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前々回のコラムでは、EV(電気自動車)の性能向上に欠かせない「全固体電池」を取り上げました。今回も同じくEVに関連するテーマとして「ワイヤレス充電(非接触充電)」を取り上げたいと思います。
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EV用の「ワイヤレス充電(非接触充電)」システムは、
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皆さんは、EVのバッテリーを充電するのにどの程度の時間がかかるか知っていますか? 例えば、日産自動車(7201)のEV「リーフ」のバッテリーには、「62kWhバッテリー(航続距離458km)」と「40kWhバッテリー(同322km)」の2タイプがあり、急速充電だとフル充電になるまで、それぞれ「60分」と「40分」かかります。急速充電ではない場合は、充電器にもよりますが数時間から十数時間かかるため、夜間の使ってない間に充電しておくのが現実的な運用方法となるでしょう。
一方、ガソリン車は、ガソリン切れの状態から満タンにする場合でも、給油そのものに要する時間は数分程度です。さらに、EVの充電スタンドと異なり、給油ができるガソリンスタンドは日本全国いたるところにあります。
つまり、EVを普及させるためには、EVそのものの技術的・コスト的な改善だけではなく、充電スタンドの増加を含めた「充電の簡便さの向上」が大きな課題となります。
そうした状況の中、EVの充電方法として最近注目を集めているのが「ワイヤレス充電(非接触充電)」です。
先日も日経新聞で、イスラエルのスタートアップ企業であるエレクトレオン・ワイヤレスが紹介されていました。記事によると、エレクトレオン・ワイヤレスは、スマホなどですでに実用化されている「ワイヤレス充電」の技術をEVに応用し、走行中のEVに無線で充電する実証事件をこの1月から開始したそうです。具体的には、イスラエルの最大商業都市であるテルアビブで、道路の地中に送電コイルを設置し、公共のEVバスを走らせる実験を実施。いまだ実験段階ではあるものの、日本市場への早期参入も目指しているとのことです。
調査会社・アライドマーケットリサーチのレポートによると、EV向け充電インフラの市場規模は2027年に276億ドル(約2.8兆円)と、2019年と比較して10倍超に成長すると予測されます。EVの「ワイヤレス充電」は、充電にかかる時間や課金方法など、実用化にいたるまでには解決しなければならない課題も多いとは思いますが、その利便性の高さはユーザーにとって大きな魅力です。ここ数年でスマホのワイヤレス充電が一般的になってきたように、EVの「ワイヤレス充電」が今後大きく普及する可能性は十分あるでしょう。
そこで今回は「ワイヤレス充電」関連の銘柄に注目してみたいと思います。具体的には、非接触充電システムの開発を進めている企業のほか、そこで使用されるモーターやコイルの開発・製造にかかわる企業、さらには技術開発を行う企業に出資している企業などを選定しました。
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【三菱商事(8058)】
子会社がEV向けワイヤレス充電技術を持つ米国企業に出資
三菱商事(8058)は、子会社を通じてEV向けのワイヤレス充電技術を持つ米国のワイトリシティに出資しています。ワイトリシティのワイヤレス充電技術は、中国の国家標準規格としても採用されています。株価は昨年11月以降、上昇トレンドが継続しており、足元で調整が見られるものの25日移動平均線が下値支持線として機能しています。
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【新電元工業(6844)】
「EV非接触給電システム(WCS)」の開発を進める
新電元工業(6844)は、EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)向けに、地上側の送電コイルと自動車側の受電コイルを使った「EV非接触給電システム(WCS)」の開発を進めています。株価は昨年11月以降、上昇する13週移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドが継続しています。
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【日本精工(6471)/ローム(6963)/東洋電機製造(6505)/ブリヂストン(5108)】
東京大学の研究グループと共同でワイヤレス給電システムを開発
日本精工(6471)、ローム(6963)、東洋電機製造(6505)、ブリヂストン(5108)の4社は、東京大学大学院・新領域創成科学研究科の藤本博志准教授らの研究グループと共同で、走行中に道路から直接インホイールモーターに給電できる「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」を開発し、実車での走行実験に成功しました。今後は実用化に向けて、2025年の実証実験フェーズへの移行を目指すとしています。株価を見ると、日本精工とロームは上昇する13週移動平均線を下値支持線に上昇トレンドが継続しています。東洋電機製造は横ばいに推移ながらも、13週・26週移動平均線が下値支持線として機能。そして、ブリヂストンは、1月半ばからの上昇で13週移動平均線を突破したことで、今後さらなる上昇が期待できます。
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【大日本印刷(7912)】
ワイヤレス給電用のシート型コイルを手掛ける
大日本印刷(7912)は、EV向けワイヤレス給電用のシート型コイルを手掛けています。同製品はシート型のため、EVの軽量化につながる利点があります。株価は、下降する13週移動平均線に上値を抑えられる形での下落が続いています。足元ではPBRが0.5倍台まで低下しており、割安感が意識されているので、底入れを見極めたいところです。
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【住友電気工業(5802)】
小型・薄型アンテナのワイヤレス給電モジュールを開発
住友電気工業(5802)は、スマートウォッチやスマートグラスなどウェアラブル端末へ給電することができる小型・薄型アンテナのワイヤレス給電モジュールを開発しています。EV用のワイヤレス充電システムではありませんが、EVの充放電器用コネクターなどを扱っている関係もあり、関連銘柄として取り上げました。株価は、年初に急伸した後、やや調整が続いていましたが、上昇する13週移動平均線を下値支持線として足元でリバウンドを見せています。
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以上、「ワイヤレス充電」関連銘柄を紹介しました。なお、米国の関連企業としては、三菱商事のところで出てきたワイトリシティ以外に、モメンタム・ダイナミクスの動向もチェックしておくいいでしょう。
日本政府は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標に向けた取り組みの一環として、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売をすべて「電動車」にする方針を掲げています。
しかし、前述の通り、EVを普及させるためにはEV自体の高性能化だけではなく、充電所などのインフラ整備も必要です。また、利便性の面でもガソリン車を上回る必要があります。そうした意味からもEVの「ワイヤレス充電」の整備は重要になってくる可能性は高く、関連銘柄の株価にも期待したいところです。
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