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米国債の偶発的なデフォルト(債務不履行)の「Xデー」に対する関心が高まっています。なぜならば、5月11日~13日に新潟で開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議に出席予定のイエレン財務長官が、連邦政府の借入限度額である「債務上限」の引き上げ問題への対処のために訪日日程を若干短縮したことで、米国政府が対応に苦慮している状況が浮き彫りとなったからです。
5月3日、パウエルFRB議長が「議会による連邦債務上限引き上げがなければ前代未聞であり、経済に極めて不確実性かつマイナスの影響を及ぼすことになる」と述べているように、この問題に関しては米国の財政当局のみならず、米国の金融当局も重大な関心を持って注視しています。
また、債務上限引き上げを巡る米国のドタバタ劇を受け、欧州の主要格付け会社スコープ・レーティングスは5月5日、「AA」としている米国の現地通貨・外貨建て長期発行体および無担保優先債務格付けを格下げ方向で見直すと発表しました。保守とリベラルとの政治的な分断の深まりや、下院の多数党と大統領の所属政党が異なる「ねじれ議会」の状況、今後数年の財政赤字の拡大見通しなどを格付け見直しの理由に挙げました。
米国の債務上限の引き上げ問題は一種の恒例行事だが、
万が一にも解決できなければ「世界同時株安」が発生!
債務上限とは「米国の連邦政府が借金できる債務残高の枠」のことで、過去何度も政争の具になっている「恒例行事」です。ただし、米国の財務省が支払い義務を履行できなくなるまで、議会が債務上限の引き上げや一時適用停止を可決しなかったことは、過去一度もありません。
現在の債務上限額は31.4兆ドルですが、すでに2023年1月に上限に達しています。政府は公的年金基金への投資を停止するなどして何とかやり繰りしていますが、このまま議会が債務上限を引き上げなければ、政府は新規の国債を発行できなくなり、財政資金はいずれ枯渇します。
このため、イエレン氏は5月1日、「議会が上限を引き上げなければ米国債は6月1日にもデフォルトに陥る恐れがあり、万が一にもデフォルトとなれば壊滅的被害をもたらす」と強く警告しました。さらに、イエレン氏は5月7日に「米議会が債務上限問題で適切な対応を怠れば“憲法上の危機”を招き、連邦政府の信認に疑義が生じかねない」と改めて警告を出しました。
なお、万が一、米国債がデフォルトしたら、住宅ローンやクレジットカードローン、自動車ローンなどすべての金利が上昇し、ドル安、米国株安となり、結果として米国の実体経済が急激に悪化して、その悪影響が全世界に波及する見通しです。
仮に6月1日の「Xデー」当日にデフォルトが回避されても、
2011年の「米国債ショック」と似た事象が発生するリスクも!
なお、4月26日、共和党が多数派を握る米議会の下院は、歳出削減とセットで債務上限を1.5兆ドル引き上げる法案を賛成多数で可決しました。しかしながら、その法案にはバイデン政権の掲げる“学生ローンの返済免除”の撤回などが含まれているため、無条件での引き上げを求めるバイデン氏は拒否する見通しです。
そのバイデン氏は、マッカーシー下院議長ら与野党の議会指導者に電話し、5月9日にホワイトハウスで債務上限問題を巡って協議する意向を伝えました。ただし、バイデン氏は5月5日、トランプ前大統領に賛同する「MAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大に)」派の共和党議員らが債務上限の引き上げに賛成しないことを批判し、9日の会合で妥協しない可能性を示唆しています。このため、9日の会合で問題が解決することはなさそうです。
また、バイデン氏は5月5日、米国債のデフォルトを回避するために合衆国憲法修正第14条(合衆国の公的債務の効力が問われてはならないとの規定)を発動する用意はまだないと述べ、条項発動の選択肢を排除していないことをはじめて示唆しました。ですが、この条項が発動された場合、債務上限を引き上げることが可能となる一方で、法的な論争が長期化するのはほぼ確実で、金融市場が動揺するリスクが指摘されています。
現時点での市場の大方の見方は「イエレン氏の指摘しているXデー(6月1日)より前に共和、民主両党が妥結に至る公算は小さい。しかし、短期的な措置による対応で政府が時間稼ぎをするため、Xデー自体が先延しとなり、いよいよヤバいという状況に追い詰められたら両党は土壇場で折り合いをつける可能性が高い。結局、米国債がデフォルトすることはないだろう」というものです。
ただし、協議が難航・長期化して「Xデー」の接近が強く意識されるようになると、仮に「Xデー」当日にデフォルトが回避された(債務上限引き上げ法が成立した)としても、2011年に発生した「米国債ショック」と似たような事象が発生することが危惧されます。
2011年の「米国債ショック」とは、「Xデー」とされていた期限当日の8月2日に債務上限引き上げ法が成立したものの、その3日後の8月5日に、これまで米国債について「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定するだけにとどめていたスタンダード&プアーズ(S&P)が、米国の長期発行体格付けを「AAA」から「AA+」に格下げしたことをきっかけに発生した世界的な金融市場の混乱(世界同時株安)です。
FOMCが5月3日公表した声明では、前回の声明に盛り込まれた「いくらかの追加引き締めが適切となる可能性を見込む」との文言が削除され、利上げが今回で打ち止めになる可能性が示唆されました。このため投資家の関心は、これまでの「FRBの金融政策」から「議会の債務上限問題(政治的チキンゲーム)」に移ることになると見ています。
現時点においては、米国の短期国債利回りや米国CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)には債務上限問題を警戒する動きが顕著に見られるものの、それ以外の市場では「Xデー」を懸念する兆候はほとんどありません。しかしながら、保守強硬派の反発や次期大統領選を睨んだ駆け引きなど、政治色の濃い今回の交渉は、これまでの何回かのチキンゲームに比べて危険なものになりつつあるとの指摘もあるので、今後の協議の進展には注意が必要です。
日本株は、米国の債務上限問題で金融市場が大荒れにならない限り、
このまま上昇トレンドが継続すると判断して「強気」を維持!
日本株についてですが、米国の債務上限問題をきっかけにして世界の金融市場が大荒れとならない限り、強気を維持します。
なぜならば、5月8日午前0時に新型コロナウイルスの分類が感染症法上の5類に移行したことで、医療体制や社会生活が基本的に平時に戻ることに加え、水際対策が終了してインバウンド(訪日外国人)消費の拡大が期待できるため、経済の活性化が見込めるからです。
また、ウォーレン・バフェット氏率いる米国の投資会社バークシャー・ハザウェイが5月6日に開いた年次株主総会で、バフェット氏が「台湾より日本のほうが良い投資先だ」「日本での投資は完了していない。これからも投資先を探していく」「一緒に事業をするのを期待している」などと語ったことも、強気維持の一因です。
日経平均株価については、テクニカル的に見ると、5月9日の終値が2万9242.82円と、5日移動平均線(9日現在2万9066.05円)、25日移動平均線(同2万8401.27円)、75日移動平均線(同2万7796.93円)、100日移動平均線(同2万7511.85円)、200日移動平均線(同2万7584.80円)のすべてを上回っています。また、4月17日から5月9日まで、25日移動平均線が14日連続で上昇し、中期の上昇トレンドが継続中です。
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今後に関しては「日経平均株価が5日移動平均線を下回り、かつ5日移動平均線自体が下向き」の状況になれば「短期的な調整局面入り」と判断しますが、上昇を続ける25日移動平均線が下向きに転じない限り、中期的な強気相場は続くと考えています。
「物色の二極化」を前提に、ポートフォリオを「強い銘柄」で埋め、
日経平均株価を大幅に上回るパフォーマンスを実現しよう!
ただし、今週は決算発表を予定している企業数が急増します。前回も指摘しましたが、保有銘柄に関しては「決算跨ぎ(決算ギャンブル)」を避け、決算内容を十分に吟味したうえで「買い戻し」または「買い戻し見送り」の判断をする「決算リスク回避的な運用」を行いましょう。
今後の物色動向に関しては、今回発表される決算の内容次第で「強い銘柄」と「弱い銘柄」との二極化が鮮明になると見ています。この「物色の二極化」を前提に、あなた自身のポートフォリオをいかにして「強い銘柄だらけ」にしていくかに腐心するべき局面だと思います。
もし、それが実現できれば、あなたのポートフォリオは、日経平均株価などの株価指数を大幅に上回るパフォーマンスを実現する可能性が非常に高いと考えています。ぜひとも、それを達成することに全力を尽くしてください。
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