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米国では12月14日、ファイザー(PFE)とビオンテック(BNTX)が共同開発した新型コロナウイルス向けワクチンの接種が、感染や重症化のリスクが高い医療関係者や介護施設入所者らを優先する形で始まりました。また、米国のモデルナ(MRNA)製のワクチンについても、早晩に緊急使用許可が出ると見られています。
このような状況を受け、市場ではワクチンの早期普及による経済正常化への期待が高まるはずでした。
そんな中、ニューヨーク州知事のクオモ氏は12月14日、「ニューヨーク市のロックダウンは1カ月以内に起こり得る」とコメントしました。この知事の発言を受け、ニューヨーク市長のデブラシオは14日、「全面的な封鎖の可能性に備えるべきだと知事が言っており、私はそれに同意する」と発言しました。
この両発言が市場に伝わると、経済の早期正常化への期待が急速に萎んでしまいました。ちなみに、ニューヨーク市は12月14日からレストランの屋内飲食を再び禁止しています。
ドイツでは12月16日から全土でロックダウンに突入するなど、
コロナ対策として世界中で「経済活動」の制限が進む状況に!
一方、欧州では、ドイツのメルケル首相が12月13日、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるべく、各州政府との合意に基づき、全土で16日から厳格なロックダウンに入ると発表しました。12月16日から来年1月10日まで、生活必需品を扱う店などを除いてすべての商店やサービスは閉鎖され、学校も休校となります。
同様に、英国ではハンコック保健相が12月14日、新型コロナウイルスの感染者が急増しているロンドンでパブやレストランにおける店内での飲食を禁止するなどの厳しい抑止策を、12月16日から始めると発表しました。
さらに日本でも、菅義偉首相が12月14日、観光支援事業「Go To トラベル」について、12月28日から来年1月11日まで、全国一斉に利用を一時停止すると表明しました。菅首相は「年末年始にかけて、これ以上の感染拡大を食い止め、医療機関の負担を軽減し、皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるよう最大限の対策を講じる」と述べました。
そして、東京都は飲食店などを対象にした22時までの時短営業の要請を、2021年1月11日まで延長すると発表しました。
このように、日米欧の政府および地方自治体が、新型コロナウイルス感染拡大の抑止政策として、再び「経済活動の制限」に舵を切りました。
ただし、米国でワクチン接種が始まっていることなどから、今年の春のような混乱や動揺は生じないとは思います。しかしながら、この「経済活動の制限」は、世界の株価指数の上値を圧迫することになりそうです。
株価が足元で下落しても、それは11月以降の急騰の反動であり、
「中長期の上昇トレンドの中の短期の調整」に過ぎない
米国を始めとする世界の株価指数は、11月に行われた米国の大統領選挙の投開票日前後を起点に、急騰していました。このため、テクニカル的には短期的に過熱しています。
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よって、ここから当面の間、時間および値幅の調整があったとしても、それは「健全な調整」と見ておけばいいでしょう。つまり、その調整は「中長期の上昇トレンドの中での短期の調整」との認識です。
「中長期の上昇トレンド」が継続するとみる根拠は、「主要国政府が積極的な財政支出を続け、かつ、主要国中央銀行が超絶金融緩和を継続し、さらに強化する構えを崩していないこと」です。
「積極的な財政支出」と「超絶金融緩和の継続・強化」により
「世界的なカネ余り」が継続し、株式市場にも資金が流入!
「積極的な財政支出」に関して、米国については12月14日、「総額1兆4000億ドルの2021年度予算案を巡り、与野党が詰めの協議を行っており、細かい論点を数点残すのみで合意間近だ」と伝わっています。新型コロナ救済法案は、2021年度予算案に付帯させられる見通しです。
米国の議会の超党派グループが提案した9080億ドルの新型コロナ救済法案は、2つに分割される見込みだということです。救済法案の規模は当初の2兆ドル規模から大幅に縮小されたものの、取り敢えず「ゼロ回答」よりも「部分合意」での着地のほうが市場にとってはポジティブ材料になるはずです。
日本でも、政府は12月8日の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加経済対策を決定しました。事業規模は73.6兆円で、このうち財政支出が40兆円という「大規模経済対策」です。
この経済対策では、「地球温暖化対策(脱炭素)」と「デジタル改革」が重点政策に据えられています。また「Go Toトラベル」延長のほか、激甚化する自然災害への対策および予防保全に向けたインフラ老朽化対策などを進める「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策(仮称)」も盛り込まれました。この予算執行が、新型コロナウイルスの感染拡大で痛む我が国の経済を力強く支えることでしょう。
一方、「超絶金融緩和の継続・強化」に関しては、まずECBが12月10日、予想通り追加金融緩和を決めました。「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を、現状の1兆3500億ユーロから1兆8500億ユーロへと5000億ユーロ増やし、購入期限を2021年6月末から2022年3月末に延長しました。また、TLTRO(ECBが実施する貸出条件付きの流動性供給オペ)の期限を2022年6月末まで1年延長。さらに、政策金利は現状の水準を維持しました。
そして、FRBは12月15日~16日、日銀は12月17日〜18日にそれぞれ会合を開き、新たな金融緩和策を議論する予定です。
FRBに関しては、量的緩和の購入金額の引き上げや、国債の年限の長期化などに踏み切る可能性が報じられていますが、現時点では追加の緩和に動くかは「五分五分」のようです。
一方、日銀では、総枠140兆円規模の資金繰り支援措置の期限を、2021年3月末から2021年9月末まで半年程度延長するか否かが議論される見通しです。
いずれにせよ各国中央銀行は、金融政策によって景気・経済の下支えに全力を尽くし続ける姿勢を崩していません。その結果「世界的なカネ余り」は続き、その一部が継続的に株式市場に流入を続けることでしょう。
12月18日の「クアドルプル・ウィッチング」の後は、
個人投資家好みの「直近IPO株」や「テーマ株」「低位材料株」に注目!
今後のスケジュールとしては、米国では12月18日が「クアドルプル・ウィッチング(「株式指数先物」「株式指数オプション」「ストックオプション」「個別銘柄のオプション」の4つの取引が同時に期限を迎える日)」です。よって、12月21日以降、海外勢の多くは本格的にクリスマス休暇入りします。また、国内機関投資家も、例年通りに年末年始の休暇ムードに入る見通しです。
このため、以前に当コラムでも述べましたが、12月21日以降の東京株式市場は「個人投資家の個人投資家による個人投資家のための相場」になることでしょう。
【※以前の記事はこちら!】
⇒日経平均株価は、歴史的な上昇トレンドが継続中で、明確に「調整入り」するまで“弱気”になる必要なし! ただし、SQ通過後は「大型株」より「中小型株」が狙い目
物色傾向としては、主力の大型株は見送られ、個人投資家好みの直近IPO株、新興市場を中心とした小型株(特に「脱炭素」「デジタル」関連のテーマ株)、そして、仕手性の強い低位材料株などが賑わうことになると見ています。
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