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日経平均株価は底を打ったが、当面は大量の「ヤレヤレ売り」が上値を圧迫! 8/14の米・消費者物価指数と8/23のFRB議長の講演が今後を占う「2大注目材料」に

2024年8月13日公開(2024年8月13日更新)
藤井 英敏
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日銀・植田総裁の「タカ派発言」から始まった日本株売りは、
内田副総裁の「ハト派発言」により買い戻される流れに

 7月31日に行われた日銀・植田総裁の記者会見の“タカ派発言”をきっかけに「円キャリートレードの巻き戻し(解消)」による日本株の急落と急激な円高が始まりましたが、8月7日に行われた日銀・内田副総裁の火消し発言でようやく収まりました

 ちなみに、米国の商品先物取引委員会(CFTC)が発表する非商業部門(投機筋)の円の売り越し幅は、7月2日時点で18万4223枚にまで積み上がっていましたが、8月6日時点には1万1354枚と1カ月で93.8%も減りました。このため「円キャリートレードの巻き戻し」はほぼ一巡したと見てよさそうです。

 実際、ドル/円相場では8月5日に1ドル=141円67銭付近まで円が急伸したものの、足元では147円付近で推移しています。

■米ドル/円チャート/日足・3カ月
米ドル/円チャート/日足・3カ月米ドル/円チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 日銀は、おそらく急激な相場変動に驚いたのでしょう。8月7日、内田副総裁は「株価や為替相場が不安定な状況で利上げは行わず、当面は現行の金融緩和を維持する」と述べて“ハト派姿勢”を慌てて打ち出し、副総裁が総裁の“タカ派発言”の火消しに走った格好となりました。この発言を受けて「当面、緩和的な金融環境が続く」との見方が広がり、日本株は買い戻されたのです。

日経平均株価は8月5日に3万1458円まで急落するも、
7日には3万5000円台、13日には3万6000円台を回復!

 記憶と記録に残る2024年8月の日経平均株価の乱高下について、改めてここで振り返っておきましょう。

 8月1日は前日比975.49円安、2日は同2216.63円安、そして5日は下落幅で歴代1位、下落率では歴代2位となる前営業日比4451.28円安、12.40%の下落を記録しました。しかし、6日は一転して上昇し、上昇幅で歴代1位の前日比3217.04円高、上昇率で歴代4位の同10.23%でした。

■日経平均株価チャート/15分足・10日
日経平均株価チャート/15分足・10日日経平均株価チャート/15分足・10日(出典:SBI証券公式サイト)
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 8月6日の急反発に関しては、1~5日の3営業日で7643.40円もの急落となったことで、売り方の利益確定の買戻しやバーゲンハンターのリバウンド狙いの買いが殺到した結果です。

 そして、翌8月7日に冒頭で触れた内田副総裁の火消し発言が市場に伝わり、前日比414.16円高と続伸しました。この日の取引時間中の高値は3万5849.77円と、5日につけた年初来安値3万1156.12円から4693.65円も戻す場面が見られました。

 8月8日は前日比258.47円安と3日ぶりに反落したものの、9日は前日比193.85円高の3万5025.00円と、再び3万5000円台を回復して先週の取引を終了。そして、週明け8月12日は大幅続伸し、同1207.51円高の3万6232.51円と、3万6000円の大台を回復しました。

 この日経平均株価の堅調さは、内田副総裁の火消し発言の効果が発揮されたことが主因と考えています。なお、この火消し発言を受け、市場では「少なくとも年内の再利上げは難しい」との見方が強まっているようです。

 ちなみに、8月8日に日本経済新聞が「日本株、国内年金の買いか 7日のTOPIX先物手口で思惑」と題した記事を配信しました。この記事によれば「野村証券によると6日時点で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株式のウエートは22%台半ばと、基本ポートフォリオであるウエート(25%)を3ポイント程度下回る。仮に基本ポートフォリオにウエートを戻す場合、国内債券など他の金融資産の価格が一定であれば、4兆〜5兆円の国内株式の買いが必要になる計算」とのことです。

 この記事が伝わったことで、下値ではGPIFの買いが見込めるとの期待が高まったことも、需給面での買い安心材料となりました。

日経平均株価は3万1156円が当面の底値と見られるが、
200日移動平均線を超えない限りは中長期の調整局面が継続

 8月6日の急騰に加え、7日に内田副総裁の火消し発言が飛び出したことで、日経平均株価については、5日が「セリングクライマックス」であり、この日につけた年初来安値の3万1156.12円が底値になったと見ています。

 ただし、200日移動平均線(13日時点で3万6932.561円)を下回っている限り、中長期の調整局面は続くとも考えます。

■日経平均株価チャート/日足・3カ月
日経平均株価チャート/日足・3カ月日経平均株価チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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「下がるから売る、売るから下がる」という負の循環は終了したが、
当面は評価損を抱えた投資家から大量の「ヤレヤレ売り」が出る見通し

 ちなみに、8月5日時点の信用買い残は、4週ぶりに減少したとはいえ4兆8720億円と依然として高水準です。また、2日時点の信用評価損益率はマイナス13.69%と、前週からマイナス幅が4.33ポイント拡大し、2022年3月11日時点のマイナス15.66%以来、約2年5カ月ぶりの水準に悪化したと試算されています。

 おそらく、相場急落時に、追証絡みの売りや強制決済の売りが相当量出たでことしょうし、それは8月8日まで週を通じて断続的に出たと見られます。

 もちろん、8月6日以降の相場が戻り歩調を辿ったことからわかるように、その手の売りはほぼ一巡したと見てよいでしょう。つまり「下がるから売る、売るから下がる」という負の循環はいったん終了したと考えられます。

 ただし、信用買い方の手の内は大幅に悪化しています。安値での投げ売りは一巡したと見られますが、相場が落ち着き、戻りを試す過程では大量の「ヤレヤレ売り(戻り売り。評価損を抱えて相場の回復を待っている投資家が、実際に相場が回復してきたときに売ること)」が出てくる見通しです。残念ながら、信用買い残は高水準なので、その整理には時間を要すると考えています。

 このため個別銘柄に関して、信用買い残が高水準で信用倍率が高く、チャートが悪化(株価が25日移動平均線を下回り、かつ25日移動平均線が下向きなど)している銘柄は、信用買い方からの戻り売りの圧力が強いため、アンタッチャブルです。

 その一方で、日銀の政策スタンスが「マーケットフレンドリー」に変化したため、好業績で信用倍率が低く、チャートが良好(株価が25日移動平均線を上回り、かつ25日移動平均線が上向きなど)な銘柄や、中間配当狙いでのバリュー系の高配当銘柄は拾っていきたい局面に転換したと考えています。

日本市場では、当面の下値不安は大幅に後退したものの、
「慌てて買わないと取り残される」というリスクは低い

 今後の日本株全体に関しては、日銀リスクが大幅に低下したため、FRBの金融政策の行方と、それを受けた米国株の動向がカギを握ると見ています。

 今月に関しては、8月14日に発表される7月の米・消費者物価指数と、22~24日に開催される経済シンポジウム「ジャクソンホール会議(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)」が2大注目材料です。「ジャクソンホール会議」では、パウエルFRB議長が23日に講演する予定となっています。

 この2大イベントの内容次第で、米国のインフレ鎮静化の有無や、今後の利下げの幅や回数などがある程度見えてくるはずです。

 現時点におけるメインシナリオは「米国のインフレが順調に鎮静化していることが確認され、FRBは9月17~18日に開催するFOMCで現状5.25~5.50%の政策金利を0.25ポイント引き下げる」というものです。

 9月のFOMCで利下げが見送られない限り、9月の米国の株式市場は波乱なく推移すると見ています。その一方で、今月の2大イベントを見極めたい投資家も多いため、目先の米国株の上値は重そうです。

 よって、日本株全体に関しても、下値不安は大幅に後退したものの、「慌てて買わないと取り残される」というリスクは低いと見ています。結論として、狙っている銘柄の押し目をコツコツ拾う戦略をおすすめします。
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