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米国株「ローズタウン・モーターズ」はピックアップトラック専門のEV(電気自動車)メーカー!「テスラ」よりも株価は割安な水準だが、将来有望でお買い得!

2020年12月28日公開(2022年9月20日更新)
広瀬 隆雄
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「ローズタウン・モーターズ」は、ゼネラル・モーターズの工場を
買い取って創業した「EVピックアップトラック」メーカー

 今週は、しっかりとした事業計画と無理のない製品設計、そして保守的な財務計画に基づき、2021年9月に世界に先駆けて「EV(電気自動車)ピックアップトラック」を発売する会社、ローズタウン・モーターズ(ティッカーシンボル:RIDE)を紹介します。

 社名の「ローズタウン」は、オハイオ州ローズタウンにあった北米で3番目に大きい自動車工場、ゼネラル・モーターズ(ティッカーシンボル:GM)・ローズタウン工場にちなんでいます。

 長年、ゼネラル・モーターズは、ローズタウン工場で「シボレー・クルーズ」を年間40万台のペースで生産してきました。しかし、2019年にゼネラル・モーターズは「シボレー・クルーズ」の生産を打ち切ることを決め、ローズタウン工場も閉鎖することになりました。現在のローズタウン・モーターズの経営者は、その際に「これはチャンスだ!」考え、ゼネラル・モーターズからその工場を丸ごと譲り受けたのです。

 シボレー・クルーズの生産は2019年に終了しましたが、それまでに稼働してきたプレス機や組み立てロボット、塗装ブースなどは、そのままの状態でごっそりローズタウン・モーターズに引き継がれました。

アメリカで最も儲かる自動車マーケットである
「ピックアップトラック」の市場で勝負!

 アメリカで売られている新車の7割は、ピックアップトラックです。皆さんは、日本を基準にして「普通乗用車のマーケットのほうが大きい」と思っているかもしれませんが、それは間違いです。ピックアップトラック市場こそ全米最大で、最も儲かるマーケットなのです

 ピックアップトラックのベストセラーは「ダッジRAM」と「GMシボレー・シルバラド」「フォードF-150」で、これらは乗用車を含めてアメリカで最も数多く売れている3車種になります。

 この3車種は、いわゆる「フルサイズ・ピックアップトラック」と呼ばれます。ピックアップトラックには、フルサイズより一回り小さいミッドサイズという種類もあるのですが、それらは基本的に業務用には向いていません。大工や工務店、庭師など、ピックアップトラックを日常業務に使っているユーザーは、自分たちが慣れ親しんだ荷台のサイズにこだわります。そのため、ピックアップトラックを開発する際は、彼らの仕事上の要求を満たす必要があります。

 その点、ローズタウン・モーターズのピックアップトラックはフルサイズであり、ごくありふれた標準的なデザインになっています。言い換えれば、奇抜なデザインで勝負する必要は一切ないのです

「ローズタウン・モーターズ」の「エンデュアランス」は、
従来のガソリンエンジン車と比べてはるかに低コストで運用可能!

 ローズタウン・モーターズのピックアップトラックは「エンデュアランス」という商品名で、サイズは「フォードF-150」とほぼ同じです。

 そしてローズタウン・モーターズは、業務用市場に狙いをつけています。顧客企業は、自社の事業所を中心として、短距離ルートでピックアップトラックを運行させます。そのため、ローズタウン・モーターズは、サポート・センターを顧客の事業所に設けます。

 「エンデュアランス」をまとめ買いした顧客企業は、車両を自社の配送センターや事業所に配置し、そこで夜間に充電します。昼間は商売のために動き回るわけですが、ビジネスの大半は近場で行われるので、1日に250マイル以上走ることはまずありません。「エンデュアランス」が1回の充電で走行できる距離を250マイルに設計しているのは、そのためです。

「エンデュアランス」は「ダッジRAM」や「シボレー・シルバラド」「フォードF-150」の顧客を奪うことを目指しており、テスラ(ティッカーシンボル:TSLA)と戦うことは毛頭考えていません。逆に言えば、テスラが「サイバー・トラック」を発売しても、それはスペックが違いすぎるため業務用市場には喰い込めないと思います。そもそも業務用市場の顧客は、高い値段を払ってテスラのような高級車を購入することはありません。

 価格的に「エンデュアランス」は約450万円と「フォードF-150」と互角です。しかし、燃料コストは「エンデュアランス」の方がはるかに安くあがります。なぜなら「エンデュアランス」の燃費は、電気代をガソリン代に換算すると75マイル/ガロンも走れるからです。それに対して他社の内燃機関を使ったピックアップトラックは、最高でも15マイル/ガロンしか走れません。

 さらに、メンテナンス費も「エンデュアランス」の方がかなり安く済む計算です。すべてをひっくるめて考えると、所有期間の総コストで比較して「エンデュアランス」は他社のピックアップトラックより200万円くらい安い買い物になります。

 これは、趣味でピックアップトラックを買う消費者にはそれほど重要ではないのかもしれませんが、業務用車を50台、100台とまとめて買う事業会社には、強い訴求ポイントとなります。

「エンデュアランス」は車輪内部にそれぞれモーターを組み込むことで、
故障が少なくメンテナンス費用もかからない構造に

「なぜ、EVなのに内燃機関のピックアップトラックよりもメンテナンス費が安いのか」という点ですが、ひと言で言うと、部品点数が少なく、部品コストが安いうえ、故障が少なく、メンテンナンスの手間もかからないからです

 普通のピックアップトラックは、1つのエンジンを持ち、そこで生じた回転をシャフトを通じて前輪や後輪に伝達してゆく方法を採っています。その過程で、ピストンやギア、シャフト、バブルなど、約2000点もの「動く部品」を使用する必要があります。それらの多くは潤滑油を必要としており、使っていくうちに消耗し、金属疲労を起こします。

 それに対してローズタウン・モーターズの「エンデュアランス」は、ハブ・モーターという方法を用いており、4つの車輪の内部にそれぞれモーターを組み込んでいます。動力部が直接タイヤにつながっているので、エネルギーを伝播するチェーンもベルトも必要ありません。万が一、車輪の一つが動かなくなっても、スペアのモーター入り車輪に履き替えるだけでOKです。

 クルマの動力部が4つの車輪の内部に埋め込まれており、それぞれが個々に電子制御されているため、トラクション(駆動力)が強いうえ、クルマの構造がシンプルで壊れにくくなっています。ちなみに、運転手の前方に重いガソリンエンジンやモーターが配置されてないので、衝突時の安全性のテストでも「五つ星」という最高のお墨付きを獲得しています。

 なお、テスラのEVは、従来の内燃機関乗用車と同じような主軸やディファレンシャルがあり、ずっと複雑な構造になっています。

 ただし、ハブ・モーターは、モーターが仕組まれている関係から車輪の重量が大きく、それを支持するためのサスペンション構造が今までと異なる点が唯一の欠点となります。

 ローズタウン・モーターズは、ハブ・モーターとバッテリー・パックを内製しています。バッテリー・パックが一番大きなコストになります。なお、バッテリー・セルだけは外注しています。

「ローズタウン・モーターズ」はすで30億ドル相当の注文を受注!
しかし、株価のバリュエーションは「テスラ」の1/8程度

 ローズタウン・モーターズは、すでに5万台(約30億ドル相当)の予約注文を受注しており、2021年9月から出荷される予定です。2022年までの生産分はすでに予約で完売のメドが立っています。買い手は、すべて運送会社などの事業会社です。彼らは、主にコスト面での魅力を評価して「エンデュアランス」の採用を決めました。

 ローズタウン・モーターズは、年間60万台の生産能力があります。会社側予想によると2022年の売上高は16.9億ドル、販売台数は3.1万台、粗利益は1.39億ドル、粗利益マージンは黒字の8.2%、EBITDAは1000万ドルが見込まれています。

 ざっくりとした比較になりますが、現在のテスラローズタウン・モーターズの株価を比べると、ローズタウン・モーターズの株はテスラの大体1/8くらいのバリュエーションで取引されていると考えていいでしょう。

【今週のまとめ】
従来のガソリン車に引けを取らない実用的なEVトラックを
製造する「ローズタウン・モーターズ」は要チェック!

 ローズタウン・モーターズは、地味な業務用EVピックアップトラックのメーカーで、そのデザインも、虚飾を一切排して徹頭徹尾、実用的かつ頑丈なものになっています。コスト面でも、ゼネラル・モーターズフォード(F)などのピックアップトラックにまったく引けを取りません。

 株価は、同じEVのメーカーであるテスラと比べると、べらぼうに安いバリュエーションで取引されています。2021年9月の納車を前に市場参加者から注目を浴びることは間違いないので、今のうちからローズタウン・モーターズをチェックしておくといいでしょう。

⇒ローズタウン・モーターズ(RIDE)の最新株価はこちら!

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