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日経平均株価は一時、日銀が国債の買い入れ額を減額したことが
「金融引き締め」の準備と受け止められて小幅に下落
日銀は5月13日、3月に異次元金融緩和を解除して以来ではじめて、市場からの国債買い入れ額を減らしました。具体的には、償還までの期間を示す残存期間「5年超10年以下」の買い入れ額を4250億円と、前回から500億円減額しました。ただし、他の残存期間では買い入れ額を据え置きました。
これをきっかけに、6月13~14日開催予定の金融政策決定会合に向けて、日銀は、事実上の量的引き締め(QT:Quantitative Tightening)への準備を始めたとの見方が強まっています。これを受け、新発10年物国債利回りは一時0.940%まで上昇し、2023年11月以来、約半年ぶりの高水準をつけました。また、東京外国為替市場では、一時1ドル=155円50銭付近まで円高に振れる場面がありました。
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日銀の国債購入減で金利が上昇したことや、円安が一服したことで、5月13日の日経平均株価は前週末比49.65円(0.13%)安の3万8179.46円と、小幅ながら反落しました。
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個別銘柄では、金利上昇が債務の返済負担増につながるとされる不動産株の下落が目立ち、東証33業種の不動産業は前週末比3.26%安と、33業種の中で下落率がトップでした。また、円高が業績にマイナスに寄与する輸送用機器は、同1.20%安でした。一方、「金利上昇・利ザヤ拡大」で業績拡大が期待できる銀行業は同0.86%上昇しました。
なお、翌5月14日の日経平均株価は、前日比176.60円(0.46%)高の3万8356.06円とわずかに反発しています。
米・財務長官のコメントで円買い介入をしづらくなったことは、
脱デフレにつながり、日本株にとってポジティブな材料に!
日銀の国債購入の減額で金利が上昇したにもかかわらず、5月13日のNY円相場は続落し、前週末比45銭円安・ドル高の1ドル=156円20〜30銭でした。NY連銀がこの日発表した4月の消費者調査で、1年後の予想インフレ率が3.3%と3月の3.0%から上昇したことや、ジェファーソンFRB副議長が「政策金利を抑制的な水準に維持するのが適切だ」と話したことで、米国のインフレ懸念は根強く、日米の金利差が開いた状況が長引くとの観測が強まったことが、円売り・ドル買いの材料となりました。
ちなみに、先述のNY連銀の4月の消費者調査によると、消費者は将来の収入や所得の伸びが鈍化すると予想している一方で、ガソリンや食品、医療費、大学の学費、家賃の値上がりが加速すると予想しています。とりわけ、住宅価格の伸び予想は3%から3.3%に上昇し2022年7月以来の大きさとなりました。つまり、米国の消費者は単なるインフレではなく、「スタグフレーション(景気後退と物価上昇の同時進行)」を懸念し始めているように感じます。
一方、イエレン米財務長官は5月13日公開されたブルームバーグ・テレビジョンのインタビューで、「特定の国の状況についてコメントするつもりはない」「介入を実施するのであれば、極めてまれなケースであるべきで、貿易相手国に伝達するのが適切だろう」などと述べました。そして「ドル相場を見守るうえでどの通貨を注視しているか」との問いに対し、イエレン長官はユーロと円、人民元を挙げたと、ブルームバーグは伝えています。
イエレン長官の介入への後ろ向きの発言を受け、今後、日本政府は円買い介入がやりづらくなったのではないかとの見方が強まっています。たしかに無秩序な円安(急激な円安)は困りますが、緩やかな円安は日本経済の脱デフレに寄与すると私は見ているので、政府が円買い介入をやりづらくなることは、日本株にはポジティブな材料と考えています。
5月14日のPPIや14日のCPIの内容がよほど想定外じゃない限り、
「米国経済のスタグフレーション入はない」との見通し
このような投資環境下、5月13日のNYダウは9営業日ぶりに反落し、前週末比81.33ドル(0.20%)安の3万9431.51ドルで引けました。NYダウは前週末までの8営業日で1696.92ドルも上昇したため、この日は利益確定売りが優勢でした。それでも、ここ最近のNYダウに関しては、非常に強い動きを続けていると評価できます。
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米国については、5月14日に4月の米・卸売物価指数(PPI)、15日に4月の米・消費者物価指数(CPI)の発表を控えています。FRBの今後の金融政策を読むうえで、2つの重要な物価指標の内容を見極めたい投資家が多かったことも、9営業日ぶりの反落の要因になったのでしょう。
ただし、CPIやPPI公表を受け、米国の金融市場は短期的には多少変動するでしょうが、それらが腰を抜かすようなものとならない限り、「FRBの次の行動は利下げ一択」だと見ています。また、FRBが景気に配慮した姿勢を続けているため「米国経済のスタグフレーション入りもない」と考えます。よって、米国の金融市場に関しては、短期的に上げ下げはするものの、中長期的には「株高・債券高」のトレンドが継続すると予想しています。
日本株の上値は重く、しばらく調整が続く可能性が高いので、
万が一の急落時にも退場することがないよう資金管理は厳格に!
一方、日本株に関してですが、5月13日、ブルームバーグが「ブラックロック、円安進行が海外投資家の日本株離れを招く恐れ」と題した記事を配信しました。この記事によれば「ブラックロック・ジャパンの番場悠アルファ運用本部長はブルームバーグのインタビューで、『通貨安が続けば、グローバル投資家にとって日本株への投資は難しくなる』と指摘。海外投資家と日本について話す際、『為替のことは間違いなく全員の頭の中にある』と述べた」とのことです。このため、円安に歯止めが掛かるまでは、海外投資家が日本株の上値を積極的に買うことはなさそうです。
その一方で、5月14日、ブルームバーグは「ブラックロック、政策転換後の日本への投資機会を高く評価」と題した記事を配信しました。こちらの記事によれば「金融政策の転換とコーポレートガバナンス(企業統治)改革の進展で、日本は世界の投資家にとって魅力的な投資先になっていると、ブラックロックのアジア太平洋地域責任者スーザン・チャン氏が語った」とのことです。このため、円安進行だけを理由に、海外投資家が日本株の下値を叩き売るようなことはないとも見ています。
なお、高水準に積み上がった信用買い残は、引き続き需給面での懸念材料です。5月2日申し込み時点の信用買い残は4兆6836億円と、前週末比495億円減でした。減少は2週連続ですが、その減少額は小さく、残高は依然として高水準を維持しています。また、信用倍率(信用取引における買い残高÷売り残高)は6.77倍と高水準です。そして、信用評価損益率は2日申し込み時点でマイナス6.43%と、前週のマイナス6.12%からマイナス幅が0.31ポイント拡大しました。将来の“売り予約”である信用買い残高が高水準を維持したままで、信用倍率は高く、かつ評価損益率が悪化しているため、信用需給は非常に悪いと考えておく必要があります。
結論として、円安に歯止めが掛かるまでは海外投資家の上値追いが期待薄であることや、信用需給が非常に悪いことから、日本株の上値は重く、相場全体の調整は継続する可能性が高いと考えています。テクニカル的には「日経平均株価が25日移動平均線を上回り、かつ25日移動平均線自体が上向きに転じるまでは、日本株の調整が続く」と見ています。
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足元の投資環境は、信用需給が悪いことを主因に、個人投資家が株式投資で儲けるには非常に難易度が高い状況だと認識しています。今後、万が一、調整が本格化(下げが加速)して、例えば日経平均株価が200日移動平均線(5月14日現在3万4894.91円)を試すような急落があったとしても退場することがないように、今から資金管理を徹底して「万が一」に備えておくことを強くおすすめします。
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