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熱エネルギーから直接電気を生み出す「熱電池」は、
「供給が不安定」という再生可能エネルギーの欠点をカバー
人類共通の課題である気候変動問題への対応として、世界中でカーボンニュートラルの実現を目指したさまざまな取り組みが行われていますが、その実現のためには、エネルギー資源を現在の主力である「化石エネルギー」から、CO2などの温室効果ガスを排出しない「再生可能エネルギー」へシフトすることが必要とされます。
しかし、現在実用化されている再生可能エネルギーは、不安定さが大きな課題です。例えば太陽光発電は、昼間の晴れている時間は多くの電力を生み出せますが、雨の日や夜間には発電できません。風力発電も十分な風が吹いているときは稼働しますが、無風になるととたんに止まってしまい電気を生み出すことができません。そのため、外部環境に左右されず、安定して電力を生み出せる火力発電などに頼らざるを得ないのが現状です。
こうした再生可能エネルギーの欠点を補う新技術として近年注目を集めているのが、電力を熱エネルギーに変換して蓄え、必要なときに取り出して使える「熱電池」です。
熱電池は、外部から供給される電気などのエネルギーによって、断熱材に覆われたカーボン(炭素)ブロックや岩石などを数百~千数百度に加熱して熱エネルギーとして蓄積。電気が必要なときは「熱電発電素子」と呼ばれる半導体を用い、蓄熱部と外部との温度差を利用して発電します。化石燃料を燃焼させ、その熱エネルギーでタービンを回して電気を生み出す火力発電と違い、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、温室効果ガスや有害物質を排出することはありません。
再生可能エネルギーの発電量が多い昼間などの時間帯に熱電池へ熱エネルギーを蓄え、夜間や荒天時など発電量が減ったときに取り出すことで、「発電量が不安定」という再生可能エネルギーの欠点を補うことができるのです。
「熱電池」を活用することで、世界のCO2排出量の20%を占める
「工業用の熱」を再生可能エネルギーで賄うことも可能に!
米国のカリフォルニアに拠点を置く熱電池のスタートアップ企業、アントラ・エナジー(Antora Energy)は、2023年10月に同社初となるモジュール式熱電池を使った大規模製造施設の建設計画を明らかにしました。この施設では、再生可能エネルギーで発電された昼間の安い電気を使って熱電池内のカーボンブロックを1800度以上にまで加熱。必要に応じて熱エネルギーのまま供給したり、電気に変換したりすることで、セメントやガラスといった工業製品の製造に利用できるようにするとのことです。
材料を金属やプラスチックなどの製品に加工する際などに必要な「工業用の熱」は、多くの場合、化石燃料由来のエネルギーを大量に使用します。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、世界のCO2排出量の20%は、この「工業用の熱」が発生源となっています。アントラ・エナジーが計画している施設のように、これまで化石燃料に依存してきた産業に再生可能エネルギー由来の“よりクリーンなエネルギー”を提供することできれば、熱電池は地球温暖化への対策を一段と進めることができるでしょう。
また、熱電池は、電気エネルギーを貯めておく「蓄電システム」としてだけではなく、さまざまな熱から電気を生み出す「発電システム」としての活用も考えられています。温泉の熱や工場の廃熱など今まで使われていなかった熱を温室効果ガスなどを発生させることなく電気に変換することが可能なため、環境負荷の少ない発電システムとして期待されてます。さらに、熱源と冷却源さえあれば電気をつくり出せるため、緊急時の発電システムとしての利用も可能でしょう。
今回はそうした「熱電池」の関連銘柄に注目。具体的な銘柄としては、「熱電池」の製造を手掛ける企業のほか、熱電発電素子やカーボン(黒鉛)などの「熱電池」に関わる素材を手掛けている企業を取り上げました。
【アイシン(7259)】
レアメタルを使用しない「熱電モジュール」を開発
アイシン(7259)は2023年1月、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の先導研究プログラムにおいて、レアメタルを使用せず、熱から電気を直接変換することができる熱電発電モジュールを茨城大学などと共同で開発しました。株価は2023年9月に5981円まで買われた後、12月には4735円まで下落。しかし、その後は再びリバウンドの動きを見せ、13週・26週移動平均線が下値支持線として機能するなか、直近で9月の高値を突破し、2018年5月以来となる6000円を回復しました。いったんは調整が入りやすいと見られますが、中・長期的には2018年2月の高値6840円が意識されているので、押し目買いを狙いたいところです。
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【三櫻工業(6584)】
東京工業大学と共同で新型の「熱電発電素子」を開発
三櫻工業(6584)は2019年7月、新型の熱電発電素子を東京工業大学と共同開発し、50度の環境下において4カ月間の連続発電に成功しました。 株価は2月半ばにマドを空けて急伸し、2月22日には一時1110円まで買われました。その後は1050円を挟んだ高値圏での推移が続いており、2021年3月の高値1472円が中長期的なターゲットになりそうです。
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【日本カーボン(5302)】
直径1メートルを超える世界最大級のカーボンブロック素材を製造
日本カーボン(5302)は、電気製鋼用の人造黒鉛電極をはじめ、宇宙航空分野や産業分野などで幅広く用いられる炭素繊維や、等方性黒鉛で直径1メートルを超える世界最大級の大型ブロック素材なども提供しています。また、グループ会社の日本カーボンエンジニアでは、耐食性と熱伝導性を有した不浸透黒鉛材料を用いた熱交換器の設計・製造を手掛けています。株価は、2月9日発表の決算を手掛かりに急伸し、2月16日には一時5550円まで買われました。その後は急伸に対する反動から利益確定の売りが優勢となっており、5000円に接近する局面は押し目買いのチャンスになりそうです。
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【レゾナック・ホールディングス(4004)】
二次電池に使用する「気相法炭素繊維 」などを手掛ける
レゾナック・ホールディングス(4004)は、二次電池の正負極用導電助剤として使用する「気相法炭素繊維 」を手掛けています。また、グループ会社のレゾナック・グラファイト・ジャパンが、電気製鋼炉で使われる黒鉛電極を扱っています。株価は、上向きで推移する13週移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドが形成されるなか、2月14日の決算通過後は上昇の勢いを強めています。2月26日には3730円まで買われ、2021年5月の戻り高値(3730円)とのダブルトップ(二点天井)を形成しており、押し目狙いのスタンスになります。
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【SECカーボン(5304)】
人造黒鉛電極や特殊炭素製品などカーボン製品を幅広く手掛ける
SECカーボン(5304)は人造黒鉛電極や特殊炭素製品など、カーボンを用いた製品群を手掛けている炭素専業メーカーです。株価は、上向きで推移する26週移動平均線を下値支持線とした上昇が継続するなか、2月14日には3070円まで買われ、2023年10月以来の高値を更新。足元では利益確定の売りに押されていますが、13週線移動平均に迫ってきており、同線が下値支持線として機能するかどうかに注目です。
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【ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)】
さまざまな電池を手掛ける「電池」関連の中核的な銘柄
ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)はグループ会社であるジーエス・ユアサ テクノロジーが、海洋から宇宙まで過酷な使用環境に耐えるなど特殊分野で活躍する電池を手掛けています。ジーエス・ユアサ テクノロジーが扱う「熱電池」は、前述した熱を蓄積するタイプではなく「溶融塩電池」というまったく別の仕組みの電池となります。ただ、ジーエス・ユアサ コーポレーションは「電池」関連の中核的な銘柄であり「熱電池」関連が動意を見せる局面では連動する可能性があるので、押さえておきたいところです。株価は、2月以降の急伸で一気に2023年8月以来の高値(2932.5円)を突破。今後は2021年2月の高値の3540円が射程に入ってくるでしょう。
⇒ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)の最新の株価はこちら!
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以上、今回は「熱電池」に関連するお宝銘柄を発掘しました。
「熱電池」関連銘柄としては、そのほかにもアセチレンの熱分解によって製造されるアセチレンブラック「デンカ ブラック」を手掛けるデンカ(4061)や、黒鉛・カーボン関連の幅広い製品を取り揃えているカーボン専業メーカーの東洋炭素(5310)、グループ会社が高炉用・電気炉用カーボンブロックを手掛ける日本軽金属ホールディングス(5703)などが関連銘柄として挙げられます。
「熱電池」が世の中に普及するにはまだ時間がかかりそうですが、成長が見込める分野だけに今のうちから関連銘柄をチェックしておくといいでしょう。
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