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日経平均株価やNYダウの暴落を止めるには、日銀やFRBによる「金融政策」だけでは不十分。次は企業への支援など、実体経済を支える「財政政策」が必要!

2020年3月17日公開(2022年3月29日更新)
藤井 英敏
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 日米の株式式相場は、引き続き「暴落」状態です。

 3月16日のNYダウ(ダウ工業株価平均指数)は、前週末比2997.10ドル(12.9%)安の2万188.52ドルでした。下げ幅は12日の2352.60ドルを上回って過去最大で、下落率は1987年10月19日のブラックマンデーの22.61%安以来の大きさでした。

■NYダウチャート/日足・3カ月
NYダウチャート/日足・3カ月NYダウチャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 この日は、トランプ米大統領が記者会見で、新型コロナ感染の最悪期が「8月まで延びる可能性がある」「(米国景気は)おそらく後退に向かっている」と述べたことが、投資家心理を悪化させました。

FRBが緊急利下げや量的緩和政策を発表するも、
かえって投資家の不安を煽る結果に

 米連邦準備理事会(FRB)は、3月15日に緊急の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いて1.0%の大幅利下げに踏み切りました。政策金利は0~0.25%と、リーマンショックのあった2008年の金融危機以来となる「ゼロ金利政策」に回帰しました。また、今後数カ月で米国債を少なくとも5000億ドル買い入れ、住宅ローン担保証券(MBS)を2000億ドル購入する量的緩和政策も復活させます

 FRBは、定例のFOMCを3月17日~18日に予定していましたが、それを前倒しして緊急利下げに踏み切ったのです。また、日銀、FRB、ECB(欧州中央銀行)など6つの中央銀行は16日、米ドル資金を供給する枠組みを拡充すると発表しました。

 そして日銀も、3月18日~19日に予定していた金融政策決定会合を前倒しして、16日に緊急で会合を開き、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の保有残高の増加額を年12兆円増と、従来の年6兆円増から倍増させました。また、不動産投資信託(REIT)についても年1800億円増と、従来の年900億円増から増やしました。

 さらに日銀は、新たなオペレーションの導入を含めた企業金融支援のための措置を決めました。具体的には、民間企業債務を担保(約8兆円<2020年2月末>)に、最長1年の資金を金利ゼロで供給する新たなオペレーションを導入します。

 このように、世界の中央銀行は新型コロナウイルスによる経済・金融危機を回避するべく、協調して思い切った政策を打ち出しました。しかしながら、3月16日の日経平均株価は前日比429.01円安の1万7002.04円と、4日続落しました。また前述の通り、16日のNYダウも過去最大の下げ幅でした。

■日経平均株価チャート/日足・3カ月
日経平均株価チャート/日足・3カ月日経平均株価チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 3月16日の日本株の下落については、FRBの緊急利下げを受けた投資家が「想定以上に米景気は悪いのか?」と感じて不安になり、株式を売ったためと見られています。また、日銀のETF買い入れ額倍増も、金額自体に多少サプライズ感はあったものの、新味に乏しいと捉えられたのでしょう

日米ともに、金融政策に続いて財政政策にも着手!
トランプ大統領は、最大5兆円を投じて感染拡大対策などを拡充

 世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響で急速に厳しい状況になってきています。「中央銀行の供給するマネーではウイルスを殺せない」ため、足元の株式市場の反応は冷淡だったのと思います。それでも、今回の金融緩和は長期的に景気下支え効果を発揮するはずです

 金融政策はほぼ満額回答が出たので、次は財政政策です。米国では、トランプ米大統領が3月13日に国家非常事態を宣言し、最大5兆円超を投じてウイルス検査などを拡充したり、新型コロナウイルスで打撃を受けた企業や個人の支援を強化したりすることを決めました。一方、日本でも、自民党が新型コロナウイルスの感染拡大にともない、追加経済対策の提言に着手する見通しです。

 ちなみに、岸田文雄政調会長は3月16日、追加経済対策の規模について、昨年12月にまとめた事業規模26兆円の経済対策と比べ「現状は、それをはるかに超える規模が求められているのではないか」と述べました。また、西村康稔経済財政・再生相は17日、今後の財政政策については「税、財政、規制改革のすべてについて、幅広く検討していきたい」と話しました。これら政府・与党の政策責任者の発言を効く限り事態の深刻さをしっかりと認識しているようなので、十分な規模で、かつ、適切な対策を講じてもらいたいと祈るばかりです。

G7も首脳による緊急のテレビ会議を実施するなど、
新型コロナ対策に関して強調する姿勢を強める

 なお、ここにきて、G7が活発に情報・意見交換して協調する姿勢を強めています。これは市場に一定の安心感を与えるはずです

 新型コロナウイルス感染症に関連し、G7首脳は、緊急のテレビ会議を日本時間の3月16日午後11時から開きました。治療薬の開発と経済財政政策の実行は、首脳声明にまとめて発表するということです。また、各国の保健相と財務相がそれぞれ定期的に協議し、首脳同士でも必要に応じテレビ会議を開くそうです。

 確かに、新型コロナが収束することが世界的な株式相場復活の特効薬でしょう。しかしながら、さすがに現時点では、その実現をすぐに期待するには無理があります。

 特に、欧州の混乱ぶりが激しさを増しています。3月16日からはドイツが、フランスやスイスなど5カ国との国境での検問を始めました。また、スペインも同日、国境を事実上閉鎖することを決めました。さらにフランスでは16日夜に、マクロン仏大統領が国民の移動制限を発表しました。

冷え込んだ投資家のマインドが正常モードに戻るまで、
当面はリスク管理を厳格にして慎重なスタンスで

 当然のことながら、ウイルスの感染拡大への対応として強制的に「ヒト・モノ」の移動を制限すれば、実体経済は一段と悪化します。このため市場は、今回の新型ウイルス拡大で仕事を失った個人や業績面で打撃を受けた企業を直接支援する対策を期待しているのです。もちろん、各国の政策担当者もそれは十分にわかっています。それが市場にしっかりと伝わってくれば、足元で激しく動揺している株式市場も落ち着きを取り戻すでしょう。

 そうはいっても、日経平均株価は1月17日の2万4115.95円から3月17日の1万6378.94円まで、7737.01円(32.08%)も暴落しました。多くの投資家が資産を減らしたはずです。特に、信用取引を積極的に行い、レバレッジを効かせ、この急落局面で我慢して耐えてしまった個人の中には、ここ数週間で資産を数分の一にしてしまった方も多数いることでしょう。

 このため、個人投資家のマインドが正常モードになるには、それなりの時間が必要だと思います。よって、当面はリスク管理を厳格にして、慎重な株式投資を心掛けるべきでしょう

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