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6月21日、日経平均株価は前週末比953.15円安の大幅安を記録しました。今回はその要因と、今後の日米の株価について解説します。
FRBが6月15日と16日に開いたFOMCの結果を発表して以降、米国の株式市場はFRB高官の発言などに右往左往しています。
FRBは6月16日、これまで2024年以降としてきたゼロ金利政策の解除時期を2023年に前倒しする方針を示しました。今回のFOMC参加者18人が提示した中期見通しで、13人が2023年中の利上げ開始を予測したのです。前回3月は7人にとどまっていたことを考えると、多くのFOMCメンバーが利上げに積極的なタカ派の姿勢を強めていることが判明しました。
さらに、セントルイス連銀のブラード総裁が6月18日、CNBCのインタビューで「インフレ率上昇が予想より早いため、2022年後半に最初の利上げを始めるのが適切かもしれない」との考えを示したのです。この発言を嫌気した18日のNYダウは、前日比533.37ドル安の3万3290.08ドルと大幅に下落しました。
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この発言により、株式市場は「早期利上げ⇒インフレ懸念後退⇒長期金利低下⇒インフレが業績にプラスに作用する景気敏感株売り⇒長期金利低下がバリュエーション面で有利に働くハイテク株買い」という流れになりました。つまり、景気過熱やインフレを織り込む「リフレトレードの巻き戻し」、すなわち「景気敏感株(シクリカル系バリュー株)売り+成長株(グロース系ハイテク株)買い」が加速したのです。
ただ、6月18日に関しては、景気敏感株比率の高いNYダウのみならず、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も下落しました。その流れを受け、ナスダック総合株価指数と連動性の高い日経平均株価は21日、前週末比953.15円(3.29%)安の2万8010.93円と、大幅安となったのです。
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NY連銀総裁の発言やFRB議長の議会証言の草稿により、
日米の株式市場は大幅に反発し、18日の下落分をほぼ回復!
しかし、6月21日にNY連銀のウィリアムズ総裁が講演で「現在のような高水準の物価上昇率は続かない」と発言。さらに、FRBが21日に公開したパウエル議長の議会証言の草稿で、「(インフレ加速は)前年の反動や供給制約という一時的な要因だ」と改めて強調する見通しと伝わりました。
このハト派的な発言や報道を受け、6月21日の米国株は大幅反発しました。具体的には、6月21日のNYダウは6日ぶりに反発し、前週末比586.89ドル高の3万3876.97ドルと、18日の下落分をあっさり回復。また、ナスダック総合株価指数も反発し、同111.104ポイント高の1万4141.480ポイントでした。
つまり、米国株式市場は、それほどFRBの金融政策の変更の有無に神経質になっているということなのでしょう。そして、その米国株に影響される格好で、日経平均株価も乱高下を余儀なくされています。
日経平均株価は6月21日の大幅下落により、
5月13日から続いた上昇がピークアウト!
一方、日経平均株価に関しては、6月21日の終値で2万8010.93円と25日移動平均線(21日現在2万8775.40円)を大きく割り込みました。このため、5月13日の2万7385.03円を起点とした上昇は、15日の2万9480.85円で「ピークアウト」したと見ています。
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ここ最近の値動きを分析すると、6月17日の高値は2万9197.68円、終値は2万9018.33円で、75日移動平均線は2万9105.93円でした。また、18日の高値は2万9136.74円、終値は2万8964.08円で、75日移動平均線は2万9096.60円でした。これらの値動きから、75日移動平均線が非常に強力なレジスタンスとして機能したことがわかります。
このようにテクニカル的に上値の重さが十分認識されていた状況において、6月18日の米国株が大幅安となったことで、週明け21日の東京株式市場では嫌気売りが殺到し、東証1部の値上がりは123銘柄、変わらずは26銘柄、値下がりは2044銘柄と、値下がり銘柄が全体の93.51%を占める全面安になったのです。
しかしながら、6月21日の米国株が大幅高となったため、22日の日経平均株価は大幅に反発しています。
昔から「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」「米国が風邪を引くと日本は肺炎になる」とよく言われています。安全保障面で「米国の核の傘」に守られて強固な日米同盟を維持するなど、日米の政治経済は密接な関係にあるため、米国が不況や株価暴落などに見舞われると、日本はそれ以上の悪影響を受けることは当然の帰結です。そのため、今後も日本株は主体性乏しく、米国株の動きに対して受動的に上下し続けることでしょう。
FOMC後のブラード総裁の発言で、市場の景色は一変し、
景気の先行きに関して「加速」ではなく「減速」を懸念し始める
私の想定は、FRBはテーパリングの実施前に時間をかけて丁寧な事前説明を行うはずなので、6月のFOMC直後に株式相場が急落する可能性は低いというものでした。また、私の想定が外れるケースでは、まず、米国の長期金利が急上昇すると読んでいました。
しかしながら、FOMC後のブラード総裁の発言で、景色がまったく変わってしまいました。株式市場は、米国の景気の先行きに関して「加速」ではなく「減速」を懸念し始めたようなのです。このため、長期金利は「上昇」ではなく「低下」したのです。
FOMCの結果を受けた6月17日の日経平均株価は前日比272.68円安、翌18日は同54.25円安でした。この値動きを見る限り、FOMC直後の東京市場での投資家はまったく動揺していません。「ブラード総裁発言」を受けた18日の米国株の急落から21日の日経平均株価の急落という流れからわかるように、FOMCの結果ではなく、ブラード総裁発言が日米の株式市場急落のトリガーを弾いたと見てよさそうです。
日経平均株価がここから大幅に下るリスクは低い!
今の投資環境下では「グロース系ハイテク株」が狙い目
ところで、累積売買代金に関する一部国内証券の集計(集計期間:2021年1月4日~6月18日)によれば、日経平均株価は2万8500〜2万9000円が91兆円、2万9000〜2万9500円が67兆円もあります。つまり、2万8500~2万9500円で158兆円にも膨らんでいるのです。また、6月11日時点の信用取引の買い残(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は3兆3759億円と、およそ3年ぶりの高水準に積み上がっています。
そう考えると、75日移動平均線(21日現在2万9077.97円)を超えて上がるためには、「資金量が豊富で、かつ順張り好きの海外投資家」が上値を買い進むための好材料が出てくる必要があるでしょう。現時点では、海外投資家が日本株の上値を買ってくるか否かは不透明です。
ただし、上値に大量の売り物が控えているからという理由で、日経平均株価がここから大幅に下がるとは見ていません。というのは、日本国内でワクチン接種が加速し、沖縄県を除き新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が解除され、政府が東京五輪会場の観客数上限を原則的に定員の50%以内で最大1万人とすることを正式決定するなど、経済の正常化が着々と進んでいるからです。
このような投資環境下では、狙いはグロース系ハイテク株だと見ています。なぜならば、FRBのタカ派転換で、景気過熱やインフレを織り込む「リフレトレードの巻き戻し」、すなわち「景気敏感株(シクリカル系バリュー株)売り+成長株(グロース系ハイテク株)買い」が、米国の株式市場で当面続くと思われるからです。
ただし、米国発の乱高下は今後も発生するでしょう。突然の急落に見舞われても致命傷を負うことがないよう、資金管理だけは十分に注意して相場に臨んでください。
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