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日本株は「米国の関税引き上げ懸念」と「円高」で上値が重い展開が継続! 年末にかけて“節税売り”が出やすい「チャートが悪化+信用倍率が高い」小型株には要注意

2024年12月3日公開(2024年12月3日更新)
藤井 英敏
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NYダウやナスダックが相次いで史上最高値を更新する一方、
日経平均株価はさえない値動きのボックス相場が継続中

 相変わらず「上昇トレンドの米国株、ボックス相場の日本株」という構図が続いています。

 米国株を見ると、12月2日のNYダウは反落し、前週末比128.65ドル(0.29%)安の4万4782.00ドルでした。一方、ナスダック総合株価指数は続伸し、同185.78ポイント(0.97%)高の1万9403.95ポイントと、11月11日以来となる最高値を更新。そしてS&P500種株価指数も続伸し、同14.77ポイント(0.24%)高の6047.15ポイントと連日で最高値を更新しました。

■NYダウチャート/日足・3カ月
NYダウチャート/日足・3カ月NYダウチャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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■ナスダック総合株価指数チャート/日足・3カ月
ナスダック総合株価指数チャート/日足・3カ月ナスダック総合株価指数チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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■S&P500指数チャート/日足・3カ月
S&P500指数チャート/日足・3カ月S&P500指数チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 12月2日にNYダウは下落しましたが、前週末11月29日に最高値を更新した反動で利食い売りがやや優勢になっただけのことです。ちなみに、NYダウは11月に終値ベースで3147.19ドル(7.54%)上昇し、月間の上昇幅は2022年10月以来の大きさを記録しています。

 一方、12月2日の日経平均株価は、前週末比304.99円(0.80%)高の3万8513.02円でしたが、9時45分には3万7958.55円と、心理的節目の3万8000円大台を割り込む場面がありました。しかしながら、後場に入って厚生労働省が、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の来年度からの運用計画として、実質的な運用利回りの目標を現状の「1.7%」から0.2ポイント高い「1.9%」とする案を示したと伝わりました。これを受けて市場では「パフォーマンス向上のため、日本株の株式の組み入れ比率が高まるのではないか」との期待から買いが優勢になり、14時57分には3万8552.41円の高値をつけました。

■日経平均株価チャート/日足・3カ月
日経平均株価チャート/日足・3カ月日経平均株価チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 その流れを受けて翌12月3日の日経平均株価は上昇し、前日比735.84円(1.91%)高の3万9248.86円で終えました。しかしながら、7月11日につけた年初来高値4万2426.77円には遠く及びません。

「関税引き上げ」を交渉のカードにするトランプ次期大統領が
日本をターゲットにするリスクが日本株の上値を圧迫!

 最高値更新を続ける米国の主要株価指数と対照的に、日経平均株価が上値の重い展開を続ける「トランプ次期米大統領が日本製品の関税を引き上げる可能性があること」と「日米金利差縮小による円高」だと見ています。

 まず「関税」についてですが、トランプ次期米大統領は11月25日、2025年1月20日の大統領就任日に、大統領令としてメキシコ、カナダの両国からのすべての製品に25%の関税を課すために必要な文書に署名する意向を明らかにしました。また同日、中国からの製品に、現在の関税に加えて10%の追加関税を課す方針を表明しました。さらに11月30日には、中国やロシア、インドなどのBRICS加盟国に対し、国際貿易で基軸通貨となっている米ドルの地位を揺るがすような行動に出れば100%の関税を課すと表明しました。

 このようにトランプ氏は、関税を交渉のカードにして他国に対応を迫る姿勢を鮮明にしています。そして、トランプ氏の関税を武器にした交渉先として、日本もいつターゲットにされるかわからないため、日本株の上値は重いのです。とりわけ、自動車業界が狙い撃ちされるのではないかとの危機感が高まっています。

12月のFOMCで「0.25%の利下げ」が決まる可能性が高まり、
円高ドル安が進んだことが日経平均株価の逆風に!

「円高」については、日米の金利差縮小を意識した円買い圧力が強まっていることが背景にあります。

■米ドル/円チャート/日足・3カ月
米ドル/円チャート/日足・3カ月米ドル/円チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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 日本では、日銀の植田和男総裁が11月28日、「(追加利上げの時期について)データが想定通りに推移しているという意味では近づいている」「インフレ率が2%を超え始めているときに一段の円安になれば、それは中央銀行にとってはリスクが大きい動きとして、場合によっては対応しないといけなくなる」などと発言しました。このため市場は、次回12月18~19日や2025年1月23~24日に開催される日銀金融政策決定会合での利上げを織り込み始めているのです。

 一方、米国では、FRBのウォラー理事が12月2日の講演で、12月17~18日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)での金融政策決定に関し、「現時点では利下げ支持に傾いている」と語っています。この発言を受け、FRBが12月のFOMCで0.25%の利下げを決めると見る投資家が増加しています。

 その結果、外国為替市場では、日米金利差縮小を意識した円買い・ドル売り圧力が強まっているのです。円高は、日本の輸出企業にとっては収益悪化材料のひとつなので、日本株の上値圧迫材料です。

円高がメリットになる金融セクターなどに資金が流入する一方、
年末にかけて小型株の「節税売り」が出るリスクには注意!

 ただし、当面の東京株式市場では、円金利や円相場の上昇がメリットになる金融セクターやキャッシュリッチ企業、そして円高メリット企業には、資金流入が見込めると見ています。

 また、12月2日時点での日経平均株価のPBR(純資産倍率、連結決算ベース)は1.42倍、PER(株価収益率、連結決算ベース)は15.69倍です。超割安とは言いませんが、決して割高な水準ではないと考えています。このため、世界同時株安を引き起こすような想定外の悪材料が飛び出さない限り、日経平均株価の下値は限定的とも考えます。

 そうは言っても、市場関係者へのヒアリングベースでは、信用取引を積極的に活用し、小型株を主戦場にしている個人投資家は、7月中旬から8月初旬にかけての相場急落の影響もあり、現時点でも手の内が相当悪化したままのようです。このため、例年よりも前倒しで「節税売り(損出し売り)」が出てくることが懸念されます。

 よって、個人投資家の関与率が高い小型株のうち、「チャートが悪化している銘柄(株価が25日移動平均線を下回っているなど)」や「信用需給の悪い銘柄(信用買い残が積み上がり、信用倍率が高い)」に関しては、早め早めに処分しておくことを強くおすすめします。

 逆に、国内外の機関投資家の押し目買いが期待できる低PER・低PBR・高配当利回り・キャッシュリッチのバリュー系大型株に資金を寄せておくことを強くおすすめしておきます。
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