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10月に入って予想外のニュースや、完全な予想外ではなくとも多くの投資家が「まさか、そんなことは起きないだろう、起きて欲しくない!」と思うような事故・イベントが発生しており、金融市場の不安定さが増し、先行きの不透明感も高まっています。具体的には、10月1日の「東証のシステム障害による売買停止」と、10月2日の「トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染」です。
10月1日に東証のシステム障害により売買停止するも、
翌日以降の日経平均株価への影響は限定的
東証は10月1日、市場に相場情報を伝えるシステム機器に障害が発生したため、上場する株式などの金融商品を終日売買停止しました。終日に渡って全株式の売買ができなくなるのは、1999年に取引がシステム化されて以降、初めてのことです。その結果、投資信託協会が、日本株を主な投資対象のひとつとする投信について同日分の買付と解約を停止する方針を決めるなど、混乱が広がりました。
東証の売買停止に関し、麻生太郎財務相兼金融担当相は10月2日、「投資家の取引機会が制限され、はなはだ遺憾だ」と話し、東証が原因究明や再発防止作業を行い、金融庁が検証する必要があると指摘しました。
万が一、翌日の10月2日も終日売買停止という事態に陥っていたら、混乱はさらに広がり、東証の金融インフラとしての信用の失墜はもちろんのこと、多くの投資家のマインドを著しく悪化させるところでした。しかし幸いなことに、東証は10月2日午前9時、無事に株式などの売買を再開しました。
東証は、障害の際に自動でバックアップシステムに切り替わらなかったのは当時のシステムの設定に問題があったためとして、10月4日に設定を変更・適用し、今後は自動切り替えが動作するようになったことを確認したそうです。このため今後、同様の障害が起きる可能性は低そうです。
なお、10月2日の日経平均株価の始値は、9月30日終値比109.68円高の2万3294.80円と、前営業日比で上昇して始まりました。
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その後も日経平均株価は一時2万3365.58円まで上昇。取引開始前には「10月1日に保有株式を売却して資金を捻出する必要のあった投資家からの換金売りをきっかけに、売りが売りを呼ぶ展開になるのでは……」という不安は杞憂に終わりました。つまり、10月1日の「終日売買停止」の影響はひとまず限定的であったと言えるでしょう。
10月2日にトランプ大統領の新型コロナ感染が判明!
株価は一時急落したものの、週明けには反発して値を戻す
しかし、10月2日の後場、日経平均株価は一時2万2951.41円まで急落。その後、押し目買いや売り方の買い戻しが入ったことで下げ渋り、終値は9月30日終値比155.22円(0.67%)安の2万3029.90円と、かろうじて2万3000円の大台を回復して取引を終えました。
10月2日の後場になって売りが加速し、日経平均株価が急落したきっかけは、トランプ米大統領が日本時間2日の午後1時54分頃、ツイッターで新型コロナウイルスに感染したと明らかにしたことです。まさにこれは「オクトーバーサプライズ(October surprise)」でした。
「オクトーバーサプライズ」とは、米国大統領選挙が実施される年において、本選挙投票前の10月に出てくる「選挙戦に大きな影響を与えるサプライズ(出来事)」のことを指します。また、市場では「テカムセの呪い」が一部で囁かれていました。これは、西暦で20の倍数の年に選出されたアメリカ合衆国大統領への一連の災難の原因とされる呪いです。
この「トランプ大統領のコロナ感染」を受け、市場では米国政治の先行き不透明感が強まっています。
騒動の中心であるトランプ氏は、現地時間で10月2日の夕方から首都ワシントン近郊にある軍の病院に入院しました。そして10月5日、ツイッターでその日の午後6時半に退院することを明らかにし、その言葉通りに退院しましたが、ワシントン・ポスト紙は「レムデシビルとデキサメタゾンを必要とする患者が、3日間で退院できる状況は考えられない」と感染症専門家が指摘していることを報じています。投票まで1カ月を切った大統領選に向けて弱さを見せたくないトランプ氏が、選挙戦への復帰を急いで困難な治療を強要したのかもしれません。
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私が特に気にしていることは、「トランプが投与されたデキサメタゾンには精神作用があり、何でもできる気になる。執務に戻ったら戦争を始めかねない、と経験者は語る」と一部で伝わっていることです。新型コロナウイルス感染症の症状悪化はもちろんのこと、薬による副作用も重大な懸念材料と言えます。
とはいえ、実際に退院前の10月4日(日本時間5日早朝)、トランプ氏が病院外で事態を見守る支持者の前に姿をあらわして政策遂行能力への不安感がいったん後退したことで、5日の日経平均株価は大幅反発し、前週末比282.24円(1.23%)高の2万3312.14円で取引を終えました。
さらに、前述したようにトランプ米大統領が10月5日に退院することをツイッターで明らかにしたことで、10月5日のNYダウも反発し、前週末比465.83ドル(1.7%)高の2万8148.64ドルとなりました。
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追加経済対策に関する与野党の合意への期待が高まり、
米国株式相場の強力な下支え要因に!
「トランプ大統領の健康問題」が米国の株式相場の最大の攪乱要因となっている一方で、以前から相場の不安定要因となっていた追加経済対策も依然として合意には至らず、民主党のペロシ下院議長とムニューシン米財務長官は10月5日時点でも協議を続けています。
ただし、米国時間の10月2日、野党民主党のペロシ下院議長が、航空会社に対する政府の雇用支援の延長に関して合意間近と発言したと伝わるなど、追加経済対策の合意への期待が市場では高まっています。このように足元で追加経済対策の与野党協議が進展していることは、米国の株式相場の強力な下支え要因となり得るでしょう。
そして、追加経済対策の与野党協議が進展していることから、投機筋は先物の買い戻しに動いているようです。
米商品先物取引委員会(CFTC)が10月2日公表した9月29日時点の建玉報告によると、流動性の高い「Eミニ・ナスダック100株価指数先物」で投機筋(非商業部門)の建玉は7.97万枚の売り越しと、前週に比べて大幅に減少しました。ちなみに、前週の9月22日時点では13.43万枚の売り越しで、2006年8月1日の15.15万枚以来およそ14年ぶりの高水準でした。
9月29日時点で、依然として売り越しではありながらも前週より売り越し枚数が激減したことから、投機筋はそれまでの極端な「下目線(下落すると予測)」から「上目線(上昇すると予測)」に軌道修正しつつある様子が窺えます。
当面は、米国のハイテク株は不安定な値動きが継続し、
日経平均株価も狭いレンジ相場が続く見通し
ただし、「ナスダック版恐怖指数」であるCBOE NASDAQ 100 Voltility (VXN)は高止まりしています。VXNは、米国を代表する株価指数のひとつであるナスダック100指数(NASDAQ-100)のオプション取引価格から算出される指数ですが、VIX(恐怖指数)同様に、数値が高いほど投資家は相場の先行き不安を感じている(下落リスクに怯えている)とされます。
このVIXを見ると、9月4日に47.63まで急上昇した後に下がったものの、10月5日終値時点でも35.67と依然として30を超えて推移しています。VXNが少なくとも安定して30を下回って推移してこないと、米国のハイテク株は不安定な(ボラタイルな)動きが続く見通しとなります。
米国のハイテク株が不安定な動きを続けているうちは、日経平均株価もそれに連動して不安定な動きを継続するでしょう。つまり、上昇トレンドも下落トレンドも発生せず、狭いレンジ内で不安定に上下する見通しです。
具体的に言うと、当面の日経平均株価は2万3500円±500円程度のボックス相場をイメージしています。よって、投資戦略としては「2万3000円付近で買い、2万4000円付近では売り」でよさそうです。
なお、この想定の賞味期限は、一応11月の米大統領選挙までとしておきます。大統領選挙に加え、同時に実施される上下両院選の結果が出た後に、米国の株式市場は新たな局面入りする可能性が高いと考えるからです。したがって、米国の大統領選挙&上下両院選まで、日本株については「下がれば強気・上がれば弱気」で臨みましょう。
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