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格付け会社フィッチによる米国債の格下げをきっかけに、
投資家の関心は企業業績から長短金利動向に移行!
日米ともに、多くの投資家の関心は、企業業績から長短金利の動向に移ったと見ています。
きっかけは、やはり、今後3年間の財政悪化懸念や政府の債務上限問題に対する政治の混乱などを理由に、大手格付け会社フィッチ・レーティングスが8月1日、外貨建てのアメリカ国債の格付けを、最も信頼度が高い「AAA」から「AA+」に1段階引き下げたと発表したことでした。さらに、日本独自の要因としては、日銀が7月28日の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用の修正を決めたことが挙げられます。
米国債の四半期定例入札で需要の弱さが示されれば、
米国の金利が上昇し、米国株が調整色を強める展開に!
まず、米国についてですが、8月4日に発表された7月の米・雇用統計で、非農業部門の就業者数が前月から18万7000人増と市場予想の20万人を下回りました。また、5月と6月の雇用者数の伸びも下方修正されました。一方、失業率は3.5%と6月の3.6%から低下しました。さらに、平均時給は前年同月比4.4%、前月比でも0.4%上昇しました。米国では、人手不足が続き、賃上げ圧力が依然として強い様子が窺えます。
今回の雇用統計に対してボウマンFRB理事は8月5日、インフレ率をFRBの目標である2%まで低下させるには「おそらく追加利上げが必要になるだろう」との見解を示しました。また、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、雇用統計が発表される前の8月2日に行われ、7日に報じられたニューヨーク・タイムズとのインタビューで「米国の政策金利を当面は“景気抑制的な水準”に維持する必要があるとしたうえで、インフレが減速すれば来年には利下げが正当化される可能性がある」との考えを示しました。このように粘り強いインフレが継続することで、米国の金利は少なくとも年内いっぱいは高止まりする見通しです。
なお、今週は、米国の財務省が国債の四半期定例入札を実施します。8月2日の発表によれば、財務省は今週の入札で3・10・30年債を前回の計960億ドルから拡大し、計1030億ドル相当発行します。さらに財務省は、発行規模の拡大が2024年に入っても続く可能性が高いとの見解を示しました。だからこそ「今後3年で米国の財政状況が悪化する」とフィッチは懸念しているのです。そして、市場でも将来の米国債の需給不安が燻り続けています。万が一、今週の入札結果が需要の弱さを示す結果となれば、米国の金利が一段と上昇すると見られます。
また今週は、米国で市場の関心が高い7月の米・CPIが8月10日に発表されます。このCPIがインフレ鎮静化を示すか否かが注目されます。
いずれにせよ、今後に関しては、米国の金利が低下するようなら米国株は力強く上昇するでしょう。しかし、逆に、米国の金利が上昇するようだと、高PERのグロース株の上値圧迫要因となり、米国株は調整色を強めそうです。
8月10日発表の企業物価指数などでインフレが意識されれば、
高PERグロース株が下落し、YCCの修正・撤廃が前倒しされるリスクも
一方、日本でも、8月8日に30年債の入札(79回リオープン、発行予定額9000億円程度)が実施されます。リオープンとは、国債の発行に際して、既発債と同一のクーポンおよび利払い日・償還日を設定し、同一の回号を付与することで、発行時からその国債を既発債と同一銘柄として取り扱う制度です。
その79回債の利回りは8月4日に一時1.630%と、1月13日以来およそ7カ月ぶりの水準に上昇しました。日銀がYCC運用の柔軟化を決めてから、超長期債(一般に、償還までの期間が10年を超える債券)の利回りは上昇基調で、価格面では下値不安が燻り続けています。ただし、今回(8月8日)の入札に関しては、生命保険会社などの買い需要が見込めるため、無風で通過するとの見方が大勢のようです。
また、8月10日には日銀が、7月の企業物価指数を公表する予定です。日本に関しても、米国同様、今後発表される物価指標でインフレが意識されるような状況となれば、超長期の金利上昇(超長期債の下落)を嫌気する格好で、高PERのグロース株の上値を圧迫する見通しです。そのケースでは、YCCの修正や撤廃のタイミングが前倒しされるリスクも高まると見ています。
なお、YCCが撤廃する見込みが強まった際に「金利上昇⇒円高・ドル安」となるのか、それとも「日本国債格下げ⇒円安・ドル高」になるのか、現時点では予測できません。いすれにせよ「YCC撤廃」ということになれば、短期的に市場に激震(株安・債券安)が走ることは不可避だと見ています。その一方で、それはまだまだ先のことであるとも考えています。
日本では今後数年間、長短金利の上昇が続く可能性が高いため、
金利上昇が追い風となるセクター・銘柄を中心に狙っていこう!
市場では、バリュー株に対して出遅れているグロース株の逆襲に期待する声が根強くあります。しかしながら、グロース株が逆襲に転じるには、金利の低下傾向が鮮明になる必要があるでしょう。そうは言っても、利上げの最終局面に来ている可能性の高い米国と、利上げのスタートラインにすら立っていない日本とでは、状況が大幅に異なっています。
つまり、米国の株式市場に関しては、金利上昇による影響を相当部分、織り込んだと考えられます。一方、日本の株式市場については、政策金利(短期金利)の上昇と市場金利(長期・超長期金利)の上昇が今後、数年間続く可能性が高いので、国内金利の上昇が業績への追い風となる銀行株や保険株のようなセクター・銘柄を中心に狙っていくべきだと考えています。
ちなみに、市場関係者へのヒアリングベースでは、信用取引を積極的に活用し、小型グロース株の短期売買や直近IPOの売買など、アクティブな運用を好む個人の損益状況は良くないようです。
彼らの損益状況をほぼ正確に示す代表的な株価指数であると私が考えているのが東証マザーズ指数です。東証マザーズ指数は、2020年10月14日の1368.19ポイントを高値に大幅に下落しました。2022年6月20日の607.33ポイントで底打ちをしたものの、その後の値動きは日経平均株価やTOPIXと比べると明らかに鈍い状況が続いています。よって、目先のグロース株の逆襲は厳しいと見ています。
※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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さて、今週で決算発表は一巡し、日本はお盆休みに突入します。株価を刺激する材料が大幅に減少し、市場参加者も激減する見通しのため、来週は非常に高い確率で「夏枯れ相場」になるでしょう。今週、来週は「休むも相場」で売買は手控え、銘柄研究・銘柄選定にじっくりと時間をかけるべき局面と考えています。
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