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米国株「ドラフトキングス」の業績や将来性を解説!「オンライン・カジノ」や「スポーツ・ベットティング」など、世界のオンライン賭博市場は年率10%で成長中!

2020年6月22日公開(2022年9月20日更新)
広瀬 隆雄
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「ファンタジー・スポーツ」や「スポーツ・ベッティング」などの
サービスを提供する「ドラフトキングス」とは?

 ドラフトキングス(ティッカーシンボル:DKNG)は「ファンタジー・スポーツ」「スポーツ・ベッティング」「オンライン・カジノ」という3つのサービスを提供しているモバイル・アプリ企業です。

 ファンタジー・スポーツとは、スポーツファンがナショナル・フットボール・リーグ(NFL)などのプロスポーツの知識を利用して、「自分の理想のチーム」を作り、それを他の人が作った理想のチームと戦わせて、リアルマネーを賭けながら勝敗を競う遊びです。もともとはスポーツ・バーなどリアルに人が集まる場所で始まったゲームですが、今はアプリ上で楽しむことができます。

 スポーツ・ベッティングもそれに似ているのですが、ファンタジー・スポーツが1シーズンを通じて競われるのに対して、試合ごと、あるいはもっと細かいゲームの局面ごとで結果を賭けることができます。サッカーのワールドカップや自動車レースのNASCAR、ゴルフ・トーナメントのPGAなど、あらゆるものがリアルマネーを使った賭けの対象になります。ユーザーが賭けをする相手方は、ドラフトキングスになります。

 オンライン・カジノでは、ブラックジャックやルーレット、スロットマシンなどのゲームをアプリで楽しむことができます。こちらもユーザーがリアルマネーを使って賭けをする相手方は、ドラフトキングスになります。

オンラインのゲーミング(賭け事)市場は、年率10%で成長!
スポーツ・ベッティング市場も700億ドル規模にまで拡大する見通し

 世界のゲーミング(賭け事)産業は、2019年の時点で4560億ドル市場でした。そのうちカジノが35%、スポーツ・ベッティングが16%、スロットマシンが20%、宝くじが26%などとなっています。

 ラスベガスやマカオのカジノ施設など、リアルのゲーミング施設は年率2%で、オンライン賭博は年率10%で成長しています。

 ドラフトキングスは、上のチャートで橙色の部分でビジネスをしています。オンライン賭博はいまだ始まったばかりであり、今後、急成長が予想されます。究極的に、スポーツ・ベッティング市場は700億ドル市場に、オンライン・カジノ市場は400億ドル市場になると言われています

 これらの市場はいずれも賭け事ですので、州政府などの規制対象になります。現在、米国でスポーツ・ベッティングを許可している州は全米の約半分の23州、うちオンラインでのスポーツ・ベッティングを許可している州は15州に過ぎません。この15州を人口に換算すると、全米の人口の約27%が許可されている計算になります

 全米の各州は新しい税収の財源を探しており、その意味ではスマホアプリを利用したスポーツ・ベッティングやオンライン・カジノは、積極的に検討したいプロジェクトです。しかし、州によって賭け事に対する経験値には大きな開きがあり、導入に時間がかかっている州も多いです。

 最も積極的に動いてきた州はニュージャージー州だと言えます。ニュージャージー州におけるオンライン・カジノ売上高は、下のように推移してきました。

 スポーツ・ベッティングとオンライン・カジノはどちらも賭け事なので規制面でも似ていると思われがちですが、実際にはスポーツ・ベッティングの方が規制は緩く、オンライン・カジノのほうがきついです。その理由として、カジノに関してはアメリカン・インディアン居住地など既得権益の保有者に対する保護があり、しかもギャンブル依存症の防止などの長い歴史的経緯があるため、いろいろウルサイのです。

 それに対してスポーツ・ベッティングは、スポーツファンの間で自然発生的に生まれた遊びという性格が強いため、法規制の枠組みは比較的ガッチリしていないのです。

新型コロナウイルスは、「ドラフトキングス」の業績に対して
プラス面もあればマイナス面も

 ドラフトキングスは、もともとファンタジー・スポーツから始まった会社で、その分野ではライバルのファンデュエルなどを抑えてナンバー1です。現在、10州でモバイル・スポーツ・ベッティングを展開し、世界に12のオフィスを構え、26カ国で運営しています。総従業員数は2200人です。

 ドラフトキングスは430万人の課金ユーザーを誇っており、月次ユニーク・プレーヤー数は72万人です(2020年3月末)。ユーザー1人当りの売上高は41ドルです。

 スポーツ・ベッティングでは、より没入できるサービス、キュレーションされたサービスを提供することでユーザーをもっと惹きつけることができます。そのためのひとつの方策としては、「次のプレイがどうなる?」ということにリアルタイムですぐ賭けられるようにすることです。そのような短期での賭けは「インゲーム・ベッティング」と呼ばれ、往々にして「次の一手」の勝敗は極めて読みにくいことから面白みや射幸性が増すという効果が出ます。

 スポーツ・ベッティングとオンライン・カジノでは、ユーザーが賭ける相手方はドラフトキングスそのものです。いつも胴元が勝っていると面白くなくなってしまうので、ときどき「ジャックポット(大当たり)」という形でユーザーが勝つように勝率を調整しています。その場合、偶然性を確実に担保する必要性から、「いつジャックポットが出るか?」に関しては、ドラフトキングスの経営陣ですらわからないようなアルゴリズムになっています。

 決算との絡みでいえば、突然、ジャックポットが出た関係で四半期決算が予想を下回るというケースも今後予想されます。しかし、これは「好まざる傾向」と考えるべきではなく、本当にフェアで面白い賭博を実現するためにはどうしても必要な経営面での不確実性だと捉えるべきでしょう。

 さて、今新型コロナウイルスの感染拡大で、米国の多くのプロスポーツは再開のメドが立っていません。これは、ドラフトキングスのファンタジー・スポーツやスポーツ・ベッティングのビジネスに大きな悪影響を与えています。その反面、退屈したユーザーはオンライン・カジノに流れることが予想されます。したがって、今後、オンライン・カジノがドラフトキングスの売上高に占める割合は、当初予想されていたより速く増える可能性があります。

 もうひとつドラフトキングスの業績を考える上で重要なのは、プロスポーツが開催されている期間はユーザーのアクティビティーが多いので、自ずと売上高も増えるということです。言い直せば、業績には季節性があるということです。

 オンラインの賭け事は、アメリカより先に欧州で普及しました。その関係で、ドラフトキングスをSBテックという企業を買収し、ソフトウェアも欧州の業者の作ったコア・システムを利用しています。いまドラフトキングスは、そのシステムを内製に切り替えるプロジェクトに着手しています。その理由は、インゲーム・ベッティングを今後多用しようと思えば、すべてを自分でコントロールすることが必要だからです。

 ドラフトキングスの業績は、過去12か月の年間売上高が4.32億ドル、1株当たり利益(EPS)が-40セント、発行済み株式数が3.5億株です。つまり、今は赤字を垂れ流しているということです。また、将来的な新型コロナウイルスの影響が見えにくいことと、今後のオンライン・カジノの拡大が州政府側の承認のペースに左右されるという理由から、目先の業績の予想は極めて立てにくいです。

【今週のまとめ】
将来性が有望なゲーミング業界の大手企業である
「ドラフトキングス」に注目!

 ドラフトキングスは、ファンタジー・スポーツ、スポーツ・ベッティング、オンライン・カジノのモバイル・アプリ企業で、これらの賭け事の将来性は極めて有望です。しかし、足下では新型コロナウイルスによりスポーツ・イベントが中止になっているなど、不透明感は強いです。

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