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米国の株式市場は、8月14日発表の米・CPIと
8月15日発表の米・小売売上高によりリバウンド局面に!
日米の株式市場は8月初旬に底打ちし、リバウンド局面に入っています。
リバウンド発生の背景ですが、米国については「景気減速懸念の後退(ソフトランディングへの期待の高まり)」「インフレ鈍化」「堅調な個人消費」です。一方、日本に関しては「日銀のハト派への転換」「円キャリートレードの巻き戻しが一巡したことによる円高の一服」「海外投資家の日本株買いへの転換」「(下値での)GPIF(年金基金)による買い観測」「事業会社の自社株買い」、そして「信用買い残の急減による需給の改善」です。
8月2日に公表された7月の米・雇用統計では、「サーム・ルール」の条件を満たして景気後退入りサインが点灯しました。「サーム・ルール」とは「直近3カ月間の平均失業率が過去12カ月の最低値を0.5ポイント上回ると景気後退となる」という失業率と不況の関係を示す経験則です。
「サーム・ルール」の点灯を受け、市場ではFRBが次回9月のFOMC(9月17~18日開催)で「0.5%の大幅利下げ」に踏み切るとの見方が強まり、米国の株式相場が急落しました。具体的には、米・雇用統計の翌営業日にあたる8月5日、NYダウは3万9056.19ドル、ナスダック総合株価指数は1万6453.46ポイントと、どちらも直近の安値をつけました。
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その後、8月14日に発表された7月の米・CPIは、前年比2.9%上昇と6月の3.0%から鈍化。前年比上昇率としては2021年3月以来、はじめて3%を下回りました。また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは、前年比では3.2%上昇と伸びが前月の3.3%から縮小し、2021年4月以来の低水準でした。
前述した通り、8月2日の雇用統計発表直後は、冷え込み過ぎた景気への対応として9月のFOMCでは通常の2倍幅の「0.5%の大幅利下げ」に踏み切るとの予想が優勢でしたが、この7月の米・CPIで景気減速局面でのインフレ再加速が回避できていることが明らかになったため、「0.25%の利下げ」が妥当との見方が再び優勢になりました。雇用統計発表後に過度の景気減速に怯えて動揺していた市場が、米・CPIの結果を見て「インフレは抑制されており、かつ景気もそこまで悪化していない」と考え直したからです。つまり、冷静さを取り戻したと言えるでしょう。
また、8月15日発表の7月の米・小売売上高は、前月比で1.0%増加し、事前の市場予想の0.3%増を大きく上回りました。市場では、GDPの約7割を占める個人消費について、高い金利水準が続くなかで減速懸念が燻っていました。しかしながら、7月の小売売上高が市場予想から大幅に上振れたことで、それは杞憂であるとの見方が強まりました。
「インフレ鈍化」「景気減速懸念の後退」「堅調な個人消費」という3つの好材料が後押しする格好で、8月19日のNYダウは5日続伸し、前週末比236.77ドル(0.58%)高の4万896.53ドルと、7月17日以来の高値に。一方、ナスダック総合株価指数は8日続伸し、同245.05ポイント(1.39%)高の1万7876.77ポイントと、7月23日以来の高値となりました。
日経平均株価は、日銀が「ハト派へ転換」したことが
ポジティブ材料となって急激なリバウンドを見せる
一方、日本では、7月31日に行われた日銀の植田総裁の記者会見における「タカ派発言」をきっかけに「円キャリートレードの巻き戻し(解消)」が加速し、「急激な円高と株安」が発生しました。
しかしながら、この急激な市場変動に驚いたため、8月7日に日銀の内田副総裁は「株価や為替相場が不安定な状況で利上げは行わず、当面は現行の金融緩和を維持する」と述べるなど、慌てて総裁発言の火消しに走り、「ハト派への転換」を明確に打ち出してきました。日銀が市場に配慮する方向に軌道修正したことは、ポジティブ材料でしたので、市場はこれを好感しました。
ただし、植田総裁のタカ派発言をきっかけにした「円キャリートレードの巻き戻し」は、一巡こそしたものの、足元でも続いています。と言うのは、米・商品先物取引委員会(CFTC)が8月16日に発表した投機筋(非商業部門)の持ち高動向によると、投機筋は13日時点で円を2万3104枚買い越しているからです。投機筋が買い越しに転じるのは2021年3月9日以来、およそ3年5カ月ぶりのことです。
なお、ドル/円相場は8月5日に1ドル=141円67銭付近まで円が急伸したものの、足元では145~147円台での推移となっています。この円高一服は、わが国の輸出関連企業の収益への追い風です。
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8月5日の日本株の急落で、積み上がっていた信用買い残の
整理が一気に進んだことが、需給面のポジティブ材料に!
日経平均株価については、足元で乱高下しています、投資部門別株式売買動向によると、7月最終週(7月29日~8月2日)には海外投資家が5524億円の売り越しでしたが、8月第1週(8月5~9日)は4週ぶりに海外投資家が買い越しに転じ、買い越し額は4953億円でした。また、GPIFの売買動向を映すとされる信託銀行も8月第1週は3171億円の買い越しで、買い越しは6週連続でした。そして、一般上場企業の自社株買いを反映する事業法人は6週連続で買い越し、買い越し額は5060億円でした。
つまり、海外勢は安値で買いを入れる「バーゲンハンティング」に動き、GPIFなどの年金はリバランス目的で買いを入れ、事業法人は積極的に自社株買いを行ったようです。
さらに、8月5日までの相場急落を受けて、信用買い残の整理が一気に進みました。9日時点の信用買い残は、2日時点と比べて9086億円(19%)減の3兆9634億円で、前週比の減少率は東日本大震災直後の2011年3月以来、約13年ぶりの大きさでした。想定を超える規模とスピードの相場急落(暴落)で、大量の追証絡みの売りが出たことが主な要因です。
将来の売り予約である信用買い残の急減は、需給面のポジティブ材料です。私は、高水準に積み上がっていた信用買い残の整理には時間を要すると考えていましたが、これは私の想定をはるかに超えた減り方でした。それほど、8月5日までの相場急落が激しく、それに耐えることができなくなった(買いポジションを維持することができなくなった)投資家が多かったのでしょう。
日経平均株価のメインシナリオは「25日移動平均線を中心とした
±2500円程度のワイドなレンジでのボックス相場の形成」
日経平均株価については、8月5日が「セリングクライマックス」であり、この日につけた年初来安値の3万1156.12円が当面の底値になったと見ています。また、16日に200日移動平均線を終値で上回ったため、200日移動平均線が「レジサポ転換(レジスタンスライン=上値抵抗線からサポートライン=下値支持線への転換)」をしたと考えられます。
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ただし、ボラティリティが高いため、200日移動平均線が強力なサポートになることを前提にした運用はリスクが大きいと見ています。このため「短期線の25日移動平均線を中心に、±2500円程度のワイドなレンジのボックス相場の形成」をメインシナリオにしておきます。
個別銘柄に関しては、引き続き、好業績で信用倍率が低く、チャートが良好(株価が25日移動平均線を上回り、かつ25日移動平均線が上向きなど)な銘柄や、中間配当狙いのバリュー系高配当銘柄を拾っていくべきだと考えています。
相場全体に関して、8月5日に大底を打った可能性が非常に高いと見ているため、下値に対して過度に神経質になる局面ではなくなったと考えます。しかしながら、いきなりアクセル全開(ガンガン強気になって上値を買い進む)ということはおすすめしません。「押し目を丁寧に拾う」「株式組み入れ比率を徐々に高める」など、少しずつリスクを取る戦略で相場に臨むことを推奨します。
買い方にとっての最大の危機(暴落)は去った可能性が高いため、ここからはあなたなりにリスクをコントロールしたうえで、残存者メリットを享受していくことを心掛けてください。
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