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パウエルFRB議長は8月27日、カンザスシティー連銀がオンライン方式で開催した経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」の冒頭で講演しました。
そこでパウエルFRB議長は、2020年3月に再開した量的緩和を縮小(テーパリング)することに関して、「7月のFOMCの際、私の考えは“年内に開始するのが適当だろう”だった」と述べました。その一方で、テーパリングの開始は「将来の利上げ時期の直接的なシグナルにならない」とも指摘しました。
また、米国の5%台の失業率に関して「依然として高すぎる」と指摘し、足元で感染が拡大する新型コロナウイルスのデルタ型による経済への影響を「直近のリスク」として注視する姿勢を示しました。そして、足元のインフレの加速は、自動車関連の供給制約など「一時的」な影響との認識を維持しました。
ただ、年内には9月、11月、12月とあと3回のFOMCが予定されていますが、そのうちどのタイミングでテーパリングの開始時期を決断するかについては言及しませんでした。それでも、今回のハト派色の強いパウエルFRB議長の講演を受け、市場では緩和的な金融環境が長期化するとの見方が強まっています。
実際、8月27日のNYダウは反発し、前日比242.68ドル高の3万5455.80ドルでした。また、ナスダック総合株価指数も反発し、同183.694ポイント高の1万5129.501ポイントと過去最高値を更新。さらに、S&P500種株価指数も反発し、同39.37ポイント高の4509.37ポイントと初めて4500ポイントを上回って取引を終えました。当面の米国株式市場は、FRBによる超緩和的な金融環境のもと、引き続き堅調に推移することが予想されます。
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国内では、新型コロナの新規感染者数が減らず、
全国で緊急事態宣言の解除が難しい状況が継続!
一方、国内では、田村憲久厚生労働相が8月29日、緊急事態宣言の解除時期について「東京をひとつ取ってみても(1日あたり新規感染者数が)500人未満にならないと解除できない。現状を考えると多分かなり難しい」と述べ、期限とする9月12日の解除は難しいとの認識を示しました。
現在、47都道府県のうち33都道府県が「緊急事態宣言」か「まん延防止等重点措置」のいずれかの対象になっています。このため日本では、当分の間は経済の正常化を期待しづらく、日本株全体の上値が重い状態が続く見通しです。
今後、日本の株式市場に最も影響を与える材料は、
「自民党総裁選」と「衆議院選挙」の2つの政治イベント
このような状況下、今後の日本株に最も影響を与える材料は「国内政治動向」との見方は不変です。まずは「自民党総裁選」、次が「衆議院選挙」です。
私は、衆議院選挙の結果が判明し、今後の日本の経済政策がそれなりに見極められるようになるまで、国内外(特に海外投資家)からの中長期スタンスの腰の入った買いは期待できないと見ています。このため、足元のように米国株が堅調に推移している間はいいのですが、今後、米国株が何らかの悪材料の出現をきっかけに調整するようになると、日本株も無事では済まないと警戒だけはしておくべきでしょう。
つまり、衆議院選挙までの東京株式市場は「米国株頼みの不安定な相場」が続くと考えています。なお、衆議院選挙については、菅義偉首相が衆議院を解散せず、45年ぶりとなる衆院議員任期満了(10月21日)に伴い実施されると予想され、投開票日は10月17日になると見られます。
自民党総裁選で菅氏が再選しても、市場へのインパクトは中立!
ただし、大きなイベントリスクが低下したことはポジティブに作用
一方、今回の菅義偉首相の任期満了に伴う自民党総裁選の日程は9月17日告示、29日投開票と決まりました。今回は、国会議員による投票に加え、全国の党員・党友も投票する「フルスペック」で実施されます。衆参両院議長を除く383人の党所属国会議員票と、国民感情が直結する党員・党友による地方票の合計で争われます。地方票は「ドント式」を採用し、議員票と同数になるよう各候補に割り当てます。投票総数は766票です。
今回の自民党総裁選に関して、菅義偉首相は「その時期が来たら出馬したい」と述べています。また、岸田文雄元外務大臣は次期総裁選に正式に出馬することを表明しました。高市早苗前総務大臣も出馬の意欲を見せていますが、国会議員20人の推薦人の確保がハードルになっているようです。石破茂元幹事長は態度を明らかにしていません。
ちなみに、現時点のメインシナリオは、菅義偉現総裁(首相)の再選です。そして、市場の事前予想通り、順当に菅氏で決まるようなら、株式市場へのインパクトは中立でしょう。
そうはいっても、自民党総裁選という政治的な一大イベントを通過すると、イベントリスクが低下して不透明要因がひとつ消化されるため、株式市場に対してはポジティブに作用することでしょう。
また、菅義偉首相は8月30日、首相官邸に自民党の二階俊博幹事長を呼び、新型コロナウイルスに関する経済対策の取りまとめを指示しました。二階氏によれば、「取りまとめの時期や規模についての話はなかった」ということです。そのため、この経済対策による景気押し上げ効果を現時点で織り込むことは不可能です。しかし、それなりの規模の財政出動への期待は、当面の日本株の下支え要因として機能することでしょう。
なお、党役員の任期は9月末に切れます。そこで菅首相は、二階幹事長の交代を含む党役員人事を行う検討に入ったとのことです。菅氏は、党役員刷新で求心力の回復を図りたいようです。
日経平均株価は、年初来安値を起点にしたリバウンドが継続!
ただし、海外発の悪材料が発生した場合は急落する可能性も
ところで8月30日の日経平均株価は、前週末比148.15円(0.54%)高の2万7789.29円と反発し、5日移動平均線(30日現在2万7725.92円)、25日移動平均線(同2万7676.35円)を上回りました。一方、75日移動平均線(同2万8279.03円)、200日移動平均線(同2万8241.41円)はともに下回り続けています。
そして8月31日の日経平均株価も2万8089.54円と、5日・25日移動平均線を上回り、75日・200日移動平均線を下回る状態が続いています。
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目先の相場観としては、8月20日につけた年初来安値2万6954.81円を起点にしたリバウンドが続くと見ています。当面の戻りメドは75日移動平均線です。75日移動平均線を上抜けるケースでは、次の上値メドは7月13日の高値2万8852.31円を想定します。
しかし、75日移動平均線及び200日移動平均線を下回って推移している間は、米国株の急落のような海外発の悪材料が発生した場合、投資家心理が著しく悪化して下値不安が強まり、2万6954.81円割れも十分あり得ると慎重に見ています。
自民党総裁選が終わるまで、流動性が高い大型株のうち、
増収増益見込みで「低PER・低PBR・高利回り」の銘柄に絞り込もう
今後については、自民党総裁選が終了する9月29日までは、押し目で国内外の機関投資家からの買いが見込める「流動性が高い大型株」だけを投資対象にしましょう。そしてその銘柄群の中から、今期業績が増収増益見込みで「低PER・低PBR・高配当利回り」の3拍子の揃った、株価の下値硬直性が見込める銘柄に絞り込みましょう。つまり、慎重な運用を心掛けることをおすすめします。
なお、「自民党総裁選の終了する9月29日」から「衆議院選挙の投開票日と予想されている10月17日」までの期間、日本株は相当不安定に動く可能性が高いと見ています。仮に、現時点における大方の予想通りに菅氏が自民党総裁選で勝利したとしても、現在の菅政権の内閣支持率が低迷しているため、衆議院選挙で自民党が大幅に現有議席数を減らす可能性が高いからです。
また、足元で非常に強い動きを続けている米国株ですが、例年10月は、米国のミューチュアルファンド(米国で一般的な投資信託)がタックスロス・セリング(節税対策売り)を行うことが知られています。これをきっかけに米国株が調整色を強めるようだと、実質的に政治的な空白期間中にある日本株は、大きく動揺する可能性があります。
そのため、万が一、9月後半~10月中旬にかけて日本株が急落したとしても、あなたの運用資金が致命的なダメージを被らないよう今から戦略を練るなど事前の準備をしておき、まさかの急落が発生しても「それは想定内だった」と言えるようにしておきましょう。
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