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「バイオジェット燃料」関連銘柄を紹介! 藻類などを原料とするバイオ燃料は、実質的にCO2を排出しない“カーボンニュートラル”な石油代替燃料として要注目

2021年3月19日公開(2022年9月20日更新)
村瀬 智一
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 3月13日に日経新聞が「エネルギー会社などが航空機に使うジェット燃料の二酸化炭素(CO2)排出量を減らす取り組みを本格化している」と報じました。記事によると、Jパワー(9513)が藻由来のジェット燃料事業に参入したり、ENEOSホールディングス(5020)がCO2と水素を合成した燃料の生産を目指したりなど、航空機向けの脱酸素型燃料の開発競争が激化している、とのことです。

 また、ユーグレナ(2931)が3月15日、国際規格に対応した藻由来のバイオジェット燃料が完成したことを発表したところ、16日の株式市場では25%を超える大幅高となり、2017年以来の高値水準まで急伸しました。

■ユーグレナ(2931)チャート/日足・3カ月
ユーグレナ(2931)チャート/日足・3カ月ユーグレナ(2931)チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト) ※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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 そこで今回は、藻や木材などのバイオマス原料をもとに製造される航空燃料「バイオジェット燃料」に注目しました。

「CO2削減」は航空業界にとって喫緊の課題であり、
その重要な対策のひとつが「バイオジェット燃料」の実用化

 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、世界全体のCO2排出量に対して、国際線、国内線を合わせた航空業界全体からの占める割合は2%で、その大半は国際航空により排出されています

 さらに、航空業界からのCO2排出量は増加傾向にあります。国際民間航空機関(ICAO)によれば、グローバル化などに伴う国際航空の増加に対して何の対策も取らなかった場合、2010年と比べてそのCO2排出量は2040年までに2.8~3.9倍にも拡大すると推測されています

 CO2などの温室効果ガスの排出量削減に関する国際的な枠組みとしては、2015年に開催された第21回国連気候変動枠組条約結約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」がありますが、実は、国際航空による温室効果ガスの排出については「パリ協定」の対象外となっており、国際航空による排出量は前出のICAOによって国際的なルールが定められています。

 2010年に開催されたICAO第37回総会では、国際航空における温室効果ガスのグローバル削減目標として、

・2050年まで燃費効率を年平均2%で改善
・2020年以降は温室効果ガスの排出量を増加させない

の2つが定められました。要するに「2020年以降のカーボンニュートラルの実現」が目標となっています。そして、この目標達成のため、

(1)新技術の導入
(2)運航方式の改善
(3)代替燃料の活用
(4)経済的手法(排出権取引)

の4つの対策を進めていくことが決議されました。

 さらに、2016年のICAO第39回総会において、目標達成のための具体的な制度として、「国際民間航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」が採択されました。このCORSIAにより、制度参加各国の運航会社は、2021年から定められたルールに沿って必要量の「温室効果ガス排出枠」を購入する「カーボン・オフセット」の義務を負うことになります。

 つまり、航空業界にとってCO2などの温室効果ガス排出量の削減は喫緊の課題であり、その重要な対策のひとつが「バイオジェット燃料」の実用化なのです

「カーボンニュートラル」の考え方により、
「バイオジェット燃料」はCO2排出量を大幅に削減可能

 「バイオジェット燃料」とは、微細藻類や木質系セルロース(木材チップや製材廃材など)といったバイオマス原料をもとに製造される航空燃料です。電気モーターで動くEVとは異なり、「バイオジェット燃料」であってもエンジンで燃焼させるという点では従来の航空燃料と同じで、その際、当然CO2も排出されます。しかし「バイオジェット燃料」の場合は「カーボンニュートラル」の考え方が採用される点がメリットとなります。

「カーボンニュートラル」とは、「CO2の排出量から吸収量と除去量を差し引き、全体の合計をゼロにする」という考え方です。例えば、藻を原料とする「バイオジェット燃料」の場合、藻を培養する段階で大量のCO2を吸収するため、燃焼時にCO2を排出してもトータルではプラスマイナスゼロになると見なすことができます。

 こうした状況を踏まえ、今回は「バイオジェット燃料」関連銘柄をピックアップしました。「バイオジェット燃料」関連は、他の投資テーマと比べると、現状で関連銘柄の数はそれほど多くはありません。そのため、今回紹介する銘柄を押さえておけば、「バイオジェット燃料」関連が物色される際に、いち早く反応することができるでしょう。

【ユーグレナ(2931)】
国際規格に適合した藻由来のバイオジェット燃料を開発

 冒頭でも述べたように、ユーグレナ(2931)は3月15日、米国のCLG社やARA社と共同で、バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントにおいて国際規格「ASTM認証」に適合した微細藻類「ユーグレナ」由来のバイオジェット燃料が完成したと発表しました。バイオディーゼル燃料については2020年4月より先行して供給を開始していますが、今回の「バイオジェット燃料」に関しても年内のフライト実現に向けて、航空運送事業者などとの最終調整を進めていくとしています。また、ユーグレナは3月16日、開発したバイオ燃料を使用したドローンによる物流実証を石垣島で成功させたことも発表しています。

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ユーグレナ(2931)チャート/日足・6カ月ユーグレナ(2931)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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【Jパワー(電源開発・9513)】
藻由来のバイオジェット燃料について、2030年の事業化を目指す

 Jパワー(9513)は2020年10月5日、「海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養技術の開発」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業「バイオジェット燃料生産技術開発事業/微細藻類基盤技術開発」に採択されたと公表しました。報道によれば、2030年の事業化を目指しているとのことです。

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Jパワー(9513)チャート/日足・6カ月Jパワー(9513)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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【IHI(7013)】
開発したバイオジェット燃料が国際規格「ASTM認証」を新規取得

 IHI(7013)は2020年6月8日、微細藻類から製造するバイオジェット燃料が国際規格「ASTM認証」を新規取得したことを発表しました。この技術で製造されたバイオジェット燃料は、所定の割合で既存のジェット燃料と混合して燃焼させることで、航空機が排出するCO2を削減することができます。

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IHI(7013)チャート/日足・6カ月IHI(7013)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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【ENEOSホールディングス(5020)】
「水素」と「CO2」を元にした合成燃料の製造を目指す

 ENEOSホールディングス(5020)は、「ATJ技術を活用した本邦バイオジェット燃料製造事業の事業性評価」と「バイオジェット燃料製造に最適なガス化・FT合成による一貫製造プロセス・サプライチェーン構築の事業性評価」の2件のテーマが、NEDOの2019年度の委託事業に採択されています。さらに、「再生可能エネルギー由来の水素」とCO2を合成して「再エネ合成燃料」を製造する研究にも取り組んでおり、その動向も注目されています。

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ENEOSホールディングス(5020)チャート/日足・6カ月ENEOSホールディングス(5020)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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【東洋エンジニアリング(6330)】
米国のVelocys社と共同で、案件開拓とプロジェクト実行を推進

 東洋エンジニアリング(6330)は2021年2月5日、再生可能燃料の製造技術に関する商業化プロジェクト推進に向け、米国のVelocys社と包括的協定書を締結しました。木質バイオマスや都市ゴミ、産業施設から排出されるCO2などからジェット燃料やその他の燃料を製造する設備について、共同で案件開拓とプロジェクト実行を推進します。

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東洋エンジニアリング(6330)チャート/日足・6カ月東洋エンジニアリング(6330)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 以上、今回は「バイオジェット燃料」関連銘柄を紹介しました。

 世界全体のCO2排出量の中で航空業界が占める割合が「2%」と聞くと、それほど大きな数字ではないように感じる方もいるかもしれませんが、環境問題の専門家の間では、航空業界のCO2排出量は無視できない大きな課題として扱われています。「10代の環境活動家」として知られるグレタ・トゥンベリさんが、2019年、ニューヨークで開かれた環境会議に出席する際、CO2の排出量が多い飛行機には乗らず、わざわざヨットで2週間かけて欧州から米国に渡った、というニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。

 「バイオジェット燃料」は、CO2排出量の抑制など航空業界の低炭素化に向けた取り組みには欠かせない技術のため、長期的な視点からも、今後、市場の関心が高まる可能性は高いでしょう。

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