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米国で銀行の破綻が相次ぎ、日米の株式市場は波乱の展開となっています。
まず、3月8日に暗号資産取引が多いシルバーゲート・バンクが破綻しました。次に、米・連邦預金保険公社(FDIC)は10日、シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したと発表。そして12日、ニューヨーク州金融監督当局は暗号資産関連企業との取引で知られるシグネチャー・バンクの破綻を発表しました。
これに対し、米国の金融当局は迅速かつ適切な対応を行いました。米・財務省、米・連邦準備理事会(FRB)、米・連邦預金保険公社(FDIC)は3月12日、SVBの破綻について共同声明を公表しました。FRBが「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」を新たに導入し、金融機関を対象に、米国債や住宅ローン担保証券を担保として最長1年の融資をすることで、FRBが「最後の貸し手」となって金融システムを守る機能を拡充します。つまり、銀行に公的資金を注入することなく、銀行が保有する国債などの有価証券を担保に使ってFRBが資金を貸し出す仕組みです。これにより金融機関は、金利の上昇によって価格の下落した証券を売却することなく、新たな資金を得ることができます。SVBの破綻処理に伴う損失が納税者の負担になることはありません。また、預金者は3月13日からすべての資金にアクセスできるようになりました。
さらに、シグネチャー・バンクについても預金を全額保護の対象としました。この状況に関して、バイデン米大統領は3月12日、預金保護について「迅速な解決策」だと評価する声明を公表しました。そして、バイデン大統領は13日の演説で「今回のような銀行破産が起こりにくい体制をつくる」と述べ、米国議会と金融当局に銀行規制の強化を求めるとしました。
米国で銀行の破綻が相次いだことで、国内でも銀行株への売り圧力が
高まり、投資家マインドは「リスクオフムード」が強まる結果に
このように、金融システム不安につながるシステミックリスクを防ぐための例外措置、すなわち破綻した銀行の預金が全額保護されたことはポジティブ材料です。しかしながら、バイデン大統領が3月13日に米国の金融システムの健全性を強調する一方で、「銀行の投資家は保護されない」と念押ししたことで、ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が一時前週末比79%安となるなど、13日の米国株式市場では中堅銀行や地銀の株価が急落しました。
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米国株式市場のみならず、3月13日~14日の東京株式市場でも、銀行株への売り圧力が強まりました。SVBの破綻の主因のひとつが、市場で運用する有価証券で抱えた多額の含み損でした。国内地銀に関しては、保有する外国債券の評価額が米国の急速な利上げで下落し、含み損が拡大したことに加え、2022年12月の日銀による事実上の利上げによって日本国債も含み損の発生が見込まれるため、金融庁は地銀約20行の有価証券の運用体制を重点的に点検しています。
米国の銀行の「相次ぐ破綻」やSVBの「あっと言う間の破綻」でわかるように、銀行の信用はちょっとしたきっかけで大きく毀損し、信用不安の連鎖を招きやすいのです。このため、日米ともに銀行株への投資を躊躇せざるを得ない状況に陥っています。
当然のことながら、現状のように投資家マインドが委縮した状況では、リスクオフムードが強まり、リスクアセットである株式は「下がりやすく、上りがたく」なります。このため現時点では、諸悪の根源である銀行株の底入れが鮮明になるまでは、日米株式市場ともに底入れは期待しがたいと考えています。
来週のFOMCでの「利上げ見送り」の観測が出たことで
円高が進み、日本の輸出関連株にとってネガティブな状況に
また、今回の米国の銀行の相次ぐ経営破綻を受けて、FRBが金融システムの安定化に配慮して利上げに慎重になり、来週3月21~22日に開くFOMCで利上げを見送るとの観測も浮上しています。ゴールドマン・サックスやバークレイズも3月のFOMCで政策金利が据え置かれる可能性を指摘しています。
そして、3月13日のニューヨーク債券市場では、金融政策の影響を受けやすい2年債利回りが急低下し、一時は3.93%と2022年9月下旬以来、およそ半年ぶりの水準に低下する場面もありました。
FRBの大幅利上げ観測が後退した結果、外国為替市場では、日米の金利差縮小を意識した円買い・ドル売りが優勢となり、円が対ドルで大きく上昇しています。この円高は日本株、とりわけ輸出関連株にネガティブ材料です。この円高に歯止めが掛かることも、日本株が底打ちする条件のひとつと考えています。
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日経平均株価は「2万6553円」が下値のメドだが、
円高に歯止めがかからないようだとさらなる下落リスクも
日経平均株価については、2月22日の2万7046.08円で底入れしましたが、3月9日の2万8734.79円で天井を打ちました。現在は底値を模索している状況です。現時点の押し目メドは、1月20日と1月23日とで空けた窓(2万6553.53円~2万6788.76円)を埋める水準を想定しています。しかしながら、日米ともに銀行株の下落が止まらなかったり円高進行に歯止めが掛からないようだと、さらに「深押し」するリスクは決して小さくないとも見ています。
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残念ながら、日経平均株価の3月10日以降の急落で、日本株は需給的に「買い方不利・売り方有利の状況」に一変してしまいました。テクニカル的にも「日経平均株価が25日移動平均線を下回り、かつ25日移動平均線自体が下向きに転じる」という事態になったため「下降トレンドが発生」したと見ておく必要があります。
一方、リバウンド入りのサインは「日経平均株価が5日移動平均線を上回り、かつ5日移動平均線自体が上向きに転じる」ことを挙げておきます。それが実現するまでは、日本株の下値模索が継続すると覚悟しておく必要があるでしょう。
近い将来「無秩序な全面安」が発生する可能性を考慮して
当面は資金管理を厳格にして「守り重視」の運用を!
米国では信用不安が高まり、株式が軟調に推移しています。日経平均株価がその影響を受けて連れ安しているため、「○○ショック」のような“無秩序な全面安”が近い将来発生しても不思議はなく、投資環境は劇的に悪化したと見ています。よって、最悪の状況を想定したうえで、資金管理を厳格にして守り重視の運用を行いましょう。「○○ショック」が万が一発生しても、市場からの一発退場を避けることを最優先にしてください。
その一方で、「日経平均株価が5日移動平均線を上回り、かつ5日移動平均線自体が上向きに転じる」タイミングでは、勇気を持って買い向かい、リバウンド局面での収益獲得を目指してください。つまり「落ちてくるナイフはつかむな」の相場格言の意味を十分噛み締めたうえで、現在の相場に臨むことを強くおすすめします。
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