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米国株「マリオット・インターナショナル」は、新型コロナ用ワクチンの恩恵を真っ先に受ける注目銘柄!“持たない経営”という戦略から業績まで詳しく解説!

2021年2月22日公開(2022年9月22日更新)
広瀬 隆雄
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「マリオット・インターナショナル」は多様化するニーズに応え、
ラグジュアリー・ホテルから若者向けホテルまで幅広いブランドを展開

 今回は、世界で7642のホテルや滞在型アパートメントを展開するマリオット・インターナショナル(ティッカーシンボル:MAR)を取り上げます。

 マリオット・インターナショナルはブランドの数が多く、「リッツカールトン」や「セントレジス」「Wホテルズ」「JWマリオット」「エディション」「ラグジャリー・コレクション」「シェラトン」「ウエスティン」「メリディアン」「ルネッサンス」「コートヤード」「フォーポインツ」「アロフト」「モクシー」などを展開しています。

 このように沢山のブランドを展開しているのは、消費者の嗜好がどんどん細分化してきており、個人の趣味や生き方にピッタリ合うサービスを提供するにはハッキリ特徴を打ち出したブランド戦略を採る必要があると考えているからです

 例えば「リッツカールトン」や「セントレジス」が伝統的なラグジャリー・ホテルの威厳を頑なに維持する一方で、「Wホテルズ」や「アロフト」は若者向けに楽しさやオシャレな要素を強調しています。

個々のホテルに関してはマルチ・ブランド戦略を展開する一方、
マーケティングとポイント・プログラムでは規模を活かす戦略

 こうした尖ったブランドを複数展開しつつ、戦略を統合し、マリオット・インターナショナルのグループ全体として集客を増やしてリピート率を高めるために、「マリオット ボンヴォイ(Marriott Bonvoy)」というカスタマー・ロイヤリティー・プログラムを展開しています。これを使えば、マリオット・インターナショナルのどのホテルに泊まってもポイントが貯まる仕組みになっています。

 言い直せば、サービスのコンセプトを考えるときは画一的な価値観を宿泊客に押し付けることをせず、くっきりと差別化されたサービスを提供する一方で、集客や顧客のつなぎとめに際しては大企業のネットワークをフル活用しているのです

フランチャイズ・モデルをにより多店舗展開を進めることで、
「マリオット・インターナショナル」は“持たない経営”を実践

 マリオット・インターナショナルは世界で142万室もの客室を展開しているのですが、その大半はフランチャイズ・モデルを採用しています。つまり、ホテル物件自体は不動産オーナーなどの投資家が所有し、マリオット・インターナショナルはブランドやホテル運営のノウハウ、予約システムなどを提供します。

 これは「持たない経営」と形容することができると思います。

新型コロナウイルスの影響で売上高と利益が激減するも、
営業キャッシュフローは“持たない経営”により黒字を維持!

 2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大で世界的にホテルの宿泊が激減しました。マリオット・インターナショナルの2020年におけるワールドワイドでの客室稼働率は、わずか35.5%でした。2019年が72.6%だったことを考えると、大打撃だったことがわかります。

 宿泊客が減ったので宿泊料金も一部値引きせざるを得ず、ワールドワイドでの平均宿泊料は一泊130.4ドルで、2019年に比べて-18.5%でした。

 さらに、販売可能客室当り売上高(RevPAR)は46.28ドルでした。これは先ほど紹介した客室稼働率に平均宿泊料を掛け算すれは計算でき、2020年のRevPARは前年比-60.2%でした。

 マリオット・インターナショナルがフランチャイジーに対して請求した各種フィーは15.5 億ドル。これは売上高に連動しており、前年比-59%でした。

 マリオット・インターナショナルにとって一番大きな売上項目は、コスト・リインバースメント売上高です。これはホテルの運営に際して発生する直接コストで、オーナーに請求して、実費精算してもらいます。2020年のコスト・リインバースメント売上高は84.5億ドルで、前年比-46%でした。

 純利益は、2019年は12.7億ドルの黒字でしたが、2020年は2.67億ドルの赤字に転落しました。1株当たり利益(EPS)に換算すると、2019年は3.80ドルだったのに対し、2020年は-82セントとなります。

 しかし、営業キャッシュフローを見ると、新型コロナウイルスの大打撃を受けたはずの2020年ですら黒字の16.4億ドルでした。これは目を見張る数字です

 マリオット・インターナショナルが営業キャッシュフロー・ベースで黒字を出せた理由は、「持たない経営」によるところが大きいと思います。つまり、固定費をなるべく抱え込まず、売上減に応じて自動的にコストがぐっと下がるような工夫がしてあることで、大赤字の発生を回避できたのです。

長年会社を率いてきたアーニー・ソレンソン氏が死去したものの、
後進の育成は順調なため、経営への悪影響は心配なし

 マリオット・インターナショナルは、アーニー・ソレンソン氏というホテル業界でたいへん尊敬されているCEOによって率いられていたのですが、先日、ソレンソン氏は他界し、社内外から惜しまれました。

 しかし、彼は後進の育成にたいへん力を入れていたため、マリオット・インターナショナルの上層部には優れたマネージャーが沢山控えており、経営が混乱する心配はありません。

【今週のまとめ】
新型コロナワクチンの接種が進んで旅行業界が上向けば、
「マリオット・インターナショナル」が値上がりする可能性大!

 マリオット・インターナショナルは、世界最大級のホテル・ブランドです。沢山のブランドを同時に展開することで、宿泊客の好みやライフスタイルに丁寧に応えてゆく戦略を採っていますが、こと集客やポイント・プログラムのようなネットワーク力が勝負になる局面では、「マリオット ボンヴォイ」と呼ばれるポイント・プログラムを積極的にアピールすることで優位に立っています。

 また、「持たない経営」を貫いた結果、新型コロナ不況においても営業キャッシュフロー・ベースでは赤字にならずに済みました。

 今後、新型コロナウイルス向けワクチンの接種が進むことで旅行市場が上向けば、真っ先に恩恵をこうむる銘柄だと思いますので、今からマリオット・インターナショナルをチェックしておくといいでしょう。
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