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米・ボーイングが機体の品質問題で減産に追い込まれた影響で、
三菱重工など国内の航空機関連メーカーへの警戒感が浮上
コロナ禍の収束により世界の航空需要が急速に回復し、多くの航空会社で機材の更新や事業拡大に向けた航空機確保の動きが続いていることは、以前に当コラムでも取り上げました。
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そんななか、米国の連邦航空局(FAA)は5月6日、ボーイング(BA)の787型機について、新たに調査を始めたことを発表しました。ボーイングを巡っては、2024年1月にアラスカ航空が運行する737MAX型機の非常ドアが飛行中に吹き飛び、機体側面にぽっかりと穴が開く事故が発生して以降、品質問題への対応が求められています。FAAは、すでに航空会社で使われているボーイング機に関しても対策を講じる必要があることに加え、ボーイングの生産品質が改善されるまで増産を認めないと表明しています。
ボーイングが4月24日に発表した2024年1~3月期決算は7四半期連続で最終赤字を計上しました。2024年1~3月期の小型機の納入数は、前年同期比で41%減の67機、中大型機を含めた全納入数は同36%減の83機でした。これは2021年4~6月期以来の低水準となります。
この影響から、ボーイング機の一部を組立製造している三菱重工業(7011)や川崎重工業(7012)、スバル(7270)、さらに航空機部品・素材を手掛けている企業へは、航空機減産による業績への影響が警戒されています。
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ボーイングが苦戦する一方、ブラジルのエンブラエルが救世主となり、
航空機メーカーや航空機部品メーカーに新たな需要拡大のチャンスが!
ボーイングが信頼性の毀損により危機に陥る一方、それをチャンスと捉えているのが世界3位の航空機メーカーであるブラジルのエンブラエル(ERJ)です。ジェット機市場は、過去30年近くにわたってボーイングとエアバスの2社による寡占が続いていますが、米・ウォール・ストリート・ジャーナルは5月2日、エンブラエルがそれに対抗し得る新型機の投入を検討していると報じました。
エンブラエルは、リージョナルジェット機(小型ジェット機)市場において圧倒的な世界シェアを誇っており、イタリアのITAエアウェイズ、英国のブリティッシュエアウェイズ、ドイツのルフトハンザ航空、米国のアメリカン航空(AAL)やデルタ航空(DAL)など、世界で20以上の航空会社で導入されています。日本国内でも、日本航空とフジドリームエアラインズがエンブラエルの機体を運航しています。
そんなエンブラエルは5月、ボーイングなどに対抗できる次世代リージョナルジェット機「E195-E2」を、2025年をめどに100機納入する体制を整える計画を明らかにしました。「E195-E2」はすでに中国で型式証明を取得しており、それらの機体を中心に中国やインドなどアジア事業を拡大する方針のようです。
リージョナルジェット機の市場は、拡大傾向にあります。日本航空機開発協会によると、61〜170席の小型航空機の世界市場は、2022〜2041年に1万5425機、金額ベースでは1兆3860億米ドル(約183兆円)に及ぶと予測されています。
そこで、改めて「航空機」関連銘柄に注目しました。
自動車の部品点数が2万~3万点なのに対し、航空機は部品点数が最大300万点にも上る「巨大工業製品」であり、その生産は、機体の組み立てを担当する完成機メーカーやエンジンメーカー、部品メーカー、装備品メーカー、材料メーカーなど数多くのメーカーが分業で担っています。今回は、それらのなかからエンブラエルとの取引実績を有している企業を中心に、航空機の素材や装備品の分野などで高いシェアを誇る企業を取り上げました。
【川崎重工業(7012)】
エンブラエルと、複数の機体で共同開発や分担生産を実施
川崎重工業(7012)は、鉄道車両や航空宇宙、環境、精密機械・ロボット、二輪車など、幅広く事業を展開する国内有数の重工業メーカーです。航空機関連として、ボーイングやエンブラエルと共同開発・分担生産を実施。エンブラエルに関しては、「170/175」シリーズの中央翼、主翼前縁、主翼後縁、動翼、エンジンパイロンの設計、「190/195」シリーズでは中央翼と主翼全体の設計を担当しています。株価は、4月に入って25日移動平均線を挟んだ高値圏での保ち合いが続いていしたが、5月9日に急騰。日柄調整(売買が拮抗した状態で日数が経過すること)を経てレンジを上放れしたことで、さらなる上昇に期待したいところです。
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【住友商事(8053)】
エンブラエル機では熱交換器など空調パッケージを担当
住友商事(8053)は子会社の住友精密工業が、高強度金属材料の精密加工技術に強みを持っており、航空・宇宙分野においても降着装置の設計、開発、製造などを手掛けています。エンブラエル向けでは「170/190」シリーズ向け空調パッケージを手掛けており、熱交換器や凝縮器、水分離機、水蒸発機などの設計・製造を担当しています。株価は、5月2日に4433円まで買われるなど、強い上昇トレンドを形成。ボリンジャーバンドの+3σを突破したことでいったんは過熱感が意識されやすいため、押し目狙いのスタンスで。
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【東レ(3402)】
「175シリーズ」の一次構造材向けに高品質炭素繊維を供給
東レ(3402)は、航空用途向けの高品質炭素繊維「トレカ」や、大量生産に適した低価格ラージトウ炭素繊維「ZOLTEK」を提供。エンブラエル向けでは、「175シリーズ」の一次構造材用に炭素繊維樹脂含浸シート「トレカ プリプレグ」の供給実績を有しています。株価は4月10日に758.9円まで買われましたが、200日移動平均線が上値抵抗線として意識され、その後は調整を見せています。直近では25日移動平均線に上値を抑えられていますが、そこを突破できればさらなる上昇が期待できるため、底堅さが見られる700円辺りでの押し目を狙いたいところです。
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【新明和工業(7224)】
エンブラエルやボーイング、エアバスへ製品を納入
新明和工業(7224)は、特装車やパーキングシステム、航空機、航空旅客搭乗橋などを手掛けています。航空機分野では、ボーイング向けにチタン合金およびアルミ合金製の大型金属部品を取り付けた主翼スパー、エアバス向けに主翼フィレットフェアリング(主翼全縁と胴体間の整形覆い)などを提供しており、エンブラエル向け製品の実績も有しています。株価は、4月19日につけた安値1148円をボトムに上昇トレンドを強めており、直近で200日移動平均線を突破。3月22日以来となる年初来高値の更新により、2023年9月の高値1475円に向けた上昇トレンドが期待されます。
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【大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)】
航空機エンジン向けの高品質チタンを製造
大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)は、スポンジチタンのトップメーカーで、航空機エンジン向けの重要部品用高品質チタンを提供。株価は、75日移動平均線に上値を抑えられる形で下落が続いていましたが、4月17日につけた安値2274円をボトムにリバウンドを見せており、75日移動平均線に接近しています。このまま75日移動平均線を突破できれば、上昇トレンドへの転換が期待できるため、まずは25日移動平均線近くでの押し目を狙いたいところです。
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【ジャムコ(7408)】
航空機用ギャレーやラバトリーで世界的シェアを誇る
ジャムコ(7408)は、航空機用ギャレー(厨房設備)やラバトリー(洗面所)など内装品で高いシェアを有しており、さらには航空機シートやジェットエンジン部品、炭素繊維構造部材なども手掛けています。株価は、下向きで推移する25日移動平均線に上値を抑えられる形で下落が続いています。現在は、前述したボーイングの品質問題の影響を受けている状況ですが、今後25日移動平均線を突破してくれば、短期的にリバウンドが狙える局面になりそうです。
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以上、今回は「航空機」関連銘柄を発掘しました。
なお、精密モーター大手のニデック(6594)は、2023年6月にエンブラエルと航空産業向けの電機駆動システムに関する合弁会社Nidec Aerospaceの設立に向けた契約を締結。今後、空飛ぶクルマ(eVTOL)や、それを利用したサービスを提供する計画を明らかにしています。今回、取り上げた「航空機」関連銘柄からは外れていますが、物色が波及する可能性は十分にあるので、こちらも要チェックです。
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