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FOMCにおけるFRBの強烈な「タカ派スタンス」に加え、
英国・トラス政権の減税策などにより、世界同時株安が発生!
世界同時株安が発生しつつあります。きっかけは、9月20~21日のFOMCでFRBのタカ派スタンスが強烈に打ち出されたことに加え、23日に英国のトラス政権が大規模な減税策と国債の増発計画を打ち出したことでした。
米国では大方の予想通り、FRBが9月21日のFOMCで0.75%の利上げを決め、インフレ抑制に向けて当面は大幅な利上げを続ける方針を示しました。FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドット・チャート)を見ると、2022年末時点で適切と考える政策金利の水準は、中央値で4.375%と前回6月の3.375%から1%の上方修正。2023年末時点に関しても、4.625%と前回の3.75%から上方修正されました。
FOMC後の記者会見で、パウエル議長は「ソフトランディングは非常に困難」「引き締め政策がより厳しく、より長く続くほどソフトランディングの可能性は低下します。それでもインフレ率を2%に戻すことに全力を尽くします。なぜなら物価の安定を取り戻せなければ、後々はるかに大きな痛みを伴うからです」などと述べ、景気を犠牲にしてでもインフレ退治に全力を尽くす意思を示しました。
英国で「債券安・ポンド安・株安のトリプル安」が発生し、
英ポンドは一時「1ポンド=1.03ドル」台と過去最安値に
一方、英国ではクワーテング財務相が9月23日、トラス新政権の当面の経済対策を発表し、公表済みのエネルギー価格の急騰対策に10月からの半年間で約600億ポンド投じると表明しました。また、2023年4月の法人税引き上げを止めて税率を19%に据え置き、2022年4月に1.25%引き上げた国民保険料も元の水準に戻します。さらに2023年4月から所得税の基本税率を1%引き下げ、住宅購入の際にかかる印紙税も引き下げます。英国政府は当面の資金調達を国債に頼る方針で、2022会計年度の国債発行計画を624億ポンド引き上げました。
これを受け、市場では英国の財政悪化懸念が急激に高まり、9月23日のロンドン金融市場で英国債の利回りが急騰。英国2年債利回りは4%を上回り、2008年10月以来、約14年ぶりの高水準になりました。また、英国通貨のポンドは対ドルで37年ぶりの安値をつけ、さらに英国株も下げたことで「債券安・ポンド安・株安」のトリプル安となりました。
減税により需要が喚起され、それがインフレ圧力となって金利を押し上げるとの見方が強まったことで、債券が売られました。そして、その金利上昇が英国景気を下押しする可能性が高いとの見方から株式が売られ、さらに、今回の対策が成長率を引き上げることが難しいとの見方から財政悪化懸念が強まってポンドが売られているのです。
ポンドは9月26日のアジア市場で、一時1ポンド=1.03米ドル台まで下げる場面があり、「プラザ合意があった1985年」の2月につけた過去最安値を下回りました。すでに1ポンド=1ドルの「パリティ(等価)」が射程圏内です。
このような状況下、英国のイングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は9月26日、ポンドが急落したことを受けて臨時の声明を出し、「インフレ率を中期で2%の目標へ持続的に戻すため、必要に応じて金利を変更することをためらわない」と強調しました。また、英財務省は9月26日、経済対策の「実施に関する追加情報」と題する声明を発表。「中期的な債務残高の国内総生産(GDP)比の低下を確実にする財政ルールの詳細を定める」としています。どちらも、大混乱している市場の安定を図る狙いで出された声明です。
ですが、そう簡単には市場は安定しないでしょう。
世界同時株安の影響で日経平均株価も大きく下落し、
短期・中期・長期の移動平均線をすべて下回る状況に
英国発の金融市場・外国為替市場の混乱は、米国にも波及しています。9月26日の米国10年債利回りは、前週末比0.24%高い3.92%で取引を終え、一時は3.93%と2010年4月以来、12年ぶりの高水準をつける場面もありました。
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この長期金利の上昇を嫌気し、9月26日のNYダウは5日続落し、前週末比329.60ドル安の2万9260.81ドルと、前週末に付けた年初来安値を下回りました。また、ナスダック総合株価指数も5日続落し、同65.00ポイント安の1万802.92ポイント。そして、S&P500種株価指数も5日続落し、同38.19ポイント安の3655.04ポイントと、6月16日以来、3カ月ぶりに年初来安値を更新しました。
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一連の外部環境悪化要因を背景に、3連休明け9月26日の日経平均株価は大幅に3日続落し、前週末比722.28円安の2万6431.55円に。そして翌27日は多少反発したものの、前日末比140.32円高の2万6571.87円で取引を終えました。
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テクニカル的には、5日移動平均線(27日時点で2万7031.76円)、25日移動平均線(同2万7867.75円)、75日移動平均線(同2万7462.33円)、100日移動平均線(同2万7328.24円)、200日移動平均線(同2万7376.46円)をすべて下回っています。
日経平均株価は75・100・200日移動平均線(中長期のサポートライン)をすべて割り込んだことで、今後、調整が深刻化すると見ています。短期的に売られ過ぎとなれば多少のリバウンドは発生するでしょうが、欧米の金融市場が正常化しない限り、しょせんその戻りは「ベアマーケットラリー(下落局面での一時的な上昇)」でしかないと考えています。
数カ月以内に訪れる「セリング・クライマックス」に備え、
今は無理せず守りに入って、資金を温存する戦略を!
欧米の金融市場が正常化するためには、欧米のインフレが鎮静化し、かつ中央銀行の金融引き締めに打ち止め感が出ることが必要です。
しかしながら、ロシアの国営ガス会社のガスプロムは、欧州に天然ガスを送るパイプライン「ノルドストリーム1」について、メンテンナンスと称して8月31日に稼働を3日間停止すると発表しました。その後、新たな問題が発生したとして無期限で停止するとしています。暖房需要が増加する冬が接近しています。このため、欧州のエネルギー価格の高騰がインフレ圧力として機能しそうです。
欧米の金利が上がり続け、ファンドからの「タックスロス・セリング(節税売り)」が加速し、米国株が下落を続けるようならば、日本株も無傷では済まないとの見方は不変です。
日経平均株価について現時点での下値メドは、3月9日の安値2万4681.74円と見ています。一方の上値メドは、9月20日の2万7907.45円まで戻れれば上出来と考えています。ただし、すでに割り込んでしまった75・100・200日移動平均線に挟まれた価格帯は、相当強力なレジスタンスゾーンに転換してしまったとも認識しています。
これまで「目の上のこぶ」は「米国株式市場の動向」だけでしたが、ここに「英国発の欧米金融市場+外国為替市場の混乱」が新たに加わりました。円安・インバウンド効果で、日本株が相対的に米国株に対して強く動くと見てはいますが、世界的な金融市場の混乱は深刻です。
したがって、引き続き資金管理を厳格に行い、「生き残る」ことを最優先にして相場に臨みましょう。非常に高い確率で今後数カ月以内に「セリング・クライマックス」が発生すると見ています。そこで思いっ切り買い向かえるように、資金を温存する戦略をおすすめします。
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