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米国市場は、急ピッチな上昇に対する警戒感が強まっているものの、
「景気失速⇒株式市場が下落」となる可能性は極めて低い
日米の株式市場ともに、さすがに上値が重くなり、上昇にブレーキがかかってきています。
まず米国市場ですが、先週末3月22日のNYダウは、景気敏感株や消費関連株を中心に利食い売りが出て、前日比305.47ドル(0.76%)安の3万9475.90ドルと5営業日ぶりに反落。週明け25日も続落し、前週末比162.26ドル(0.41%)安の3万9313.64ドルでした。
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一方、ナスダック総合株価指数は、3月22日に5日続伸し、前日比26.98ポイント(0.16%)高の1万6428.82ポイントと連日で過去最高値を更新しましたが、25日は6営業日ぶりに反落し、同44.35ポイント(0.27%)安の1万6384.47ポイントでした。
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米国株の上昇が一服したのは、これまでの急ピッチな上昇を受けて高値警戒感が強まった結果、利益確定の売りが優勢になったことが主因と見ています。
ちなみに、FRBのクック理事は3月25日の講演で「注意深く政策調整を進めれば、労働市場の強さを維持することに努めながら、インフレ率をFRBの政策目標の2%に戻すことができる」との認識を示しています。つまり、先行きの米国経済はハードランディングする可能性は低く、ソフトランディングもしくはノーランディング(一連の金融引き締めにもかかわらず経済成長が続くこと)する可能性が高いのです。このため「米国の景気が失速⇒米国の株式市場が下落」という展開になる可能性は極めて低いと見ています。
FRBは、1月や2月の物価指標がやや高めだったにもかかわらず、3月20日に開いたFOMCで政策金利を5会合連続で据え置き、経済見通しについても、年内3回としていた利下げ予想を据え置いています。
さらに、コロナ対応で大量に購入した米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の保有額を圧縮する措置である「量的引き締め(QT)」について、パウエル議長は3月20日の記者会見で「かなり早いうちに、資産圧縮のペースを緩めることが適切になる」と述べ、近く減速する方針を示しています。
政策金利が5.25~5.50%と23年ぶりの高水準にある一方で、FRBが金融引き締めを緩めていく方針を示したことは、米国景気の先行きにとって極めてポジティブな材料と言えるでしょう。
日経平均株価は、先週末に一時4万1000円に乗せたものの、
今週に入ると円安が一服したことなどから利食い売りが優勢に
一方、日本市場ですが、日経平均株価は先週末の3月22日まで4日続伸し、前日比72.77円(0.18%)高の4万888.43円と連日で史上最高値を更新。22日に日経平均株価が上昇したのは、ドル/円相場が一時1ドル=151円86銭と、2023年11月以来の円安・ドル高水準をつけたことを好感して輸出関連株が買われたためで、一時は上げ幅が272.09円まで広がり、4万1087.75円と4万1000円台に乗せる場面もありました。
しかしながら、週明け3月25日の日経平均株価は5日ぶりに大幅に反落し、終値が前週末比474.31円(1.16%)安の4万414.12円となりました。この日は、円安が一服したことを受け、利食い売りが優勢でした。さらに26日は前日比16.09円(0.04%)安の4万398.03円と続落しました。
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円安が一服した主な要因は、財務省の神田真人財務官による口先介入を受け、政府・日銀による為替介入への警戒感が強まったことです。なお、神田真人財務官は3月25日、円安進行について「行き過ぎた変動にはあらゆる手段を排除せずに適切な行動を取る。すでに準備ができている。それは今に限らないことである」と語りました。
円安一服に加え、過熱への警戒感の強まりも3月25日の下落の要因でした。日経平均株価は18~22日までの4日続伸で、終値ベースで2180.79円(5.63%)も上昇したので、さすがに“スピード違反”の上昇ピッチと言えるでしょう。さらに、22日にザラ場で4万1000円台に乗せたことで、目先の達成感も出たと見られます。
日銀は長年続いたマイナス金利の解除を決定したものの、
「緩和的な金融政策の継続」を強調したことが景気の下支えに
ただし、日本株に関しても、米国株同様に「日本の景気が失速⇒東京株式市場が下落」という展開にはならないと見ています。
というのは、日銀は3月19日の金融政策決定会合で、2013年以降に導入した異例の金融緩和策からの脱却を決めたものの、これまでと同程度の国債購入を続けることも決め、植田和男総裁が「緩和的な金融環境は継続する」と強調しているからです。このため、日銀の緩和的な政策が、わが国の景気を強力に下支えする見通しです。
また、この政策は、金利面での円安要因となり、わが国の外需系企業の収益の「押し上げ&下支え要因」としても機能し続ける見通しです。なぜならば、欧米との広がった金利差が長期化する確度が高まったため、低金利通貨の円を売って高金利通貨のドルやユーロを買う「インセンティブ」が働き続けると考えられるからです。
実質賃金が前年比でプラスに転じることで、
個人消費が日本の景気を押し上げる展開に期待
ところで、総務省が3月22日に発表した2月の消費者物価指数では、値動きの大きい生鮮食品を除く総合指数が106.5と、前年同月比で2.8%上昇しました。政府の電気・都市ガス代の抑制策が開始から1年経ったことで物価の押し下げ効果が薄れたことや、食品や宿泊料の値上がりしたことで、伸び率は1月の2.0%から4カ月ぶりに拡大しました。つまり、脱デフレに向けて、物価は順調に上昇しています。
一方、賃金については、2024年の春闘の第2回集計結果(21日時点)で、基本給を底上げするベースアップと定期昇給を合わせた平均賃上げ率が5.25%になったと、連合が3月22日に公表しました。
昨年2023年の賃上げは30年ぶりの高水準となったものの、物価の上昇に追いつかなかったことで生活実感の改善につながりませんでした。しかしながら、今回の春闘の結果を受け、早晩、実質賃金は前年比でプラスに転じる可能性が高まっています。そうなれば、個人消費が日本の景気を押し上げる展開が期待されます。
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以上、見てきたように、米国株にしても日本株にしても、目先、大きく崩れる要素は見当たりません。しかしながら、両市場ともに、ここまで短期間で急上昇して史上最高値圏にいます。このため、短期的に過熱状態であることは否めません。このため、飛びつき買いは可能な限り避けてください。
ただし「現状の相場水準は過熱状態で、高過ぎる。だからショート(空売り)する」という戦略は、よほど腕に自信のある方以外は避けたほうがいいと思います。有名な相場格言に「買いは家まで、売りは命まで(買いの損失は限定なのに対し、売りの損失は無限なので命まで危険になる)」というものがあるくらいです。くれぐれも安易なショートは行わず、押し目買いに徹することを強くおすすめします。
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