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ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演以降、
米国の金利は上昇し、日米の株式市場の下落が継続
パウエル議長が8月26日、カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、インフレ抑制を確信できるまで金融引き締めを続ける意向を強調したことをきっかけに、日米の株式市場の調整が続いています。
ちなみに「ジャクソンホール会議」後も、地区連銀総裁の株価下落を喜ぶ発言や、タカ派的な発言が相次いでいます。まず、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は8月26日の株式相場急落について、「講演の(市場の)受け止め方を見て、私は素直にうれしかった」と8月29日に語りました。また、8月30日にはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が「(金融引き締めは)来年まで続く」「(インフレ抑制のため実質金利を)プラスにする必要がある」と述べました。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁は8月31日、「来年の早い時期までに政策金利を4%超の水準まで引き上げる」「来年の利下げは見込んでいない」と述べました。
このパウエル議長の講演や地区連銀総裁の発言を受け、米国金利の先高観が強まり、リスクアセットの株式が売られています。具体的には、9月2日のNYダウは反落し、前日比337.98ドル安の3万1318.44ドルでした。また、ナスダック総合株価指数は6日続落し、同154.261ポイント安の1万1630.865ポイントでした。6日続落は2019年8月以来の連続下落記録です。このように、米国の金利上昇で、とりわけ株価指標で割高とされる高PERのグロース株が弱い動きとなっています。
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9月2日発表の8月の米・雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比31.5万人増と市場予想とほぼ一致した一方で、7月の52.6万人増からは減速しました。また、失業率は7月の3.5%から3.7%に上昇。そして、8月は賃金の伸びも鈍化し、平均時給は前月比0.3%の上昇でした。前年同月比の上昇率は5.2%で、7月からほぼ横ばいでした。
内容としては、米・雇用情勢の逼迫感がやや緩和されたことが判明しました。本来はこれを好感して株式相場が上がっても不思議はないと見ていましたが、実際はNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに下落しました。
9月2日は、ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムが欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」の停止を延長すると発表したという悪材料があったとはいえ、やはり米国の株式相場の地合いが「悪い」のは間違いなさそうです。
これまで繰り返されてきたFRB関係者の発言から
「当面利下げはない」ということは織り込み済み
その米国では、9月7日にブレイナードFRB副議長とバーFRB副議長(金融規制担当)の講演、8日にパウエルFRB議長が討議(オンライン)に参加などが予定されています。
FOMC開催(9月20日~21日)前の「ブラックアウト期間(関係者の発言禁止期間)」が9月10日から始まるため、9月10日からはFRBサイドからの市場を動揺させるコメントはなくなるはずです。ただし、ブラックアウト期間中でもウォールストリート・ジャーナルのFEDウォッチャーを使って観測記事を出して市場を誘導することがあるので、完全には安心できませんが。
とはいえ、これまで「これでもか、これでもか」という感じで市場における来年以降の利下げ期待の芽を潰してきたので、さすがに「当面、利下げはない」ということは織り込み済みとなっており、FOMCの結果を受けた株式市場の急落はないと見ています。
また、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が米国株式相場の急落を喜んだことから、FRBは株式相場の上昇をこころよく思っていないと思われ、米国株はFRBが金融引き締めの手を緩めることが見通せるまでは上値が相当重いと見てよさそうです。
よって、米国株に関しては“○○ショック”と呼ばれるほどの急落はないものの、上値が重い展開が続くでしょう。ウォール街の有名な相場格言に「Don’t Fight the Fed(FEDと戦うな)」というものがあります。これは「FED(連邦準備制度)が金融を引き締めているときは、株を買うな」という意味です。多くの投資家は、この格言に従って買いを見送ることでしょう。
日経平均株価は短期的な調整局面ではあるものの、
中長期的には「横ばいのボックス相場」が継続
一方、日本株も冴えない動きを続けています。日経平均株価は8月17日に2万9222.77円でピークアウトして、9月5日には一時2万7511.68円まで下落する場面もありました。やはり、米国株安に連れ安している感じです。ただし、日銀はFRBと違って日本株の上昇を不快に感じることはなく、当分は大規模金融緩和政策を続ける見通しです。
ところで、次の日銀総裁は2023年4月から前倒しして3月に就任するとの観測が浮上しているようです。雨宮現副総裁か中曽前副総裁のどちらかが、次期総裁に就任すると見られています。日銀総裁の任期は5年です。さすがに、その5年間のどこかで日銀も金融正常化に軸足を移すことになるでしょう。しかし、経済情勢に配慮した格好で金融政策の軌道修正を行う可能性が高いため、日銀の総裁人事の行方に対して過度に神経質になる必要はないと考えています。
また、当分の間、外国為替市場では日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いが続くと見ています。ちなみに、円相場は9月6日の東京外国為替市場で一時1ドル=141円台と、1998年8月以来の安値を付ける場面がありました。
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円安は、我が国の外需企業の収益にポジティブに作用し、日本株の下支え要因であり続けることでしょう。よって、今後の日本株は、調整を続ける米国株の影響を色濃く受けるため引き続き冴えない動きが続くものの、日銀の金融政策と円安のサポートもあって、米国株に対して相対的に底堅い動きを続けることになると見ています。
ただし、日本株が米国株に相対的に強いと見ているとは言え、テクニカル的には日経平均株価に「5日移動平均線>25日移動平均線>75日移動平均線で、かつ3本すべてが上向き」という「5・25・75日移動平均線の強気のパーフェクトオーダー」が発生するまでは、慎重な運用スタンスを継続することをおすすめします。
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ちなみに、9月6日の日経平均株価の終値は2万7626.51円で、5日移動平均線(6日時点で2万7729.99円)と25日移動平均線(同2万8252.07円)を下回っています。短期的には「日経平均株価が5日移動平均線を終値で上回り、かつ5日移動平均線自体が上向きに転じる」までは、短期的な調整が続くと見ています。もしそれが実現した場合の戻りメドは、ひとまず25日移動平均線となります。
一方、75日移動平均線(同2万7407.70円)と100日移動平均線(同2万7231.66円)、200日移動平均線(同2万7478.00円)はどれも上回っています。これら中長期のサポートラインの上で推移しているため、現時点では中長期の弱気相場に突入したとは見ていません。あくまでも短期的な調整局面との認識です。
ただし、5・25・75日移動平均線という3本のサポートラインを明確に割り込むようだと、需給は大幅に悪化することになります。そのケースでは、最大で6月20日の直近安値2万5520.23円あたりまでの下落は覚悟しておきたいと考えています。
なお、本格的に弱気転換するのは、日経平均株価に「5・25・75日移動平均線の弱気のパーフェクトオーダー」が発生したタイミングです。それまで相場は「トレンドレス(横ばい・ボックス)」です。そのため、現在の基本戦略は「逆張り」となります。「下がれば強気、上がれば弱気」をベースに相場に臨むように心掛けましょう。
現在のような「トレンドレス」の難しい相場局面では、
無理な売買をせず、致命傷を負わないことが最優先
それにしても8月下旬以降、相場の難易度が相当上がったと感じています。現在のような「トレンドレス」局面では、無理をせず、致命傷を負わないことを最優先にしてください。
作戦は、ドラゴンクエストでお馴染みの「いのちだいじに」です。作戦「ガンガンいこうぜ」は「5・25・75日移動平均線の強気のパーフェクトオーダー」が発生するまでお待ちください。
恋愛に関して有名な言葉に「モテる男は待てる男」というものがありますが、投資に関しては「儲ける人は待てる人」だと思います。待つことも相場です。常にポジションを持っていないと落ち着かない、いわゆる「ポジポジ病」を発症させて種銭を無駄に溶かすようなことはせず、気長にトレンドの発生を待ちましょう。
「明日もまたここに市場あるべし」というウォール街の有名な相場格言を肝に銘じて、当面の相場に臨むことをおすすめします。
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