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「米国の雇用統計」と「FRBの金融引き締めへの警戒感」から
円安・ドル高が進み、日米の株式市場はデカップリングへ
日米の株式市場が「デカップリングしている(=連動していない)」ように感じます。主因は、日米の金利差拡大期待を背景にした、外国為替市場での円安・ドル高です。
円安・ドル高のきっかけは、2月3日に発表された1月の米・雇用統計が非常に強い内容だったことに加え、日本経済新聞(電子版)が6日未明、日銀の黒田東彦総裁の後任人事について、政府が「雨宮正佳副総裁に就任を打診したことがわかった」と報じたことでした。
前週末2月3日のNYダウは前日比127.93ドル(0.38%)安の3万3926.01ドル、ナスダック総合株価指数は同193.86ポイント(1.59%)安の1万2006.96ポイント、そして、米国10年債利回りは前日比0.13%高い3.52%でした。
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米国時間で2月3日の朝方に発表された1月の米・雇用統計が非常に強い内容だったので、FRBが金融引き締めに積極的な「タカ派」に傾くことへの警戒感が高まったことで米国の長期金利が上昇し、ハイテク株のみならず景気敏感株も売られたのです。また、日米の金利差が拡大するとの観測から、円売り・ドル買いが優勢となり、円安が加速しました。
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1月の米・雇用統計では、インフレに影響を与える平均時給は前年同月比4.4%増で、前月(改定後、4.8%増)から伸びが減速しました。しかしながら、非農業部門雇用者数が前月比51万7000人増と前月の26万人増、市場予想の18万7000人増ともに大きく上回りました。また、失業率が予想に反して3.4%と53年ぶりの水準に低下しました。
ちなみに、2月6日にアトランタ連銀のボスティック総裁は、予想外に好調だった雇用統計を受け、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が、FRBの予想であり自身の予想でもある5.1%より高まる可能性に言及したそうです。実際、足元では「FRBは5月も利上げを続ける」と見る市場参加者が増えているそうです。
なお、今週はFRB高官の発言が目白押しです。具体的には、2月7日にパウエルFRB議長が、7日と8日にバーFRB副議長が講演します。また8日には、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁がウォール・ストリート・ジャーナルの討論会に、クックFRB理事が対話集会に参加します。さらに、8日と9日にウォラーFRB理事が講演する予定です。よって今週は、世界の金融市場が彼らの発言に一喜一憂することになるでしょう。
1月の強い雇用統計に加え、2月3日に発表された1月のISM非製造業景況感指数が55.2と2カ月ぶりに好不況の境目とされる50を上回り、市場予想の50.6以上に改善したこともあり、彼らの発言は総じて「タカ派的な内容」になると見ています。
「ハト派の雨宮氏に次期日銀総裁への就任を打診」との報道により、
1ドル=132円台まで円安ドル高が進んで日本株の買い材料に
一方、週明け2月6日の日経平均株価の終値は前週末比184.19円(0.67%)高の2万7693.65円と、前週末3日の米国の株安にかかわらず、非常に強い値動きでした。また、週明け6日のNYダウは3日続落し、前週末比34.99ドル(0.10%)安の3万3891.02ドル、ナスダック総合株価指数は続落し、同119.505ポイント(1.00%)安の1万1887.450ポイントでしたが、7日の前場の日経平均株価は堅調に推移。後場に入って多少調整したものの、前日比8.18円(0.03%)安の2万4685.47円となりました。
前述したように「政府が雨宮正佳副総裁に就任を打診したことがわかった」との報道をきっかけに円相場が1ドル=132円台まで下落していることが、引き続き、日本株の買い材料になっているようです。
また、「タカ派的総裁の人事案」を予想していた売り方が「ハト派の雨宮氏への打診報道」を受け、慌てて日本株の個別株や株価指数先物の買い戻しを行っているのでしょう。
ちなみに雨宮氏は、各種メディアによって報じられてきた有力候補の中で、金融緩和の修正に慎重なスタンスだとされています。雨宮氏は、2013年に就任した黒田総裁を企画担当理事や副総裁として支え、デフレ下の金融政策を担ってきた実績があります。政府・与党内では「金融緩和の継続と修正の両方とも舵取りできる」との評価もあるそうです。
なお、数日早まる可能性はあるものの、日銀の総裁、副総2名の後任人事案は、2月10日に国会に提示される見通しです。ただし、鈴木俊一財務相は7日午前の記者会見で、政府が雨宮正佳日銀副総裁に次期総裁への就任を打診したとの報道について「事実関係について、私は承知していない。何も聞いていない」と述べています。
テクニカル的に、日経平均株価は25日移動平均線を下回り、
かつ25日移動平均線自体が下向きに転じない限りは堅調に推移
テクニカル的には、日経平均株価の2月7日終値は2万7685.47円と、5日移動平均線(7日時点で2万7527.50円)、25日移動平均線(同2万6770.05円)、75日移動平均線(同2万7263.95円)、100日移動平均線(同2万7219.36円)、200日移動平均線(同2万7237.10円)のすべてを上回っています。また7日時点で、5日移動平均線は4日連続で上昇しており、今後、5日移動平均線自体が上昇を継続する限り、堅調な値動きが続く見通しです。さらに、より長期の25日移動平均線は1月26日~2月7日まで9日連続で上昇しており、中期のトレンドも現時点では「上向き」と見てよさそうです。
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少なくとも、25日移動平均線を下回り、かつ25日移動平均線自体が下向きに転じない限り、日経平均株価は堅調に推移すると考えます。逆に、そうなった場合は日経平均株価の急落リスクに備えるべきです。
いずれにせよ、好調な米国のマクロ指標が相次ぐ状況では、FRBがタカ派スタンスを変更することはないでしょう。このため、米国の長期金利は下がり難く、日米の金利差拡大への期待に加え、好調な米国経済のファンダメンタルズを反映して、外国為替市場ではドルが対円で強い状況が続く見通しです。この円安基調は、我が国の輸出企業の収益にポジティブに作用し、日経平均株価を力強くサポートすると考えます。
その一方、米国の株式市場では、好調な景気・経済が下支えするとはいえ、多くの投資家が「FEDと戦うな(Don't Fight The FED)」との相場格言を守り、上値追いには慎重なスタンスを維持する見通しです。
航空機利用客の「マスク着用義務」の見直しなど、
日本と中国のコロナ政策の変更は株式市場にポジティブに作用
ところで、新型コロナウイルスの抑え込みを狙う「ゼロコロナ」政策の撤廃により、中国政府は2月6日、海外への団体旅行を解禁しました。新型コロナウイルスの影響で2020年1月に海外への渡航を禁止して以来、約3年ぶりに許可したのです。
また、ANAやJALなど航空各社が加盟する定期航空協会は2月6日、政府が新型コロナウイルスの感染症法上の分類を「5類」にすること受け、これまで利用客に要請してきた「マスク着用」について見直す方針を明らかにしました。ANA社長の井上慎一会長は同日、「新型コロナの感染症法上の類型見直しは、国内外の往来や経済の活性化につながる」と述べたそうです。
日本および中国のコロナ政策の変更(正常化)は、日本の経済・景気・株式市場にポジティブに作用するはずですから、私も井上会長の言葉に同意しています。よって、引き続き「押し目買い・噴き値売りを基本方針」に、積極的な市場参加をおすすめします。
「日経平均株価が25日移動平均線を下回り、かつ25日移動平均線自体が下向きに転じるまでは強気維持」との見方は不変です。ただし、欧米発の想定外、かつ突発的な悪材料の発生で、地合いが急変するリスクだけには十分気を付けて、運用を行ってください。
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