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ドル円相場が1ドル=160円台から一転して154円台に!
財務省の明言はないものの「覆面介入」が行われた可能性は高い
昭和の日で祝日だった4月29日、外国為替市場において、財務省は為替介入をすぐには公表しない「覆面介入」を行った可能性が高そうです。
「可能性が高そう」としたのは、4月29日の為替介入の有無について、5月31日午後7時00分に財務省から正式に公表されるまでわからないからです。ただし、当日の円の急騰を見る限り、為替介入が実施されたことはほぼ間違いないと思っています。
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なお、売買の手口を見せずに市場参加者の疑心暗鬼を呼ぶため、今回の為替介入が「覆面」で実施されたと見ています。
4月29日のドル円相場は、午前10時35分に1ドル=160円22銭まで下落。しかし、午後に入って円が急騰し、午後4時35分には154円52銭をつけました。日銀による円買い介入の観測が流れたことに対し、神田真人財務官は「投機による激しい異常とも言える変動が国民経済にもたらす悪影響には看過しがたいものがある」「(為替介入の有無については)ノーコメント」、そして「5月末に介入実績を通例通り発表する」と述べました。
なお、4月26日の金融政策決定会合の終了後の会見で、日銀の植田和男総裁は、足元の円安が2024年度の物価見通しを上方修正した要因に含まれると説明したものの「(円安の物価への影響について)今のところ大きな影響を与えているということではない」と発言していました。
為替介入(外国為替平衡操作)は、財務大臣の権限において実施されます。日本銀行は、特別会計に関する法律および日本銀行法に基づき、財務大臣の代理人として、その指示のもと為替介入の実務を遂行します。また、財務大臣の代理人として、日本銀行が海外の通貨当局に為替介入を委託することもあります。つまり、日銀は単なる実務執行機関でしかないため、植田総裁はドル円相場の水準に関して市場に予断を与える発言を控えたのでしょう。
財務大臣の度重なる「円安牽制発言」も効果がなかったことで、
4月29日に政府は満を持して為替介入を実行か
4月2日、鈴木財務大臣は、閣議後記者会見で「先週金曜日にFRBのパウエル議長が、利下げについて急ぐ必要はないとの考えを示されました。日銀も緩和的な環境を継続するとしており、円安基調が続くことが見込まれますが、大臣のご所見を伺えますでしょうか」との質問に対し、「為替相場でありますけれども、ご指摘の金融政策に係る要因だけで決まるわけではないのでありまして、国際収支、物価動向、地政学的リスク、また市場参加者のセンチメントや投機的な動きなど、大変さまざまな要因によって決定されるものでありますので、パウエルさんのこの発言など、そうしたことだけを取り出して一概に申し上げることは難しいんだと思います」「政府としては、為替市場の動向、高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては、あらゆる手段を排除せずに適切な対応をとってまいりたいと考えております」などと答えていました。また、鈴木財務大臣は16日の閣議後会見でも「(為替動向について)必要に応じて万全の態勢、対応をしっかりやっていきたい」と発言しました。
鈴木財務大臣の相次ぐ円安牽制発言にもかかわらず、その後の外国為替市場では、円安が加速。この急激な円安に対して、経済界から是正を求める声が相次いでいました。原材料の輸入が多い企業にとって、円安進行は業績にマイナスの影響が大きいからです。だからこそ、4月29日、政府は満を持して為替介入を実行したのでしょう。
中長期の円安トレンドに対して日本は無力なので、
米国の「景気減速」か「通貨政策の転換」を待つしかない
しかしながら、結局のところ、為替レートは両国間の力関係で決まる(経済力、国際政治力、軍事力等の総合力が強いほうの都合で決まる)ものだと、私は思っています。つまり、日米両国間において、為替レートは常に米国にとって都合のよい水準になるし、都合の良い方向にトレンドが出るものと諦めています。
ニクソン大統領の金・ドル交換停止発表でブレトンウッズ体制が崩壊し、その後のスミソニアン体制も崩壊したことで、1973年2月に日本は変動為替相場制に移行しました。ご存じの通り、第2次世界大戦以降、日本は米国を中心とした西側陣営に組み込まれました。現在も米軍に基地を提供し続けており、米国との経済的な結びつきが非常に強い状態が続いています。1944年のブレトンウッズ協定後も、1971年のスミソニアン協定後も、そして1985年のプラザ合意後も、ドル円相場は「国際的な政治決着(米国の都合による決着)」が決め手になっています。
現在、米国は根強いインフレに苦しんでいます。ドル高は輸入物価を抑制する要因のひとつのため、バイデン政権下では国益に適います。今後、バイデン政権下の米国がドル安を容認するケースは、米国のインフレリスクが低下(米国の長期金利が低下)する場合のみでしょう。だから、日本にとって都合の悪い(米国には都合の良い)現在の円安・ドル高トレンドに関して、日本政府だけの単独介入では、短期的にはともかく、中長期的に変えることは難しいと見ています。
つまり、中長期の円安トレンドが終了するためには、米国の景気減速(インフレ鈍化)まで待つ、または米国の通貨政策が180度転換(ドル安容認)することが必要でしょう。言い換えれば、「現在の日本政府」は中長期の円安トレンドを転換させることに関しては「(ほぼ)無力」だと考えています。
「現在の日本政府」としたのは、もし日本政府が消費税引き下げなどを断行し、現在のコストプッシュ型インフレ(原材料などのコスト上昇によるインフレ)でなく、米国のようなディマンドプル型インフレ(需要の拡大によるインフレ)を発生させるべく劇的な政策変更を断行すれば、需要の拡大を伴った物価の上昇によって金融を引き締めることが可能となり、金利面のみならず経済のファンダメンタルズの観点からも中長期の円安トレンドを転換させられると見ているからです。ですが、現時点において日本政府が政策転換する可能性は、残念ながらほぼゼロでしょう。
その一方で、短期的なドル円相場については、今回の「政府の覆面介入」に敬意を表して、1ドル=160円を超える円安にはなりづらくなったとは考えられます。
また、トランプ前米大統領は4月23日、SNS上で「ドルが円に対しておよそ34年ぶりの高値をつけた。これはアメリカにとって大惨事だ」「(ドル高については)愚かな人々にとっては聞こえがいいが、アメリカ国内の製造業はドル高によって競争できなくなっており、ビジネスの多くを失ったり、外国に工場を建設したりすることになるだろう」という考えを示しました。このため、トランプ氏が今年の大統領選挙に勝てば、米国の長期金利が下がらなくても、米国の通貨政策が180度転換してドル安を容認する可能性があると見ています。
日経平均株価は依然として下落トレンドが続いているものの
「短期的なリバウンド発生」のサインは点灯中!
4月30日の日経平均株価の終値は3万8405.66円と、5日移動平均線(30日時点で3万7996.23円)を上回り、かつ5日移動平均線自体が上向きに転じているので、短期的なリバウンド発生のサインが点灯したと言えるでしょう。
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ただし、25日移動平均線(同3万9018.36円)は下回っており、25日移動平均線自体も17日連続で下降中です。テクニカル的には「日経平均株価が25日移動平均線を上回り、かつ25日移動平均線自体が上昇転換するまで」は、日本株の調整が続くと見ています。ですが「日経平均株価が5日移動平均線を上回り、 かつ5日移動平均線が上向き」を維持する限り、25日移動平均線を目標とする「自律反発」は継続するとも考えています。
一方、信用取引を積極的に活用している個人投資家の損益状況に関しては、引き続き懸念しています。4月19日申し込み時点の信用買い残(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は4週連続で増え、4兆8645億円と2006年6月以来およそ18年ぶりの高水準を記録しています。信用倍率は、ITバブル期だった2000年2月の7.26倍を抜き、7.29倍と、データを遡れる1994年12月以降で最高でした。そして、信用評価損益率はマイナス7.64%と1月19日のマイナス8.24%以来、3カ月ぶりの水準に悪化しました。つまり、将来の売り予約である信用買い残が積み上がり、信用需給が悪化(信用倍率が上昇)して、信用買いを入れていた投資家の含み損が拡大しているのです。
このため、個人投資家の関与率が高い銘柄のうち、株価が上昇する過程で信用買い残を積み上げ、その後、チャートが悪化(例えば、株価が25日移動平均線を下回り、かつ25日移動平均線自体も下向き)したものは、引き続きアンタッチャブル(売買を避けるべき銘柄)です。逆に、信用買い残が少なく、チャートが良好で、国策などのテーマ性があり、好業績が見込める銘柄群に絞って投資することを強くおすすめします。
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