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米国株は“2月に株価下落”のリスクに注意! バイデン大統領が就任しても「追加景気支援策」が可決されない可能性のほか、ワクチン接種の進捗や効果にも注視を

2021年1月18日公開(2023年1月25日更新)
広瀬 隆雄
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今週、いよいよジョー・バイデン大統領が誕生するが、
追加景気対策などの重要な法案は議会を通過しない!?

 米国で1月20日(水)、民主党のジョー・バイデンの大統領就任式が行われます。

 ジョー・バイデンは「米国をひとつにまとめる」ことを公約に選挙戦を戦い、その結果、共和党のドナルド・トランプに選挙人団ベースで大きな差をつけて当選しました。しかし、米国議会に暴徒が乱入した事件からもわかる通り、現在の米国は分断されており、民心をひとつにまとめるのは容易なことではありません。

 ジョー・バイデンは、まず1.9兆ドルの追加景気支援策を打ち出すと発表しています。さらに、インフラストラクチャや環境保全の法案もいずれ発表する考えです。そして、それらを賄うため、法人税の増税や裕福層への課税強化を考えています。キャピタルゲイン税も増税される可能性があります。

 しかし、率直に言って、これらの法案が議会を通過するかどうかは大いに疑問です。

 なるほど、上院は民主党が50議席、共和党が50議席と均衡していますが、採決が同数になった場合、上院議長を務める民主党のカマラ・ハリス副大統領が「最後の一票」を投ずることになるので、上院は実質的に民主党が支配しています。

 しかし、米国の財政に大きな影響を及ぼすような法案の大半は、51票ではなく60票の賛成を必要とすることから、1.9兆ドルの追加景気支援策もインフラストラクチャや環境保全の法案も、上院で可決されない可能性が高いです

 実際、ジョー・バイデンが1.9兆ドルの追加景気刺激策を発表した翌日、株式市場は下げ、米国10年債利回りも低下しました。それは市場参加者が「この法案は、通らない」と考えていることを端的に表しています。

 一方、「トランプ減税」は5年の時限法案であり、それを延長するには上院で51票の賛成が必要です。これに関しては、民主党が51票を握っているために、法案の延長を不成立にして、終了に追い込むことができます。言い直せは、法人税率や裕福層への課税は「トランプ減税」以前の状態に戻ることが予想されます

 市場参加者は「当然、環境保全法案が通るだろう」と楽観的に考え、ソーラー・パネルのメーカーやその他の「グリーン」関連株を買い進んでいますが、ある時点でハシゴを外されるリスクがあるのです。

ワクチン接種により新型コロナが“峠を超える”可能性はあるが、
変異種の進化により感染拡大が止まらないリスクも!

 次に、新型コロナウイルス向けワクチンの接種状況について説明します。これが目先の株式市場の先行きを占う上で、最も重要な要因です。

 去年12月にファイザー(ティッカーシンボル:PFE)バイオンテック(ティッカーシンボル:BNTX)が開発した新型コロナウイルス向けワクチンが米国食品医薬品局(FDA)から承認され、続いてモデルナ(ティッカーシンボル:MRNA)のワクチンも承認されました。

 しかし、当初の接種は計画の4分の1程度しか進まず、モタモタしたスタートになりました。そのため政府は、ワクチン配布に関する細かいルールを大幅に簡素化し、ワクチンの接種に本腰を入れ始めています。

 今、それが功を奏し始めており、1月15日の時点で1296万人の米国人が少なくとも1回目の注射を打ちました。これは100人当り3.9人という計算になり、1日当り85万人が注射したペースです。

 世界全体では、これまでに3791万人が注射を済ませています。国別に見ると、米国に続いて中国が900万人、英国が368万人、イスラエルが219万人、アラブ首長国連合が167万人、ロシアが150万人、イタリアが100万人、ドイツが96万人、スペインが77万人……という感じです。

 十分な数の市民が免疫を持ってウイルスが拡散しなくなる「峠を越えた」状態のことを“集団免疫”と言います。それが成立するには、保守的に言って国民の75%が免疫を持つことが必要だろうと言われています。

 集団免疫を考える際、ひとつのポイントとして「いつ集団免疫が成立するのか」という問題があります。結論から言えばそれは流動的です。もし今、尻上がりにペースが加速しているワクチン接種がどんどん捗れば、2021年の下半期にも集団免疫が成立する可能性があります

 その一方で、生産が滞る、国民の多くが注射を忌避するなどの理由で、集団免疫に到達できないリスクも大きいです

 さらに、これに不確実性を加える要因として、現在、英国で発見された変異種が世界に広がりつつあります。現時点では、ファイザー/バイオンテックの新型コロナワクチンは英国変異種にも効きます。しかし、英国変異種が今後2回、3回とどんどん変異を重ねれば、いずれファイザー/バイオンテックのワクチンでも変わり果てた姿になったその変異種をターゲットとして認識できなくなるリスクがあるのです。

 その場合でも、バイオンテックはmRNA技術により、その変異種に合せた改良バージョンのワクチンを出すことは可能です。

 しかし、そういうイタチゴッコが続き、いつまで経っても新型コロナが根絶できないという可能性もあります。その場合は、インフルエンザと同じように毎年予防接種をしなければいけなくなります。それは、社会の負担するコストがとても大きくなることを意味します

ワクチン接種が順調に捗って新型コロナが抑えられれば、
長期金利が上昇して「グロース株」より「リア充銘柄」が狙い目に!

 さて、そのような「伸るか反るか」の大事な局面に来ているワクチン接種ですが、もし「ワクチン接種がサクサク進捗するシナリオ」であれば力強い景気回復が期待でき、その場合、長期金利は上昇すると予想されます。

 長期金利の上昇は、グロース株にとって悪いニュースです。したがって、2000年のドットコム・バブルが崩壊したときのように、高いバリュエーションを与えられた銘柄が株価を大きく下げるリスクがあります。その場合、旅行、レジャー、レストランなどの「リア充銘柄」に相場の人気は移ってゆくと考えるのが自然です。
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 逆に「ワクチンの接種がモタモタし、新型コロナが根絶できないシナリオ」になれば、景気回復は望み薄となり、低金利がずっと続くことが考えられます。その場合は、これまで通りに「リモートワーク」関連銘柄や「EV(電気自動車)」関連銘柄などが人気を博すと予想されます。
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新大統領が就任した直後の2月は相場が下がるケースが多いので、
あらかじめポートフォリオのリスクを下げておくのが正解

 最後に2021年の2月相場についてですが、例年、2月は相場が不調なことで知られています。以下は、S&P500の1950年以降の月次パフォーマンスを月ごとに平均したグラフですが、2月はマイナスとなっています。

 特に新大統領が就任した直後の2月は、経験則的に相場がかなり下がります。

 そのような理由から、今回もそろそろポートフォリオのリスクを下げることを考え始めたほうがいいと思います。「全降り」する必要はありませんが、最近IPOされた銘柄やSPAC(特別買収目的会社)銘柄、「EV」関連銘柄といった人気株は、大きく損するリスクもありますので、熱を上げるのもほどほどにしたほうがいいでしょう。

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