これが「0.75%または1.00%の利上げ」に予想引き上げ幅が切り上がったのであればまだ理解できますが、米国の金利先物相場の値動きから利上げ確率を算出する「Fedウオッチ」を見ると、「0.50%」よりも「0.75%」の利上げに動く確率が高くなっている程度です。
確かに、会議後、市場が織り込む利上げのピークは再上昇したようです。しかしながら、会議前の高官らの発言を鑑みれば、パウエル議長の講演内容にはまったく意外感はありませんでした。これが、私の率直な感想です。
8月29日の急落で短期的な「サマーラリー」は終了したが、
依然として中長期の弱気相場には突入していない!
とは言え、米国株式市場が8月26日のような反応を示したことで、投資戦略の見直しは必要です。
結論として、私の相場観と戦略は「日経平均株価については、まだ確定ではないが、7月1日の2万5841.75円を起点としたサマーラリーは、8月17日の2万9222.77円でいったん終了した可能性が高まった。『5日移動平均線>25日移動平均線>75日移動平均線で、かつ、3本すべてが上向き』という『強気のパーフェクトオーダー』が発生するまでは、慎重な運用スタンスを継続しよう」となります。
ただし、8月30日の終値は2万8195.58円で、75日移動平均線(30日時点で2万7335.84円)、100日移動平均線(同2万7203.50円)、200日移動平均線(同2万7518.69円)のすべてを上回っています。つまり、中長期のサポートラインの上で推移しているため、現時点では中長期的に弱気相場に突入したとは見ていません。あくまでも、短期的な調整局面との認識です。
そうはいっても、短期的に不安定な値動きになることは覚悟しなくてはならないと考えています。よって、当面は資金管理を厳格にして、相場に臨むことが肝要と見ています。
米国における9月からの“量的引き締め”の本格化は、
ナスダック総合指数や日経平均株価に対してネガティブに作用
今後の日経平均株価の動向は、今も昔も、そしてこれからも、米国株次第でしょう。
その米国では、9月から量的引き締め(QT)が本格化し、長期金利が上がりやすくなる見通しです。なお、QTに関して、FRBは6月から8月末までは準備期間として月当たり475億ドルを上限に削減していますが、9月から月当たり950億ドル(上限額)に加速することになっています。このため、日米共に株価指標で割高な高PERのグロース株には逆風が吹き続けるかもしれません。この点は、ハイテク株指数の色彩の強いナスダック総合株価指数や日経平均株価に対してネガティブに作用しそうです。
その一方で、「ジャクソンホール会議」でのパネル討論会後の質疑応答で、日銀の黒田東彦総裁は「賃金と物価が安定的かつ持続可能な形で上昇するまで、持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はない」と述べました。この発言を受け、外国為替市場では、日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いが続いています。
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この円安は、我が国の外需企業の収益にポジティブであり、日経平均株価の下支え要因です。このため、日本株は米国株に対して相対的に底堅い動きが見込めるでしょう。しかし、米国株が急落すれば日本株も無事では済まないとも見ています。
需給およびスケジュール的には、9月9日の日経平均先物・オプション9月限のメジャーSQ、もしくは、米国の9月16日のクアドルプル・ウイッチング・ディ(QWD)までは、日米株式市場ともにボラタイルな(変動幅が大きい)値動きが続く可能性が高いと覚悟しています。
「金融教育関連」「リサイクル関連」「原発関連」の3つを
国策に沿った息の長い人気テーマとして注目!
最後に、物色テーマとしては「金融教育関連」「リサイクル関連」、そして「原発関連」に注目しています。
まず「金融教育関連」ですが、日経新聞が8月29日に、金融庁が8月末にまとめる2022年度の金融行政方針に関し、「民間金融機関などが進めてきた金融教育について『国全体として体制を検討する』と明記し、国家戦略として推進するよう提言する」と報じました。
また「リサイクル関連」については、同じく日経新聞が8月24日、「環境省はリサイクル分野の今後の対応をまとめた工程表を近く策定する。2030年までにリサイクルやシェアリングなど循環経済の関連ビジネスで、市場規模を現在の50兆円から80兆円以上に拡大させる」と報じたことが市場の注目を集めています。
そして「原発関連」についても、日経新聞は8月24日に「岸田文雄首相は8月24日、次世代型の原子力発電所について開発・建設を検討するよう指示した。原発の新増設を想定しない東日本大震災以降の方針を転換し、年末までに具体策をまとめる」と報じられています。
今回取り上げた3つのテーマは、すべて国策に沿ったものです。よって、息の長い人気テーマになると見ています。当面は、これらのテーマに沿った個別銘柄で、収益の獲得を目指すことをおすすめします。
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