世界投資へのパスポート

米国株「ハイアット・ホテルズ」は、ワクチンなどで新型コロナが収束すれば株価上昇の期待大! 渡航制限など痛手が大きかった分、回復時の上昇幅も大きい!

2020年10月12日公開(2022年9月20日更新)
広瀬 隆雄
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新型コロナでホテル業界が大打撃を受ける中、
世界的なホテル・チェーンであるハイアット・ホテルズに注目!

 新型コロナウイルス感染症により、世界のホテル業界は大打撃を受けました。各国政府は、感染拡大を防ぐために外出禁止令や渡航制限などを打ち出しました。旅行が許される場合でも厳格な検疫・隔離やソーシャル・ディスタンシングが義務付けられ、その結果として世界の旅客は激減しました。

 そんな状況の中、今回はあえて世界的なホテル・チェーンであるハイアット・ホテルズ(ティッカーシンボル:H)に注目しました。

ハイアット・ホテルズは、「ジェット時代」の到来で生まれた
空港近くのホテル需要をいち早く察知して成長を遂げる!

 ハイアット・ホテルズ(ティッカーシンボル:H)は、1950年代にロスアンゼルス国際空港のすぐ近くに建設されたモーテルから出発したホテル・チェーンです。

 当時のハイアット・ホテルズは、「ジェット時代」が到来したことで、空港近くにビジネスマン向けホテルのニーズが生まれたことにいち早く気が付きました。そこで、ロスアンゼルス国際空港近くを皮切りに、サンフランシスコやその他の国際空港に隣接するロケーションにも次々にホテルを建設して行ったのです。

 その後、世界の主要都市で、世界を飛び回る多忙なエグゼクティブが安心して泊まれるホテルを展開して行きました。そうした経緯から、ハイアット・ホテルズは「ハイエンドのビジネス客」を主に顧客層としています。

 実際、2019年における客室単価を比較すると、ハイアット・ホテルズが181.74ドル、マリオット(ティッカーシンボル:MAR)が160.55ドル、ヒルトン(ティッカーシンボル:HLT)が144.79ドルとなっており、ハイアット・ホテルズは大手ホテル・チェーンでは最も高い部類に入ります。

 現在、自社所有ホテルが全部で38カ所(1.58万室)あるほか、「ハイアット」のブランドの使用許可や運営ノウハウの提供でフィーを取る、いわゆる“マネージド・アンド・フランチャイズド・ホテル”が939カ所(22.8万室)あります。この自社所有ホテルを大きく増やさない戦略は、「持たない経営」と言い直すことができます

 ハイアット・ホテルズのホテルは、「ラグジャリー」「アッパースケール」「アップスケール」の3タイプに分類されます。最高級ブランドである「ラグジャリー」は、パーク・ハイアット(44カ所)とグランド・ハイアット(56カ所)、アンダース(22カ所)で売上高は全体の24%です。一方、「アッパースケール」は、ハイアット・リージェンシー(208カ所)やハイアット(12カ所)、ハイアット・セントリック(37カ所)などで売上高は45%。そして「アップスケール」は、ハイアット・プレース(372カ所)とハイアット・ハウス(104カ所)で売上高の30%を占めています。

新型コロナの感染拡大で不人気化した旅行関係株の中でも、
ハイアット・ホテルズは最も敬遠される銘柄に

 新型コロナウイルスで世界の旅行がパッタリ止まったとき、ハイアット・ホテルズはひときわ大きな痛手を受けました。なぜなら、ハイアット・ホテルズの宿泊客は、バスや車で移動するロードトリップの人よりも飛行機を使う人が多いからです。

 リモートワークが定着するにつれて「ズームがあればもう出張は必要ないのでは?」という意見が多く聞かれるようになり、今では「新型コロナウイルスの感染拡大が収まった後も、出張需要は回復が一番遅れるだろう」というのがコンセンサス意見になっています。

 つまり、今、人気の圏外に放置されている旅行関連株の中でも、ハイアット・ホテルズは最も敬遠される株になっているのです

ハイアット・ホテルズの第2四半期における
「販売可能客室当り売上高」は、コロナ前の約1/10に低下!

 8月3日に発表されたハイアット・ホテルズの第2四半期決算を見ると、RevPAR(販売可能客室当り売上高)は15.01ドルと、前年同期比で-89.4%も低下しました

 地域別のRevPARは、以下の通りです。

■地域別のRevPAR(販売可能客室当り売上高)
地域 RevPAR 前年同期比
米州フルサービス 7.29ドル -95.7%
米州セレクトサービス 21.22ドル -81.2%
アジア太平洋フルサービス 29.04ドル -79.1%
アジア太平洋セレクトサービス 21.84ドル -58.0%
欧州中東南西アジアフルサービス 7.81ドル -93.9%
欧州中東南西アジアセレクトサービス 12.99ドル -80.2%

 また、ブランド別のRevPARは以下の通りです。

■ブランド別のRevPAR(販売可能客室当り売上高)
ブランド RevPAR 前年同期比
パーク・ハイアット 29.81ドル -87.0%
グランド・ハイアット 15.38ドル -90.6%
アンダース 18.72ドル -92.2%
ハイアット・リージェンシー 10.69ドル -92.3%
ハイアット・セントリック   6.27ドル -96.6%
ハイアット・プレース 18.99ドル -81.2%
ハイアット・ハウス 27.25ドル -78.7%

 なお、RevPARは4月に大底をつけ、それ以降は改善基調にあります。

 RevPARは「客室単価×客室稼働率」という計算式で求めることができますが、そのうちの客室単価の推移は下のグラフの通りです。

 一方、客室稼働率の推移は下のグラフの通りです。

 この2つのグラフを比較すると、客室単価も下がっていますが、客室稼働率の下落率のほうが大きいことがわかります。つまり、RevPARの急減は、「宿泊料(客室単価)の低下」よりも「客室稼働率の低下」が主な原因であると言えます。

 GAAP(※会計基準の一種)の1株当たり利益(EPS)が-2.33ドルの赤字でした。赤字額は2.36億ドルで、修正EPSは-1.80ドルでした。

 売上高は2.5億ドル(前年同期は12.9億ドル)、売上高に占める自社所有物件の売上高は0.19億ドル(前年同期は4.9億ドル)でした。また、マネージメントならびにフランチャイズフィーは0.2億ドル(前年同期は1.58億ドル)でした。

 マネージド・アンド・フランチャイズド・ホテルにおける運営コストの実費払戻額は、2.15億ドル(前年同期は6.19億ドル)でした。さらに、第2四半期を〆た時点におけるバランスシート上のキャッシュは14.4億ドルでした。

7月末時点で87%のハイアット・ホテルが営業を再開!
「販売可能客室当り売上高」も少しずつ改善へ

 新型コロナウイルスの感染拡大のピークが過ぎて徐々に経済再開が進んでいることにより、7月末の時点で、世界の87%のハイアット・ホテルズが営業を再開しています。4月末の時点の65%に比べると、かなり復活していると言えるでしょう。7月のRevPARも前年同月比-76%と、第2四半期の-89.4%より減少幅が減少しました。つまり、新型コロナウイルスの影響からゆっくりと戻りつつあるのです

 ハイアット・ホテルズは手元資金の自由度を増すため、8月に7.5億ドルの2022年償還フローティング・レート優先債(3カ月物LIBOR+3%)を発行しました。これにより現在の総負債は32.5億ドルとなっています。一方、株式資本は34.9億ドルです。これらの数字を見る限り、ハイアット・ホテルズの借金返済スケジュールは無理がない内容だと思います

【今週のまとめ】
ハイアット・ホテルズは新型コロナで最も大きな痛手を受けた銘柄の
ひとつだが、その分、新型コロナが収まったときの上昇幅は大きい!

 ハイアット・ホテルズは、世界のエグゼクティブが好んで使うハイエンドのホテルです。新型コロナウイルスの感染拡大により、出張がなくなってズームに置き換わったことで、とりわけ大きな痛手を受けた銘柄のひとつだと言えるでしょう。

 もちろん、新型コロナウイルス感染症が収まった後でもこのままズームが定着し、人々は以前ほど出張をしなくなるかもしれません。しかし、ビジネス・トリップが完全にゼロになることは予想しにくいです。

 もし今後、新型コロナウイルス向けワクチンの承認などで世界がノーマルな状態に戻れば、ハイアット・ホテルズの株価は大いに見直されると思いますので、今のうちからチェックしておくといいでしょう。
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ハイアット・ホテルズ(H)チャート/日足・6カ月ハイアット・ホテルズ(H)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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