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2020年の後半から、世界的に半導体不足が続いています。特に最近、深刻な状況となっているのが自動車向けの半導体で、自動車メーカーは必要な半導体が手に入らないため相次いで減産を余儀なくされています。当然、納車にも影響が出ており、車種によっては数カ月から半年程度も納期が延びているようです。
実際に筆者は今年の5月の車検を機に車の買い替えを検討したのですが、私の希望車種については、その時点ですぐに納車できる在庫はわずか2台のみ。最近になって再び販売店で話を聞いたところ、現在は同じ車が納車に1年以上かかる見込みで、さらに売れ筋の車種ともなれば手に届くのは相当先になる状況のようです。
また、半導体の塊とも言えるパソコンについても、ここにきて値上げの動きが見られています。このように、一般の消費者の方でも半導体不足の影響を実感している人が少なくないのではないでしょうか。
世界の半導体市場における日本のシェアを回復すべく、
経済産業省は「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を設置
こうして半導体の需要が増加し、世界市場が拡大している一方で、日本の半導体メーカーの世界的なシェアは低下しています。
経済産業省がまとめた「半導体戦略」という資料によると、世界の半導体市場における日本のシェアは、1988年には50.3%を占めていたましたが2019年には10.0%まで下落。また、半導体の企業別売上ランキングについては、1992年には上位10社に日本のメーカーが6社入っていましたが、2019年には9位にキオクシアが1社入るのみとなっています。
半導体は、5GやAI、IoT、自動運転、ロボティクス、スマートシティなどにも利用され、デジタル社会を支える重要な基盤となっています。また、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指す上では、電力を供給・制御するパワー半導体による省エネ化が必須となるでしょう。
こうした状況を踏まえ、経済産業省は2021年3月、半導体やデジタルインフラ、デジタル産業の今後の政策の方向性について検討するため、「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を設置。6月4日には「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめ、以下のような戦略を策定しました。
1)先端半導体製造技術の共同開発と生産能力確保
2)デジタル投資の加速と先端ロジック半導体の設計・開発の強化
3)グリーンイノベーション促進
4)国内半導体産業のポートフォリオとレジリエンス強靭化
「半導体・デジタル産業戦略」には難しい専門用語が並んでおり、個人投資家がすべてを詳細に理解するのは難しいと思いますが、少なくとも政府が国をあげて半導体産業の成長に注力していることは覚えておく必要があるでしょう。
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省エネ・低消費電力化に欠かせない次世代パワー半導体として、
「GaN(窒化ガリウム)パワー半導体)に期待が集まる
そんな半導体のなかで、最近特に注目されているのが「パワー半導体(パワーデバイス)」です。半導体というとCPUやメモリーなどをイメージしがちですが、パワー半導体は主に電圧や周波数を変えたり、直流を交流に変えたりするのに使われる部品です。人間に例えた場合、CPUやメモリーが「頭脳」だとすると、パワー半導体は「筋肉」にあたります。
パワー半導体は、発電所でつくられた電気を無駄なく送電網に送ったり、電気自動車(EV)のモーター駆動を制御したりなどに使われており、省エネ化・低消費電力化への意識が高まるなかで、電気をより効率的に無駄なく使うために欠かせないものとなっています。
前出の「半導体戦略」においても、パワー半導体は「省エネ・低消費電力化のキーパーツ」と評価されており、「2030年までには、省エネ50%以上の次世代パワー半導体の実用化・普及拡大を進め、日本企業が世界市場シェア4割(1.7兆円)を獲得することを目指す」と書かれています。
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そこで今回は「GaNパワー半導体」の関連銘柄に注目しました。パワー半導体の材料としては、一般的なSi(シリコン)以外にも、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などがあります。そのうちGaNを使ったパワー半導体は、価格が課題ではあるものの、高効率・高耐久性のデバイスの実現が可能とされており、環境負荷の低減という観点から高く期待されています。
世界的な半導体不足や、政府による日本のシェア回復に向けた取り組みを背景に、今後、次世代のパワー半導体として「GaNパワー半導体」の注目が高まると考えられます。
具体的な関連銘柄としては、「GaNパワー半導体」や、その原材料となるウエハー(基板)を手掛ける企業を挙げました。
最近のトピックとしては、日本製鋼所(5631)と三菱ケミカルホールディングス(4188)が2021年5月に、共同でGaN単結晶基板の量産に向けた大型実証設備を建設し、2022年度初頭から市場供給を始めることを目指すと発表しました。その他にも、信越化学工業(4063)や住友電気工業(5802)も「GaNパワー半導体」の関連銘柄に挙げられます。
しかし、今回はこうした大型銘柄ではなく、投資テーマとして注目を集めたときにより反応を示しやすいとの観点から、時価総額が4000億円以下の銘柄に絞り込んで紹介します。
【サンケン電気(6707)】
パワー半導体を中心としたパワーエレクトロニクスの専業メーカー
サンケン電気(6707)は、パワー半導体を中心としたパワーエレクトロニクスの専業メーカーです。GaNとSiC、両方のパワー半導体の開発を進めており、目的に応じた製品開発ができることが強みです。「GaNパワー半導体」と「SiCパワー半導体」の高い性能を引き出しながら、同時に生産性も高める製法の研究開発を進めています。
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【富士通ゼネラル(6755)】
米国のTransphorm製チップを内蔵した「小型GaNモジュール」を開発
富士通ゼネラル(6755)は、子会社の富士通ゼネラルエレクトロニクスが、GaNデバイス開発のリーディングカンパニーである米国のTransphorm社製チップを内蔵した「小型GaNモジュール」を開発。2021年秋よりサンプル出荷を開始し、パワーモジュール(複数のパワー半導体を組み合わせたユニット)を電源関連や産業機器などへ製品展開していく計画です。
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【新電元工業(6844)】
GaNを使用したパワーモジュールを開発
新電元工業(6844)は、パワー半導体やスイッチング電源などのパワーエレクトロニクスを主な事業領域としています。高効率や高電力密度が求められる電力変換/制御システムを実現すべく、GaNを使用したパワーモジュールの開発を行っています。
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【豊田合成(7282)】
「GaNパワー半導体」で世界最高レベルの大電流動作を実現
豊田合成(7282)は2019年5月、開発中の「縦型GaNパワー半導体」で世界最高水準となる大電流動作を実現しました。また、2020年12月には「GaNパワー半導体」の開発において、環境省の「革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速事業」に、名古屋大学などと共同で選ばれています。
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【Mipox(5381)】
「GaNパワー半導体」の生産性を飛躍的に向上させるシステムを開発
Mipox(5381)は2021年1月、名古屋大学との共同研究「半導体製造の生産性を向上させるキラー欠陥自動検査システムの開発」が、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「官民による若手研究者発掘支援事業」に採択されたことを発表。次世代パワー半導体のウエハー内部に含まれる結晶の欠陥を可視化することにより、「GaNパワー半導体」や「SiCパワー半導体」の生産性を飛躍的に向上させることが可能となります。
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以上、今回は「GaNパワー半導体」の関連銘柄を紹介しました。
世界の半導体不足については2023年まで解消は難しいと見られ、株式市場の関心はしばらく続くと考えられます。その中で各国は自前での対応を進めており、現状で出遅れている日本が起死回生を狙う上でも「GaNパワー半導体」で巻き返しを図る動きが期待できます。
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