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2050年には約96億人まで人口が増加すると見込まれるなか、
海水から真水を作り出す「海水淡水化技術」の重要度が増加
ユニセフ(国連児童基金)によると、2022年時点で世界にいる80億人のうち、27%にあたる22億人が安全に管理された飲み水を利用できず、このうち1億1500万人が湖や河川、用水路など汚染処理がされていない地表水を使っているそうです。
しかも、世界の人口は爆発的に増えており、「国連世界人口推計2024年版」によれば、2023年に約81億人だった人口は、2050年には約96億人にまで増加すると予測されています。SDGs(持続可能な開発目標)のなかでは「2030年までに、誰もが安全な水を安い値段で利用できるようにする」という目標が設定されていますが、爆発的に人口が爆発するなか、この目標達成はかなり困難だと言えるでしょう。
この世界的な水不足問題の解決策として期待されているのが「海水淡水化技術」です。
地球上に存在するすべての水のうち、人が利用しやすい状態で存在する「真水」はわずか0.01%に過ぎず、大部分は「海水」として存在しています。その海水から塩分などを取り除き、飲み水をつくり出す海水淡水化技術について、世界中で研究が進められています。
電力をほとんど使わない画期的な淡水化技術など、
次世代の「海水淡水化技術」が次々に登場!
海水淡水化技術といえば、以前は海水を熱し、水蒸気を集めて淡水にする「蒸発法」が主流でしたが、この方法は大量のエネルギーを消費しなければならず、高コストでCO2(二酸化炭素)を大量に発生させてしまうことが問題でした。そこで現在は、海水に圧力をかけてRO膜(逆浸透膜)を通すことで塩分を取り除き、淡水を作り出す「逆浸透法」が主流になっています。現在では、世界中で淡水化処理された水の約7割が、RO膜を使った逆浸透法で生産されているそうです。
ただ、逆浸透法も圧力をかける際に大量の電力が必要で、発電に伴うCO2の排出をなくすことはできません。また、塩分が濃縮された排水(濃縮海水)が出てくるのですが、そのまま海に流すと海洋生態系に影響を与える危険性も懸念されます。
そこで最近では、逆浸透法の問題を解決する革新的な海水淡水化技術に注目が集まっています。
例えば、日本触媒(4114)は2024年2月、FO膜(正浸透膜)を使い、電力消費を逆浸透法の3分の1に抑えた海水淡水化システムを米国のトレビ社(Trevi Systems)と共同で開発したことを発表しました。
また、東京工業大学(現・東京科学大学)と核融合発電ベンチャーのEX-Fusion(エクスフュージョン)は、液体金属と太陽光を活用することで、電力をほとんど使わない画期的な海水淡水化技術を開発。現在、実用化に向けて研究を進めており、2025年にも規模を大きくした実証装置を稼働させる計画とのことです。
そこで今回は「海水淡水化」関連銘柄に注目しました。具体的な銘柄としては、海水淡水化プラントで重要な役割を担うポンプやRO膜・FO膜を手掛けている企業のなかから、株価やチャート形状などのテクニカル面で今後の値上がりが期待できる企業を選定しました。
【日本触媒(4114)】
米トレビ社と共同で、高効率な海水淡水化技術を開発
日本触媒(4114)は、高吸水性樹脂に関しては世界トップの化学メーカーです。前述したように、2024年2月に米国のトレビ社と共同で、FO膜を使った海水淡水化システムの基幹部材となる浸透圧発生剤を共同開発したことを発表。試験の結果、海水中の65%以上の水を淡水として取得できることに加え、従来のROシステムと比較して設備投資はほぼ同等にながら、電力消費量を3分の1に抑えられることを実証しました。株価は、上向きで推移する25日移動平均線と13週移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドを形成しており、押し目買いを狙うスタンスになります。
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【酉島製作所(6363)】
アブダビ国営石油会社から海水処理プラント向けにポンプを大量受注
酉島製作所(6363)は大型・高圧ポンプを手掛けるメーカーで、海水淡水化プラント向けについても多くの導入実績を持ちます。2024年8月には、アラブ首長国連邦のアブダビ国営石油会社から、海水処理プラント向けにフィルタレーション用ポンプなど73台を受注したことを発表しました。株価は、6月14日につけた3500円をピークに下落が続いていたものの、2600円辺りで底固めをしたあと、10月11日からの上昇で75日移動平均線を突破。ボトム圏から上昇トレンドへの転換に期待したいところです。
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【帝国電機製作所(6333)】
液漏れしないキャンドモータポンプで高いシェアを誇る
帝国電機製作所(6333)は、モーターを一体化して密閉することで液漏れを防ぐキャンドモータポンプに関して高いシェアを有しており、石油化学プラントやファインケミカル、医薬・食品業界、原子力発電所、変電所など多岐にわたって製品が使用されており、なかでもJR新幹線の車両用電動油ポンプには100%採用されています。また、液化アンモニアやCO2回収用など、新たな用途の液体向けポンプの需要も高まっているようです。株価は、上向きで推移する25日移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドが続いており、1月につけた年初来高値3170円が射程に入っています。
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【東洋紡(3101)】
日本触媒と米トレビ社の海水淡水化プラントに中空糸型FO膜を納入
東洋紡(3101)は高機能素材メーカーです。2024年2月、前述した日本触媒と米トレビ社が行った海水淡水化プラントの実証実験において、グループ会社の東洋紡エムシーが製造・販売する中空糸型FO膜が採用されました。株価は、3月の高値1182円をピークに調整が続いていますが、足元では上値抵抗線として意識されている13週移動平均線辺りで攻防を見せており、ボトム圏からの反転上昇に期待したいところです。
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【荏原製作所(6361)】
サウジアラビアの国家プロジェクトにパイプラインポンプを納入
荏原製作所(6361)はポンプを主力に冷熱機械、送風機、コンプレッサー・タービン、環境プラント、半導体関連装置などを手掛けています。サウジアラビアの国家プロジェクトにおいて、海水淡水化向けの大型高圧パイプラインポンプの納入実績を有しています。株価は、4月の高値2859円(分割調整済)をピークに下落が続いていましたが、9月以降のリバウンドで上値抵抗線として意識されていた13週移動平均線を突破。その後の上昇で26週移動平均線を下値支持線に変えており、4月の高値を射程に入れた上昇トレンドの形成が期待できます。
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【東レ(3402)】
世界最大規模の海水淡水化プラント向けにRO膜を受注
東レ(3402)は合成繊維の国内最大手メーカーで、炭素繊維では世界トップです。現在の主流である「逆浸透法」に使われる高分子RO膜を展開。2022年5月には、「逆浸透法」としては世界最大規模となるアラブ首長国連邦のタビーラ海水淡水化プラント向けにRO膜を受注したことを発表しました。株価は、10月7日につけた高値867.7円をピークに調整を見せていますが、足元で下値支持線として意識される25日移動平均線に接近しており、リバウンド狙いのスタンスになります。
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以上、今回は「海水淡水化」関連銘柄を発掘しました。
海水淡水化技術に対しては、世界的な水不足を背景に、今後も中東やアフリカ諸国を中心として積極的な投資が行われていくことが見込まれています。米国の調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイトによれば、世界の淡水化技術の市場規模は2023年の237億7000万米ドル(約3兆5000億円)から2032年には498億米ドル(約7兆3300億円)に増加すると予測されています。
市場規模の拡大に伴って関連銘柄の株価上昇も期待できるので、今後も長期的な目線でチェックしておきたい投資テーマと言えるでしょう。
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