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「コインベース」は暗号資産に関わる事業を幅広く展開!
2020年は売上高が前年比+139%と業績も右肩上がり
米国で、暗号資産取引所のコインベース(ティッカーシンボル:COIN)が4月14日、ダイレクト・リスティングによりナスダックにIPO(新規株式公開)します。時価総額は、おそらく900億ドルを超えると思われます。なお、ダイレクト・リスティングとは、通常のIPOのように証券会社による引き受けを行わず、いきなり取引を開始することを指します。
コインベースは、もともと暗号資産(仮想通貨)を保管するウォレット企業としてスタートしました。現在は、ビットコインやイーサリアムのようなメジャーな暗号資産に加えて、価値の変動が少ないステーブルコインや起業家の資金調達に利用されるセキュリティートークンなど、90種類にのぼる暗号資産を扱っています。
コインベースは、単なるウォレット・サービスだけでなく、仮想通貨取引所の側面も兼ね揃えており、さらに機関投資家のために仮想通貨のカストディー(保管・管理)業務やマーチャンツのためのコマース・サービスも行っています。
2021年第1四半期末の時点で、コインベースの総口座数は5600万口座、月次稼働口座数は610万口座でした。預かり資産は2230億ドルで、これは世界の全仮想通貨の11.3%に相当します。このうち、機関投資家のために預かっている資産は1220億ドルでした。
なお、2021年の第1四半期の売上高は前年同期比+900%超の18億ドル、純利益は7.3億~8億ドル、修正EBTDAは11億ドルと好調。2020年通年の売上高は前年比+139%の13億ドルだったので、業績は右肩上がりで伸びています。
「コインベース」は、セキュリティ性の高さや
サービスの使いやすさへの評価が強味
コインベースの強味は、個人投資家や機関投資家、そして銀行監督当局からの信頼性が高い点です。
コインベースはセキュリティ性の高さに定評があり、これまでに一回もハッキングされてないことで有名です。コインベースが顧客のために預かっている資産の99%は、インターネットから切り離された状態、いわゆるコールドストレージに保管されており、絶え間なく行われている取引のためにホットストレージに当座保管している資産は1%に過ぎません。また、この1%のホットストレージ部分に関しても、保険会社に盗難保険をかけてあります。
コインベースでは、コールドストレージへの資産の出納に際してコンセンサス・メカニズムを採用しており、1人や2人のハッカーが仮に侵入したとしても、セキュリティが破られないように設計されています。なお、コインベースは、コンプライアンスの面でも監督当局から高い評価を得ています。
また、コインベースのサービスはシンプルで使いやすいと個人投資家に評価されています。個人投資家は、仮想通貨を保有するためだけにコインベースを使っている人ばかりでなく、送金・受取のために利用している人もいますし、仮想通貨を保有し続けることでステーキングと呼ばれる報酬を稼いでいる人もいます。また、ある種のリワードデビットカードとして機能する「コインベース・デビットカード」も発行しています。
さらに、現在7000社の機関投資家がコインベースを利用しています。なお、仮想通貨を使って新しいサービスを創造しているソフトウェアデベロッパーたちが、コインベースのエコシステム・パートナーとなっています。仮想通貨で商品やサービスの対価を受け取る一般企業や商店も、エコシステム・パートナーです。
トランザクション・フィーへの依存度が高いので、
ビットコインETFが承認された場合の売上急減リスクが課題
現在、コインベースの売上高の大半は、トランザクション売上高となっています。これは、顧客が仮想通貨を売り買いしたときに課すフィーで、個人投資家の場合は平均で約定金額の1.4%、機関投資家の場合は平均でして0.1%を請求しています。
これに加え、2018年からは、カストディー業務を始めています。カストディー業務は、有価証券の保管・管理を行う業務で、サブスクリプション売上高に計上されます。サブスクリプション売上高は、預かった資産に応じて課金し、2020年のサブスクリプション売上高は4500万ドルでした。
コインベースの問題点は、トランザクション・フィーへの依存度が高過ぎる点だと思います。将来、他社の出すビットコインETFが承認された場合、そのETFはニューヨーク証券取引所などの株式市場に上場され、タダ同然の安い手数料で取引可能になると思われます。その場合、現在コインベースが個人投資家に課している1.4%のフィーは非常に割高となり、フィーの料率を下げざるを得ないと思います。
また、ビットコインETFは盗難の心配がありませんし、普通の証券口座で売買できる利便性があるため、わざわざコインベースに口座を開設する必要すらなくなります。
現在、すでにフィデリティが「ザ・ワイズ・オリジン・ビットコインETF」というETFを米国証券取引委員会(SEC)に対して申請しています。これまでに申請されたビットコインETFはすべて却下ないし保留されているので、このETFが承認される保証はありません。しかし、もし承認された場合、コインベースを巡る経営環境は激変すると考えた方が良いでしょう。
【今週のまとめ】
「コインベース」は大注目の大型IPOだが、
ビットコインETFなどのリスクには注意!
コインベースは時価総額の大きい大型IPOであることに加え、すでに黒字化しており、顧客や金融当局から信頼されている、ピカピカの会社です。問題点としては、売上高の大半をトランザクション・フィーに頼っており、値引き圧力がかかると利益が圧迫される点にあります。
また、コインベースに対する競争は、ライバルの仮想通貨取引所から来るのではなく、ビットコインETFになるのではないかと思われます。もしビットコインETFが承認された場合、コインベースよりも安く、手軽にビットコインをトレードする機会が出来るのでコインベースにとって脅威となるでしょう。
コインベース株の購入を検討している人は、その辺りもきちんと検討しておきましょう。
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