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米国株「アンセム」は“超割安”で放置されている健康保険会社! 安定成長しながら低PERのままで、バイデン大統領誕生で政治リスクも低下しているので注目!

2020年11月30日公開(2022年9月20日更新)
広瀬 隆雄
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米国の民間健康保険会社の大手「アンセム」は、
「ブルークロス・ブルーシールド」ブランドを展開

 今回は、米国に4100万人の加入者を持つ大手の民間健康保険会社、アンセム(ティッカーシンボル:ANTM)を取り上げます。

 アンセムは「ブルークロス・ブルーシールド(青十字・青い盾)」という、歴史が古く、消費者に大変信頼されているブランドを展開しています。しかし、「ブルークロス・ブルーシールド」は、アンセム独自のブランドではありません

 「ブルークロス・ブルーシールド」は、ブルークロス・ブルーシールド協会が統括しているブランドです。このうち「ブルークロス」は1929年に、「ブルーシールド」は1939年に設立された健康保険協会で、この2つの協会が1982年に合併して現在の形となりました。

「ブルークロス・ブルーシールド」のマーク「ブルークロス・ブルーシールド」のマーク(出典:ブルークロス・ブルーシールド協会)
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 米国の保険事業は、州ごとに規制されています。各州で営業している「ブルークロス・ブルーシールド」は、ブルークロス・ブルーシールド協会からそのブランドを使用することを許可されたライセンシー(ライセンスの使用許諾を受けて営業する会社)が運営しており、実態としては、各州で独立した企業がそれぞれ個別に健康保険事業を行っています。

 これは理解しにくい概念かもしれないので、マクドナルドに例えて説明しましょう。

 マクドナルドの店舗には、自社所有の店舗とフランチャイズの店舗があります。フランチャイズのライセンシーは、独立した企業がマクドナルド社からブランドと店舗の運用ノウハウを借り受けて営業しています。しかし、消費者の目線では、どれが自社店舗でどれがフランチャイジーの店舗かは、ほとんど見分けがつきません。

 「ブルークロス・ブルーシールド」のサービスも、これと同じような形で展開しています。つまり、「ブルークロス・ブルーシールド」のブランドを使っている会社の中には、アンセムという企業グループで括られていない独立した保険会社も数多く存在するということです。

 アンセムは、「ブルークロス・ブルーシールド」の数多くのライセンシーのうち最大規模を誇る会社で、ニューヨークの「エンパイア・ブルークロス・ブルーシールド」やカリフォルニアの「アンセム・ブルークロス」、ジョージアの「ブルークロス・ブルーシールド」などが一体になった企業グループです。全米には「ブルークロス・ブルーシールド」のブランド全体で1.06億人の加入者がいますが、前述の通り、そのうち4100万人がアンセムの加入者です

アンセムにとってマイナスとなる「ACA廃止」リスクは、
バイデン政権の誕生によって低下!

 米国の民間保険会社のプログラムは、大きく分けて「PPO(プリファード・プロバイダー・オーガニゼーション)」と「HMO(ヘルス・メンテナンス・オーガニゼーション)」という2つの仕組みがありますが、アンセムはそのどちらも提供しています。

 PPOは、保険会社が病院や開業医などの医療機関と契約してネットワークを形成しており、そこに加盟している医療機関を利用すると、どこでも自動的に保険が効いて自己負担が少なくなります。通常、PPOのネットワークは広範で、事前に紹介を受けなくても患者は自由に病院や医師を選べます。このように自由度は高いのですが、その代り、コストは割高です。

 一方、HMOは、なるべく医療費を安く上げることを目的として作られた“閉じた”ネットワークです。病院にかかる際は、まずPCP(プライマリー・ケア・フィジシャン)と呼ばれるファミリー・ドクターが健康管理の最初の担当者となり、その医者に疾病の内容に応じて専門家への紹介状を書いてもらう必要があります。

 その他、アンセムは、低所得者層を支援する「メディケイド・プラン向けプログラム」も展開しています。

 アンセムは、加入者に対して上記のようなさまざまな健康保険プランを提供し、保険料を徴収します。そして、もし被保険者が病気や怪我をした場合、本人負担分を除く医療費の大半を肩代わりするわけです。したがって、「加入者のうち何人が、どのくらい病気に罹り、それを治療する医療コストがどのくらいの速度で値上がりするか?」ということを正確に予測しなければいけません。

 米国の平均な医療コストは、薬価や問診などの値上がりにより、年間に+6.0%前後で上昇しています。その関係もあり、アンセムの保険料は1年に1回値上げされます。保険料の売上高に対し、医療コストの支出が占める割合は2019年の場合86.8%でした。また、過去5年間の平均は85.1%でした。

 また、オバマ政権時代に成立したアフォーダブルケア法(ACA、通称:オバマケア)は、米国の医療制度に大きな影響を与える改革でしたが、賛否両論があり、現在でも「変更の必要性があるのでは?」と議論されています。実際、ACAになんらかの変更が実施された場合、アンセムのビジネスの収益性や商機にマイナスの影響を与える可能性があります。

 ただ、トランプ政権はACAの改変を試みましたが挫折しました。バイデン政権では、逆にACAを拡充する試みがなされる可能性はありますが、ACAが廃止されるリスクは低下したと言えます。つまり、アンセムをめぐる政治リスクは低下したということです

アンセムのEPSは、コロナ禍をものともせずに右肩上がり!
PERも13倍とS&P500に比べて大幅に割安

 アンセムの過去5年の業績は、下のチャートの通りです。

 2020年は新型コロナウイルスの影響で1株当たり利益(EPS)が落ち込む企業が多い中、アンセムは通年ベースで22ドル以上のEPSを出し、軽く去年の実績を上回ると予想されています

 また、アンセムは現在、向こう12カ月のEPS予想に基づき、13倍の株価収益率(PER)で取引されています。これは、SP&500の向こう12カ月のEPSに基づくPERが21.7倍であることを考えると、大変割安です

【今週のまとめ】
安定感があるビジネスにも関わらず割安に放置されている
アンセムの今後の値動きは要チェック!

 アンセムは、米国の国民に幅広く認知されている信頼のブランド「ブルークロス・ブルーシールド」を展開する健康保険会社で、参入障壁が高いです。バイデン政権が誕生することで、アンセムをめぐる政治リスクは低下。また、新型コロナウイルスが猛威を振るう中でも、アンセムのビジネスは悪化しませんでした。

 このような安定感のあるビジネスにもかかわらず、アンセムの株は市場平均に比べて極端な割安で取引されているので、ぜひ注目しておきたいところです

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アンセム(ANTM)チャート/日足・6カ月アンセム(ANTM)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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