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現在の米国株式市場は、「底堅いけど、上値は重い」状況です。そしてそれは、日本株も同様です。これは、日米の政策当局の努力を主因として中長期的な景気腰折れリスクが大幅に低下している一方で、短期的には米国の景気の先行き不透明感が強まっているからです。
米国景気の短期的な不透明感の要因としては、カリフォルニア州やフロリダ州をはじめとして米国の新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが掛からないことに加え、米中の政治的な対立が激しくなっていることが挙げられます。
米国の実質金利が大幅なマイナスとなったことで、
米ドル/円レートは約4カ月ぶりの高値水準に!
日本株に関しては、外国為替市場における「主要通貨(特にユーロ)に対するドル安」もネガティブに作用しています。
例えば、ドイツのIfo経済研究所が発表した7月の企業景況感指数が、前月と比べて市場の予想以上に改善したため、ユーロ買い・米ドル売りが加速しました。その結果、7月27日のNY外国為替市場では、一時1ユーロ=1.1781ドル近辺と2018年9月以来、1年10カ月ぶりの「ユーロ高」となる場面がありました。
ユーロに関しては、7月21日の欧州連合(EU)首脳による欧州復興基金創設合意による欧州域内の景気回復期待に加え、24日に発表された7月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)が良好な内容だったため、米ドルを売ってユーロを買う動きが加速したのです。
また、金利面では、米国の実質金利(長期金利から期待インフレ率を引いたもの)が他の主要国に比べて大幅なマイナスとなっているため、米ドルが売られやすい状況が続いています。
そのため、円に対しても米ドル売りが優勢となっています。例えば、7月27日のNY外国為替市場では、一時1ドル=105円12銭と、ほぼ4カ月ぶりの円高水準をとなる場面がありました。この日は、28~29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でゼロ金利政策の長期化が示されるとの観測から、主要通貨に対して米ドルが売られました。当然ながら、この「米ドル安・円高」は日本株に対してネガティブ材料となります。
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世界中の中央銀行による金融緩和政策により、
金先物価格が9年ぶりに過去最高値を更新!
一方で、ドルの代替投資先である金先物価格の上昇ピッチが加速しています。7月27日のNY金先物価格は7日続伸し、8月物は一時1トロイオンス=1941.9ドルを付け、2011年9月以来、9年ぶりに過去最高値を更新しました。
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ただし、現在の金先物高は、リスクオフムードの高まりによるものではないと考えています。新型コロナウイルスの感染拡大により停滞する経済を支えるため、世界中の中央銀行が緩和的な金融政策を続けています。その結果、世界的に「カネ余り」が発生しています。金融市場には、湧水が湧き出て溢れ出るかのようにマネーが流れ込んできており、行き場を失った巨額のマネーの一部がゴールド市場にも流入しているのでしょう。むしろ、世界的に投資家がリスクオンになっているからこそ、金先物価格が堅調なのだと思います。
「VIX/VIX3Mレシオ」を見る限り、
米国株が急落する可能性は低い!
一方、7月27日のVIX指数(S&P 500の今後30日間のインプライド・ボラティリティ)は、前日比1.10(4.26%)安の24.74でした。VIX指数は、株式相場が最も不安定なときに最高水準に達するので、別名「恐怖指数」とも呼ばれています。
また、同じく7月27日のVIX3M(CBOE S&P 500 3 Month Volatilit:VIXの先物)は同0.56(1.83%)安の30.00で、VIX/VIX3Mレシオは同0.02(2.47%)安の0.82でした。
VIX/VIX3Mレシオは、1を下回っていれば米株式相場は落ち着いていて良好、1を超えると先安観が強く波乱の展開になる可能性が高いとされています。足元のVIX/VIX3Mレシオは安定して1を下回って推移しているので、米国株の急落を心配する必要性は乏しいと言えるでしょう。
ただし、日経平均株価が25日移動平均線を下回ったら、
直近安値の「2万1529.83円」まで下落する可能性も!
一方の日本株ですが、現状は買われ過ぎで過熱しているわけでもなく、売られ過ぎているわけでもなく、まあ穏当な水準で落ち着いて推移しているというのが正直な感想です。
というのは、7月27日における東証1部の騰落レシオ(25日平均)が88.64%だったからです。東証1部の騰落レシオは、7月15日まで6日連続で70%台の「やや売られ過ぎ」水準にまで低下していましたが、16日、17日と2日連続で80%台になり、20日には90%台を回復しました。その後、21日から再び80%台で推移しています。
ちなみに、東証1部の騰落レシオは、6月2日には150.78%まで上昇し、その後、6月11日まで大体130%~150%の過熱ゾーンで推移していました。現在の日本株は、この6月の「やり過ぎ・はしゃぎ過ぎ」に対する時間的な調整を行っている、と私は見ています。
日経平均株価に関しては、テクニカル的に終値ベースで25日移動平均線(7月27日現在2万2522.78円)を上回って推移している限り、「強気継続」で弱気になる必要はないでしょう。
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ただし、終値で25日移動平均線を明確に下回るようだと、心理的節目の2万2000円近くまで下落したり、6月15日の安値2万1529.83円付近まで「掘る」可能性も意識しておく必要があります。
それでも投資戦略的には、日経平均株価が終値で25日移動平均線を割れたのを確認してから、下値に対する備えをすれば十分間に合うはずです。よって、25日移動平均線を割れる前から、慌てて下落へのヘッジをする必要はないと考えています。
積極的に売買する個人投資家好みの銘柄が不振になり、
機関投資家好みの優良なIT関連の大型株が注目される展開に
なお、個人投資家にとって現在の相場は、6月下旬までの活況相場に比べて、儲けるには相当難易度が上がったと感じています。その最大の要因は、アクティブ個人(信用取引を積極的に使って、短期売買を繰り返す個人)好みの銘柄群の株価下落と、それに伴う需給の悪化です。この結果、6月下旬まで元気だったアクティブ個人の多くは「青菜に塩」状態になってしまったようです。
ちなみに、アクティブ個人好みの銘柄群とは、具体的に言えば、新型コロナウイルス絡みのバイオ関連銘柄や、直近IPO銘柄などで、これらの銘柄群を抱えて、日々増加する評価損に苦しむアクティブ個人が増加したため、個人の関与率の高い新興市場や、仕手系材料株への売り圧力が強い状況が継続しているのです。
残念ながら今は、彼らのような「高値を元気一杯にジャンピングキャッチしてくれるプレーヤー」が不在なので、市場の難易度が上がってしまっているのです。
そうなると必然的に、狙うべきは個人の関与率が低く、国内外の機関投資家の関与率の高い優良大型株、特に「ウィズ&アフターコロナ」で成長が期待できるIT関連銘柄に注目した投資戦略が有効になるので注目しておきましょう。
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