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新型コロナウイルス治療薬の開発アプローチは、
「抗ウイルス薬」と「モノクローナル抗体」の2つがメイン
新型コロナウイルスに対するヘルスケア業界の取り組みは、(1)治療薬の開発、(2)ワクチンの開発、(3)血漿(けっしょう=プラズマ)の利用に分類することができます。
このうち「ワクチン」は、予防のために健康な人に投与します。価格が2000円くらいの大量生産かつ薄利多売のビジネスで、この分野にはモデルナ(ティッカーシンボル:MRNA)、バイオンテック(BNTX)、エマージェント・バイオソリューションズ(EBS)など、数多くの企業がひしめいています。一方、「治療薬」と「血漿」は、すでに新型コロナウイルスに罹ってしまった患者向けです。
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この3つのうち今回は「治療薬」を取り上げたいと思いますが、その開発のアプローチには、主に「抗ウイルス薬」と「モノクローナル抗体」の2つがあります。
「抗ウイルス薬」では、ギリアド・サイエンシズ(ティッカーシンボル:GILD)の「レムデシビル」が、すでに緊急使用承認を獲得して標準治療手法としての地位を確立しています。ただ、「レムデシビル」は、「ホームラン!」ではなく「ポテン・ヒット」くらいの効用しかないため、重篤な患者のためにもっと良い治療薬の開発が待たれています。
そこで今日は、そのような重篤な患者のために、「モノクローナル抗体」で治療薬の開発を試みているヴィア・バイオテクノロジー(ティッカーシンボル:VIR)を紹介します。
ヴィア・バイオテクノロジーは、
オールスター級の人材が揃った新興バイオ企業
ヴィア・バイオテクノロジーは4年前に創業されたばかりの非常に若いバイオ企業で、去年の10月に新規株式公開(IPO)したばかりです。ビジネスの対象は、伝染病だけに特化しています。
ヴィア・バイオテクノロジーは、オールスター級の実績ある経営陣で固められています。ジョージ・スカンゴスCEOは、以前にバイオジェン(ティッカーシンボル:BIIB)のCEOを務めた人です。また、国立科学アカデミー会員2名がヴィア・バイオテクノロジー勤めています。さらに、CMO(チーフ・メディカル・オフィサー)のフィル・ファングは、以前にギリアド・サイエンシズで「ハーボニ」を創薬した人です。その他、「エンブレル」や「プレベナー」「アバスチン」などの大型薬に関するサプライチェーンや承認過程に関わった責任者が勢ぞろいしています。
ヴィア・バイオテクノロジーに出資しているベンチャー投資家は、ビル&メリンダ・ゲイツ基金、テマセック、ARCHベンチャーパートナーズ、ベイリー・ギフォード、ソフトバンク、アブダビ投資庁などです。
本社は、サンフランシスコの新しい再開発地域・ミッションベイにあり、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の新キャンパスに隣接しています。
4種類の研究開発プラットフォームで新薬を開発!
2つの新薬候補は、今夏から第1・2相臨床試験が始まる
ヴィア・バイオテクノロジーは、研究開発をするにあたって「人体の免疫機能が病原菌に対してどう働いたのか?」というメカニズム究明から創薬を出発します。
もっと簡単な表現に直せば、ヴィア・バイオテクノロジーのやり方は、「過去に伝染病に罹った後、それを克服した患者さんを徹底的に観察して『この人はなぜ治ったのだろう?』ということを研究。治った人が持っている抗体を抽出し、薬を作り、それを近似する疾病にぶつける」というアプローチだと言えます。
ヴィア・バイオテクノロジーは、1)モノクローナル抗体、2)T細胞、3)先天性免疫、4)siRNA(低分子干渉RNA)という4つのテクノロジー・プラットフォームのうちのいずれかを使って治療薬を開発しています。
そして新型コロナウイルス治療薬に関しては、2つの別々のテクノロジー・プラットフォームを用いて創薬に取り組んでいます。
ひとつは「モノクローナル抗体」を使ったアプローチで、新薬候補「VIR-7831」ならびに「VIR7832」がこれに当たります。そこでは「S309抗体」という、かつてSARSが流行した際にSARSを克服した患者から抽出した抗体が、すべての「コロナ系」の伝染病に効く可能性があることを利用し、創薬を試みています。
5月18日には、「ネイチャー」という権威ある医学雑誌に「S309抗体」に関する論文が掲載されました。「S309抗体」は、コロナ系の伝染病なら何にでも効くと考えられており、それは今後、新型コロナウイルスが次々に変異(ミューテーション)を繰り返した場合でも「突然効かなくなった!」というリスクを排除できるものと期待されています。
現在は動物実験の段階で、今年の夏から第1・2相臨床試験が始まる予定です。実際に「VIR-7831」ならびに「VIR-7832」を製造は、バイオジェン(ティッカーシンボル:BIIB)が担当します。臨床・承認に際するパートナーは、グラクソ・スミスクライン(ティッカーシンボル:GSK)です。
もうひとつのテクノロジー・プラットフォームは「siRNA」で、「VIR-2703」という新薬候補の開発が進められています。こちらは年末までに臨床試験の開始届を出す予定で、パートナーは、アルニラム・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:ALNY)です。
【今週のまとめ】
すでに承認されたギリアドの「レムデシビル」では不十分!
ヴィア・バイオテクノロジーの開発する新薬に期待しよう
新型コロナウイルスの治療薬では、すでにギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」が承認されていますが、効用の面で十分ではありません。重篤な患者さんに投与するための次の有力新薬候補として、ヴィア・バイオテクノロジーが開発した「VIR-7831」「VIR-7832」の臨床試験がいよいよ動き始めます。この薬が依拠する抗体「S309」は、雑誌「ネイチャー」に論文が掲載されており、注目を浴びています。
ヴィア・バイオテクノロジーは若いバイオベンチャーですが、キラ星の如くスーパースターで固められた毛並みの良い企業です。注目しておくといいでしょう。
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