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日経平均株価は、9月27日の3万414.61円を“戻り高値”に失速しており、9月27日~10月5日まで7日続落中です。10月5日の日経平均株価は前日比622.77円(2.19%)安の2万7822.12円で取引を終え、7営業日で終値ベースでは2426.69円(8.02%)も下落しました。
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岸田新首相が誕生するも「ご祝儀買い」はなし!
「金融所得課税の見直し」などに対する警戒感が高まる
9月29日投開票の自民党総裁選で岸田文雄氏が第27代総裁に選出されましたが、それ以降、日経平均株価は1日も上昇していません。その岸田総裁は、10月4日の臨時国会での首相指名選挙を経て、新内閣を発足させました。しかし、4日の日経平均株価は前週末比326.18円安の2万8444.89円と、大幅下落しました。現状は「岸田ショック」の様相を呈していると言えるでしょう。
新総裁と新首相が誕生したわけですから、東京株式市場では「ご祝儀買い」が入って盛り上がっても良さそうですが、今回はそのようなムードにはまったくなっていません。
日経平均株価は、9月3日の菅首相の退陣報道をきっかけに急上昇を開始し、9月14日に3万795.78円の年初来高値をつけました。しかし、9月29日の自民党総裁選の投開票を直前に控えた9月27日で「当面の材料出尽くし」となりました。その後、伝わってきた岸田首相の「政策(特に金融所得課税の見直し)」と「党執行部と閣僚の人事」に対して、市場は大いに失望した格好となっています。
岸田首相は10月4日の記者会見で、株式譲渡益や配当金などを対象とした金融所得課税の見直しを検討する意向を示しました。「新しい資本主義実現会議」を新設し、一律20%(所得税15%、住民税5%)の税率を引き上げて税収を増やし、中間層や低所得者に配分することなどの議論を進めるそうです。具体的な方向性は、衆院選後に本格化する2022年度税制改正などで議論する見通しとなっています。
所得1億円を境に所得税の負担率が低くなる「1億円の壁」の是正を目指すようですが、「これが投資マインドを著しく冷やしかねない」との警戒感が市場では強まっています。これこそ「ご祝儀ムード」が盛り上がらない主因でしょう。
「長期金利の上昇」「輸送運賃高騰」「原油先物高」による
米国株の不調も、日経平均株価にとってネガティブ要因に
ただ、足元の日経平均株価が冴えない動きとなっている理由は、国内政治だけはありません。米国株が不安定な動きを続けていることや、中国の不動産業界の不透明感が燻っていることも大きく影響しています。
まず、米国の株式市場ですが、10月4日のNYダウは反落し、前週末比323.54ドル(0.94%)安の3万4002.92ドル。ナスダック総合株価指数も大幅反落し、同311.212ポイント(2.14%)安の1万4255.485ポイントでした。
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10月4日は、米国の長期金利(米国10年債利回り)が朝方に一時1.5%台に上昇しました。9月22日にFOMCの結果が発表されて以降、米国10年債利回りは上昇基調となっており、9月28日には一時1.56%と3カ月ぶりの高水準を付ける場面がありました。これが、ハイテク株の売り要因となっています。
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米国の長期金利が上昇している主因は、インフレ懸念の高まりです。供給網(サプライチェーン)の混乱や人件費の増加とともに、原油高などの原料費高が物価を押し上げるとの見方が強まっているのです。
10月4日のWTI期近の11月物は、前週末比1.74ドル(2.3%)高の1バレル77.62ドルで取引を終えましたが、一時は78.38ドルと2014年11月以来、約7年ぶりの高値をつけました。主要産油国で構成されるOPECプラスが4日、協調減産を毎月、日量40万バレルずつ縮小する従来方針を11月も維持すると確認したことが、原油先物の買い材料になりました。
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また、海上コンテナ輸送が需要に追いつかず、運賃の高騰を招いているだけでなく、必要な商品を期日までに調達できない企業も出ています。この状況を改善するには、新造船を増やすのみならず、陸上を含めたサプライチェーン全体で人手を確保しなければならないのですが、現状では現場で働く人は簡単に増やせず、改善の見通しは立っていません。このため今年のクリスマス商戦では、海上輸送の遅れにより、小売を中心にした米国企業の業績の下振れが危惧されます。
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こうした「長期金利の上昇」「輸送運賃高騰の継続」「原油先物高」を受け、米国の株式市場では、PERなどで相対的に割高感が意識されやすいハイテク株などのグロース株が売られやすい状況が今後も続く見通しです。これは、電機・ハイテク株指数の性格が強い日経平均株価の上値圧迫・押し下げ要因と考えられます。
また、輸送運賃や原材料価格の上昇は、米国の製造業の収益圧迫要因でもあります。こうなると、「米国の製造業の利益成長の鈍化⇒米国株のバリュエーション低下⇒米国株の下落」という最悪のシナリオも想定しておく必要があるでしょう。
中国・恒大集団の債務問題など中国不動産業界への不安が
香港や上海の株式市場を動揺させ続ける可能性は高い
一方、中国に関しては、10月4日の香港ハンセン指数が、前営業日比539.27ポイント(2.19%)安の2万4036.37ポイントと年初来安値を更新しました。これは昨年10月以来の安値水準です。
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10月4日は、総額33兆円の巨額負債を抱えた中国の不動産大手、恒大集団と傘下の恒大物業集団が売買停止となったこともあり、恒大集団の債務問題への警戒感が強まって、リスク回避姿勢を強めた投資家の売りが膨らんだようです。
恒大集団は9月23日と29日に米ドル債の利払いを見送り、30日間の猶予期間に入っています。また、米国のブルームバーグ通信によると、恒大集団はジャンボ・フォーチュン・エンタープライゼズという会社のドル建て社債に保証をつけており、10月4日に事実上の償還期限を迎えたということです。
このような状況下、10月2日に産経新聞が「中国の不動産業界では同社(※恒大集団)以外にも資金繰りに窮する大手企業の存在が指摘される。『第2の恒大』となることが懸念されており、習近平政権も混乱が市場全体に波及することを警戒している」と報じています。中国不動産業界への不安が、香港や上海の株式市場を動揺させ続ける可能性が高いようです。
当面の日経平均株価の下値メドは「2万6954円」!
今後はこれまで以上に米国株と中国株の動向に気を配ろう
「岸田首相の金融所得課税の増税実施リスク」「米国株安リスク」「中国株安リスク」を考慮すると、当面の日経平均株価に関しては、上値メドは25日移動平均線(4日現在2万9544.29円)です。一方、下値メドは8月20日の安値2万6954.81円です。
今後は、これまで以上に「米国株の動向」と「中国株の動向」に注意を払うことが必要です。そして、「買い方にとってネガティブな状況」と判断したら、買いポジションを躊躇なく手仕舞いましょう。当面は、著名投資のジョージ・ソロス氏の名言「まずは生き残れ、儲けるのはそれからだ」を肝に銘じて相場に臨んでください。
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