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日銀は、長期金利の上限0.5%超えをある程度容認するなど
YCC運用の修正を決定する一方、国債買い入れ強化の姿勢も示す
日銀は7月28日の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用の修正を決めました。
修正が発表された直後、日本株の株価は乱高下しました。しかしながら、YCCについては、日銀が債券市場から国債を買って国債の利回りを無理やり低く抑え込むことで本来の金利水準が分からなくなるなど、債券市場の機能を低下させるという副作用が顕在化していました。このため金融市場では「遅かれ早かれ日銀はYCCの修正に動く」と見ていました。ですから、YCCの修正自体には、驚きはありません。
今回の会合での具体的な修正内容は、以下の通りです。
・長期金利の操作目標はゼロ%程度、変動幅は±0.5%程度に維持したうえで、現在の変動幅の位置付けを“目途”として、YCCを従来よりも柔軟に運用。
・これに伴い、債券市場の状況によっては、長期金利はその範囲(ゼロ±0.5%程度)を超えて動くことも容認
・ただし、1%を超えて長期金利が上昇しないように1%の水準では連続指値オペで金利上昇を抑制する。
なお、植田総裁は記者会見で「長期金利が1%まで上昇することは想定していませんが、念のための上限キャップとして1%とした」と述べています。
債券市場や外国為替市場では、このYCCの運用柔軟化の影響が早速出ています。債券市場では、7月31日の新発10年もの国債の利回りが上昇し、前週末比0.055%高い0.595%で取引を終えました。一時は0.605%まで上昇し、2014年6月以来、約9年ぶりの高水準を付ける場面がありました。
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その一方で、日銀は7月31日、残存期間「5年超10年以下」の国債を対象に、臨時の買い入れオペを実施しました。金利の急激な上昇局面(健全な上昇ではないと日銀が判断する局面)では、日銀が国債の買い入れを強化する姿勢を示したことで、31日の東京外国為替市場で米ドル/円相場は5営業日ぶりに反落しました。31日17時時点は、1米ドル=142円17~18銭と、前週末の同時点に比べ2円42銭の大幅な円安・ドル高でした。
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YCCの運用柔軟化自体は、金利面から見ると円高要因です。しかしながら、日銀の市場介入によって一本調子の金利高が阻止されるため、急激な金利先高観が強まりづらく、一方的な円高も起こりにくいのでしょう。
日銀はコアCPIについて「短期的な先行きはそれほど強くない」
「中長期的には緩やかに、かつ持続的に上昇する」と判断
7月28日に日銀は、「経済・物価情勢の展望(2023年7月)(展望レポート)」を発表しました。当該レポートでは「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、2023年度は大幅に上振れているが、2024年度と2025年度は概ね不変である」「先行きについては、現実の物価上昇率がプラス幅を縮小していくなかでも、需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動や労使間の賃金交渉が変化していくもと、見通し期間終盤にかけて予想物価上昇率が緩やかに上昇していくことで、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる」としています。
今回の展望レポートで注目したい点は2つです。1つ目は「日銀は、変動の大きい生鮮食品を除く物価指数(コアCPI)について、足元では強いが、短期的な先行きはそれほど強く見ていない」ということです。2つ目は「日銀はコアCPIについて、中長期的には緩やかに、かつ持続的に上昇すると見ている」ことです。
1つ目に関して、総務省が集計しているコアCPIの上昇率は、2022年4月〜2023年6月まで15カ月連続で、日銀が目標に掲げている「2%程度」を上回っています。それにもかかわらず、日銀は、短期的な先行きの上昇率を低く見積もる(政策委員見通しのコアCPIの中央値は2023年度が2.5%、2024年度が1.9%、2025年度が1.6%)ことで、金融緩和をまだまだ粘り強く続ける姿勢を示しています。
2つ目に関しては、日銀の見通し通り、緩やかなインフレが中長期的に続くなら、日本株の中長期的なトレンドは「上昇トレンド」となる可能性が高いでしょう。なぜならば「株式はデフレが大嫌いで、インフレが大好き」だからです。つまり「日本株は、中長期的なインフレを友達にして、上昇していく」という展開が、現時点でのメインシナリオとなります。
8月中旬以降の東京市場は「夏枯れ相場」に突入!
決算内容をじっくり検討しつつ、腰を据えた投資を心がけよう
それにしても、足元の日本株は非常に強い動きになっています。7月31日のTOPIXは前週末比31.95ポイント(1.39%)高の2322.56ポイントと大幅に反発し、1990年7月以来、33年ぶりの高値を更新。月間では、7カ月連続の上昇となりました。
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一方、日経平均株価は、月間で7カ月ぶりに下落しましたが、下落幅は16.82円(0.05%)と小幅でした。日経平均株価もTOPIXほどではないものの、強い動きを続けていると評価していいでしょう。
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TOPIXにしても日経平均株価にしても、堅調に推移している主因は、企業業績のさらなる改善期待が高まっていることでしょう。
例えば、7月31日の日経速報ニュースによれば「大和証券の集計によると、TOPIX採用企業で7月27日までに4〜6月期(3〜5月期含む)決算を発表した企業のうち66%が市場の利益予想を上回った。アナリスト予想(QUICKコンセンサス)の上方修正と下方修正を比較したリビジョン・インデックス(RI)もプラス圏(上方修正が優勢)に浮上してきた」とのことです。つまり、足元で、日本株のバリュエーションが切り上がっているからこそ、日本株の先高観が強まっているのです。
その一方で、7月の日経平均株価が、月間で見て小幅とはいえ7カ月ぶりに下落したことで、目先の日経平均株価は、中長期的な上昇トレンドのなかでの「踊り場」となる可能性が高いとも見ています。
例年8月は、海外投資家が長期の夏季休暇入りし、海外勢の動きが鈍る傾向があります。また、主力企業の4〜6月期決算発表が一巡したら、個別の手掛かり材料はなくなっていくでしょう。
そして、決算発表のピーク終了直後から、日本はお盆休みに突入します。今年のお盆休みは、8月13~16日の4日間ですが、11日(山の日の祝日)と12日の土曜日を含めると6連休となり、長期休暇となる企業も多くなる見通しです。このため、長めのお盆休みを取って、市場からいったん離脱する国内の投資家も増えそうです。
こうなると、8月中旬以降の東京株式市場は、ボリューム面での盛り上がりが見込み薄のため、勢いのある上昇は期待できそうにありません。
以上のことから、8月相場に関しては、まず、中旬までに発表された4〜6月期決算の内容をお盆休み中に十分に時間をかけて吟味しておきましょう。そして、あなたが「この銘柄はいける」と感じた銘柄を選んだら、慌てず、ゆっくりと時間をかけ、コツコツと「押し目」で仕込んでいくべきだと考えます。
なぜなら、相場全体としては、慌てて飛び乗らないと置いて行かれてしまう局面ではないと考えているからです。じっくりと腰を据え、時間軸を長めにして投資していく戦略を推奨します。
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