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再生可能エネルギーの実用化とカーボンニュートラルの実現のため
炭化ケイ素などを使った「次世代パワー半導体」の導入が進む
今年の夏は観測史上、最も暑かったそうです。また、秋に入っても11月の最高気温を100年ぶりに更新するほど暑さが続きました。この異常な暑さは日本だけのことではありません。近年、世界各地で異常気象が起きており、8月初旬にハワイで発生した大規模な山火事も、猛暑と干ばつが一因とされています。
こうした異常気象は、地球温暖化によって気象現象が大きく変化していることが原因と言われます。国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は7月の記者会見で「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と発言しましたが、このままでは今後さらに夏が長くなり、日本の大事な「四季」までも失われてしまうのではと心配されています。
こうした地球温暖化による異常気象を回避するため、二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させることで排出量を「実質ゼロ」にする「カーボンニュートラル」を目指す動きが世界的に進められており、我が国も2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しています。
カーボンニュートラルを実現するには、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が必須ですが、そのために活躍が期待されるのが「パワー半導体」です。
パワー半導体については、当コラムでもこれまで何度か取り上げてきましたが、改めて説明すると、通常の半導体に比べて高電圧・高電流の制御や変換が行えるデバイスのことです。カーボンニュートラルに向けて有力な武器とされる電気自動車(EV)は、モーターの駆動や交流と直流の変換のためにより高圧・大容量の電力が必要ですが、そうした大きな電圧や電流を制御する役割を担うのがパワー半導体です。また、電圧や電力への耐性の高さから、EVだけでなく、産業機器や鉄道、家電など、多様な電気機器の制御にも用いられています。
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現在のパワー半導体の市場を見ると、シリコンを材料に使ったシリコン(Si)パワー半導体が主力ですが、最近ではシリコンより電力損失が少なく、高電圧に対応できる「次世代パワー半導体」、なかでも「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」への期待が高まっています。
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2050年には「10兆円」もの市場規模が予測される
「パワー半導体」の製造に関わる企業をピックアップ「!
経済産業省が公表している鉱工業指数を見ると、2022年時点において、鉱工業全体が2015年比で落ち込む一方で、半導体をはじめとする電子部品・デバイスや半導体製造装置、蓄電池産業の生産は大きく伸びており、特に半導体製造装置の成長が顕著に表れています。実際にパワー半導体の世界市場規模は拡大しており、現時点で約3兆円ですが、2030年には5兆円、2050年には10兆円市場になると言われています。
パワー半導体の世界シェアを見ると、日本企業は欧州、米国と並びトップ3の一角を占めており、国内ではそのシェアを複数の企業で分け合う状況となっています。しかし、次世代パワー半導体に関しては、海外製品への依存度が高いことから、国内生産を強化する動きが見られます。
日本政府は、経済安全保障の観点から重要な先端・次世代半導体の生産や開発を支援すべく、2兆円近い今年度補正予算を盛り込んでいます。国内企業においても、液晶や太陽光パネルなど国内の生産が縮小している工場を再活用し、新たな半導体の生産拠点にする動きが相次いでいます。
そうした状況を踏まえ、今回は将来的な市場成長が見込まれる「パワー半導体」関連に注目しました。具体的な銘柄としては、パワー半導体の製造に関連する企業の中で、足元で株価が堅調に推移している企業を選定。どの銘柄も株式の需給状況が良好であり、一段の上昇が期待できます。
【三菱電機(6503)】
オランダのネクスペリアとSiCパワー半導体共同開発で提携
三菱電機(6503)は11月13日、オランダのネクスペリアとSiCパワー半導体の共同開発に向けた戦略的パートナーシップに合意したと発表。自社の強みである化合物半導体技術などを適用した“SiC-MOSFETチップ”をネクスペリア向けに開発・供給するとのことです。株価は、11月8日に発表した2024年3月期・第2四半期の決算が好感されたことでマドを空けて急騰し、その後も上昇が続いています。7月25日につけた年初来高値2105円に接近しており、このまま高値更新すると2018年1月の上場来高値2179円の突破が意識されそうです。
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【ミネベアミツミ(6479)】
パワー半導体製品を手掛ける日立パワーデバイスを子会社化
ミネベアミツミ(6479)は11月2日、日立製作所(6501)からパワー半導体製品を手掛ける日立パワーデバイスの株式を取得し、子会社化することを発表しました。この事業譲受により、従来のチップ製造に加え、パッケージおよびモジュールの後工程技術と生産能力を取得でき、パワー半導体の開発から生産まで総合的なビジネス展開が可能となります。株価は今回の発表を受けて急伸し、11月6日には2854円まで買われました。その後は調整が続いていましたが、一度9月と10月の戻り高値水準まで下げており、仕切り直しからのさらなる上昇が期待されます。
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【ディスコ(6146)】
世界的なEVシフトがパワー半導体事業の強い追い風
ディスコ(6146)は半導体製造装置を手掛けています。足元の業績については、世界的なEVシフトが強い追い風となったパワー半導体事業が全体を下支えしています。好調なパワー半導体事業により、市場動向と連動性が高い7-9月期の出荷額は794億円と高水準を維持しています。また、今後は生成AI向けの需要が顕在化すると会社側では見ているようです。株価は、上向きで推移する13週移動平均線に沿った上昇トレンドを継続。直近では75日移動平均線を下値支持線にリバウンドを見せており、再び3万円台を回復しました。11月15日には10月12日以来の上場来高値を更新しており、さらなる上昇を狙ったスタンスになりそうです。
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【タツモ(6266)】
パワー半導体の製造に使う貼合・剥剥離装置では世界シェアを誇る
タツモ(6266)は洗浄装置、貼合・剥離装置、リン酸プロセス装置などの半導体製造装置を展開。パワー半導体の生産工程で使用される貼合・剥離装置では世界シェアを誇ります。足元でパワー半導体メーカーの設備投資は堅調であり、引き合い状況は高水準で推移しています。11月13日発表の2023年12月期・第3四半期の決算で回復基調を見せていることが確認され、株価は11月14日にストップ高をつけ、15日も9%を超える上昇で上場来高値を更新しました。ここからの一段高を狙いつつも、短期的な過熱感が意識されるため、押し目狙いのスタンスになります。
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【東洋インキSCホールディングス(4634)】
高い耐熱性と放熱特性を持つ焼結型銀ナノ接合材を開発
東洋インキSCホールディングス(4634)は2023年10月、パワー半導体チップなどのエレクトロニクス製品に用いる焼結型銀ナノ接合材を開発。無加圧での焼結と高い放熱性を両立した製品となります。SiCパワー半導体は、従来のSiパワー半導体と比較して動作温度が高く、より高い耐熱性と放熱特性が求められることから、これまでの鉛フリーはんだに代わる接合材として需要が期待されます。株価は、11月14日に2637円まで買われて年初来高値を更新。目先のターゲットは2019年11月の高値2808円になりそうです。
⇒東洋インキSCホールディングス(4634)の最新の株価はこちら!
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【日本酸素ホールディングス(4091)】
パワー半導体の開発を行うノベルクリスタルテクノロジーへ出資
日本酸素ホールディングス(4091)は、傘下の大陽日酸が7月31日、次世代パワー半導体材料として注目されている酸化ガリウム(Ga2O3)のウエハの開発・製造・販売と、パワー半導体の開発を行うノベルクリスタルテクノロジーへの出資を発表。この出資により、酸化ガリウムのエピウエハ製造に使用する成膜装置の開発を加速させる計画です。株価は上向きで推移する13週移動平均線に沿った上昇トレンドを形成しており、11月6日には4319円まで買われました。足元の調整で25日移動平均線近くまで下げてきたため、ここからのリバウンドが期待されます。
⇒日本酸素ホールディングス(4091)の最新の株価はこちら!
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そのほかの「パワー半導体」関連銘柄としては、11月10日に2024年3月期の業績を上方修正した東京エレクトロン(8035)にも要注目です。中国で半導体設備への投資が活況で、製造装置の販売が想定より増えるほか、産業機器やEVに使うパワー半導体や演算処理に使うロジック半導体やメモリーなど幅広い品目に投資が進んでいるのが主な要因のようです。
また、ローム(6963)は11月1日発表の下方修正が嫌気されましたが、2027年度のSiCパワー半導体事業の売上高目標を2700億円以上としており、2021~2027年度までに5100億円規模の投資計画を立てていることから、押し目狙いのスタンスで注目しておくといいでしょう。
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