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原油先物市場が大混乱となっています。4月20日のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近の5月物は、前週末比55.90ドル安の1バレルが「−37.63ドル」でした。原油先物価格がマイナスとなるのは史上初めてのことです。
今後も原油先物で混乱が起きる可能性はあるが、
当面の原油相場は落ち着くと予想
一般的に、原油先物は、現物の価格変動のリスクヘッジに使われます。そして、取引最終日が近づくと先物価格は現物価格に近づいていきます。2020年5月物は取引最終日が4月21日に迫っていたため、現物価格にさや寄せする形で急落したのです。
WTI先物は最終的に現物で決済されます。先物の買い方は、「市場で先物を売って決済する」か「現物の原油を引き受ける」かのどちらかを選択して決済しないとなりません。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした経済活動縮小による需要減退や、米国の原油在庫の積み上がりを背景に、原油の貯蔵余力が乏しくなっています。このため、保管コストの負担を嫌った投資家が、決済期限を前に5月物を叩き売った(転売した)と思われます。
なお、原油相場に関しては、「3月の急落以降、原油ETFへ大規模な資金が流入したそうです。しかしながら、その買い資金の大部分が、原油ETFの乗換リスク(期近から期先の先物へのロールオーバーする際のリスク)を知らない投資家からの「バーゲンハンティング」だったと観測されています。今回の原油先物の5月物は、非常に大規模な買いの未決済建玉が決済日直前まで建っており、これをわずか1日でぶん投げたら、価格がマイナスに沈んでもまったく不思議ではありません」との声も聞こえてきました。
なお、4月20日の6月物の価格は、前週末比4.60ドル安の20.43ドルですから、限月交代後の原油先物相場はやや落ち着きを取り戻す見通しです。ただしそれは、「年後半に原油需要が回復する」とか「産油国がさらなる減産をする」といった期待があるからです。その期待が裏切られるようだと、今後の限月交代時に再び、今回と同じような混乱が起きる可能性はあります。
このような状況を受けたトランプ米大統領は4月20日、米政府として戦略石油備蓄を最大7500万バレル積み増す方針を明らかにしました。また、原油価格の下支えのため、米国はサウジアラビアからの原油輸入の停止を検討することも明らかにしました。
一方、OPECプラスは今月、日量970万バレルの協調減産に加え、米国など枠外の産油国とも協力し、あわせて日量1500万バレルの供給調整をとりつけています。
目先は、これらの効果を見極めたいとのムードが強まる見通しです。つまり、当面の原油相場は落ち着くと予想されます。
米国の一部や中国では、新型コロナの収束を見越して、
早くも経済再開に向けた動きが加速!
ところで、ここにきて、全米で経済活動の再開を目指して検討する動きが加速しつつあります。
まず、4月16日、トランプ米大統領は、新型コロナウイルスの感染者が少ない地域から経済活動の再開を3段階で進める新指針を発表しました。具体的な再開時期や内容は各州知事に委ねましたが、トランプ氏は「全米50州のうち、29州が早期に経済を再開できる」と説明しています。また、ニューヨーク州のクオモ知事は19日の記者会見で、同州で感染拡大が鈍化していると指摘し、経済再開に向けた次の段階となる1日2000人規模の抗体検査を20日から開始すると表明しました。
一方、中国の国家衛生当局によれば、新型コロナウイルスによる中国本土の新たな死者は4月20日は確認されず、これで6日続けて確認されていないということです。この発表を素直に信じていいかは微妙ですが、これが本当なら極めてポジティブな状況と言えるでしょう。
というのは、17日に発表された中国の2020年1~3月期の実質GDPは、前年同期比6.8%減と前四半期の6.0%増から減少に転じ、統計を遡れる1992年以降で初めてマイナスとなったからです。発表通りに中国が新型コロナウイルスの封じ込めに成功しているのならば、中国経済のV字回復期待が盛り上がることでしょう。
日本市場は、好材料と悪材料が綱引きしている状態で、
少なくともGW明けまでは日本経済の「仮死状態」が続く
このように、米国の一部や中国が経済再開に向け動き出している、または動き出そうとしていることはいいことなのですが、日本に関しては、まだまだ先行きが見通せません。
実際、安倍首相は4月21日午前、国内の新型コロナウイルスの累計感染者数が1万人を超えたことに触れ「医療現場は大変状況が逼迫している」と懸念を示しました。また、「命を守るためにも外出は控えていただきたい」と改めて自粛を求めています。さらに、5月の大型連休(GW)の過ごし方について「家族だけであっても地方への旅行、遠出は控えていただきたい」と求めたそうです。
また、西村経済財政・再生相も4月21日、発出から2週間となった緊急事態宣言について、「解除のめどは立ったか?」という質問に対して、「今の段階で解除について申し上げることは時期尚早だ」と述べました。
こうしした安倍・西村発言のほか、4月7日の発令時は7都府県限定だった緊急事態宣言が、大型連休前に地方での感染者急増を防ぐため、16日に残りの40道府県まで一気に対象を拡大したことを考慮すると、少なくとも緊急事態宣言の期限である5月6日までは、日本全体の経済は「仮死状態」が続くことでしょう。
また、緊急事態宣言の対象が全国に広がったことで、資金繰りに窮する企業の増加や、国内経済の一段の停滞による企業収益のさらなる悪化は不可避です。
その対応として、日銀は4月27~28日に金融政策決定会合を開き、金利が高止まりする社債やCP(コマーシャルペーパー)の購入増を検討するとの報道があります。仮に報道通りの資金繰り支援策が実現するようなら、それは日本株を強力に下支えする見通しです。実現に期待したいものです。
以上のことから、当面の日本株は好材料(米国の経済活動再開への期待、日銀による資金繰り支援策強化への期待など)と、悪材料(足元の原油先物相場の混乱、緊急事態宣言による日本経済停滞の継続など)の綱引きとなるでしょう。
その結果、日経平均株価も膠着する見通しです。当面の日経平均株価は、25日移動平均線(20日時点1万8575.71円)~4月17日の高値1万9922.07円のレンジで推移すると見ています。
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