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日本株にとっての「好材料」と「悪材料」の両方が存在し、
今後の方向性についてまったく見極めがつかない状況に!
現在、さまざまな好材料と悪材料が同時に存在しているため、正直に言って日本株が上に動くのか、下に動くのか、それとも横這いが続くのか、まったく予想がついていません。このため、相場の方向性を決めつけずに、相場が動いた方向に素直についていくしかないと諦めています。
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現時点で思いつく具体的な弱気材料は(1)米中のハイテク分野での覇権争いの激化、(2)原油高・米国の長期金利の高止まり、(3)米国の個人消費の失速懸念の3つ。一方、強気材料は(4)FRBによる利上げ休止観測の強まり、(5)中間期末の配当権利取りの買いと配当の再投資の2つです。そして、弱気・強気の判断がつきにくい材料が(6)日銀の金融政策正常化の前倒し観測の強まりとなります。
中国における「7nmチップ」の製造技術の確率が判明し、
半導体産業におけるアメリカとの覇権争いが激化!
まず、弱気材料から確認しておきましょう。「(1)米中のハイテク分野での覇権争いの激化」ですが、現在、米国と中国との間で、ハイテク分野(特に最先端の半導体分野)の覇権争いが激化しています。中国側の動きに関しては、9月6日付のウォール・ストリート・ジャーナルが「中国政府が中央政府機関の職員にiPhoneなど外国メーカーの携帯機器の職場への持ち込みを禁止した」と報じました。さらに、7日には米国のブルームバーグ通信が「中国政府は、政府系機関や国有企業に対してもiPhoneの使用を禁じることを計画している」と伝えました。
一方、米国側の動きですが、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の最新スマートフォン「Mate 60 Pro」に、中芯国際集成電路製造(SMIC)が中国で生産した回路線幅7nm(ナノメートル)の最先端半導体が採用されていることが判明し、米国政府は正式な調査を開始しました。
今後、米中間でハイテク産業の覇権争いが一段と激化するようだと、米国のハイテク企業のみならず、わが国のハイテク企業にも悪影響を及ぼす見通しです。このため現在は、日米ともにアップル関連銘柄中心としたハイテク株は触り難い状況となっています。
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「原油先物価格の高騰⇒米・長期金利の高止まりの流れ」に加え、
米国では学生ローンの返済再開が景気悪化要因に!
次に「(2)原油高・米国の長期金利の高止まり」についてですが、9月5日にサウジアラビアが日量100万バレルの自主減産を年末まで続けると表明し、ロシアも同日に輸出量を年末にかけて日量30万バレル減らすと発表したことで、原油先物価格が上昇しています。9月11日に期近の10月物のWT原油先物は、前週末比0.22ドル安の1バレル87.29ドルで取引を終えたものの、朝方には一時88.15ドルと期近物としては2022年11月中旬以来の高値をつける場面がありました。
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また、9月11日の米国10年債利回りは前週末比0.03%高い4.29%と、4%の大台を上回り続けています。
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「原油先物高⇒米国のインフレの高止まり⇒米国の長期金利高止まり」の状況は、高PERのグロース株の上値圧迫要因です。
そして「(3)米国の個人消費の失速懸念」に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大で停止していた学生ローンの返済が10月から再開されることから、食料品やガソリン価格の上昇による家計圧迫に加え、このローン返済が今後の米国の個人消費を冷やすリスクが意識されているのです。「米国の個人消費低迷⇒米国の景気悪化⇒米国株下落」という流れが危惧されます。
9月下旬は配当の権利取りの買い需要や配当落ち分の
パッシブ運用による先物買いが、日本株を下支え!
一方、強気材料の「(4)FRBによる利上げ休止観測の強まり」に関しては、米国の銀行協会(ABA)の経済諮問委員会が9月11日、パウエルFRB議長率いる金融当局について、現行の利上げサイクルは完了し、2024年には計約1ポイントの利下げに踏み切る可能性があるとの見通しを示しました。また、FRBウオッチャーとして有名なウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者は、10日付の記事で「FRBが利上げに慎重になりつつあるとの見解」を示しています。
利上げ休止が現実のものとなるのなら、FRBの一段の金融引き締めによる米国経済のオーバーキルリスクが低下して、米国の景気および株式市場にポジティブに作用するはずです。
最後の「(5)中間期末の配当権利取りの買いと、配当の再投資」ですが、2023年9月の権利付き最終日は9月27日です。このため、27日までは権利取りの買いが見込め、この買い需要が27日まで日本株の下値を支える見通しです。また、配当権利付最終売買日である27日と翌28日の寄り付きを中心に、数日間は配当落ち分のパッシブ運用による先物買いが見込まれますが、大和証券の試算によればその規模は約1.8兆円だそうです。このため、9月27日以降、数日間の先物の需給は比較的良好と言えるでしょう。
「日銀の金融政策正常化」は、中長期的にはプラス要因だが
短期的には株式市場の乱高下を招く可能性も!
悩ましいのは、再投資終了後の先物の需給関係や、日本株全体のトレンドが極めて見通しにくいことです。なぜならば、「米中関係」や「米国の先行き景気」などの外部環境も不透明ですが、ここにきて「(6)日銀の金融政策正常化の前倒し観測の強まり」のリスクも浮上してきたからです。
というのは、日本銀行の植田和男総裁が、9月6日に実施され、9日に掲載された読売新聞の単独インタビューで「マイナス金利政策」の解除の時期について、現状では「到底決め打ちできる段階ではない」としたものの、来春の賃上げ動向を含め「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」としたからです。
これまで市場では、マイナス金利政策の解除は早くても「来年の春闘」後というスケージュルが有力視されていました。しかしながら今回の植田発言により、前倒しで「金融政策の正常化」が実現する観測が浮上したのです。実際、9月11日の国内債券市場では、新発10年物国債の利回りが前週末比0.055%高い0.705%で取引を終えました。
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日銀の金融政策正常化の前倒し変更や、それに伴うであろう、わが国の長期金利の上昇が、日本株に与えるインパクトとして短期的にどの程度の規模なのかが予測できないため、現在の投資環境は極めて不安定な状況に陥ったと認識しています。
ただし、欧米を中心とした世界的なインフレや、外国為替市場での円安を考慮すれば、日本の金融政策の正常化は遅かれ早かれ実施されるはずでした。また、本来、現在のマイナス金利が異常なのであり、金融政策の正常化は中長期的には日本経済にとってプラスに作用するとは思います。しかしながら、短期的な市場の動揺(価格の乱高下)が予測できないので、私は不安を抱いています。
以上のことから、現在、投資環境は極めて不透明と考えます。当面は「相場のことは相場に聞け」という有名な相場格言どおり、自分の相場観に固執せず、素直にマーケットの動きに対応することを最優先にして相場に臨むことを強くおすすめします。
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