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米国では新型コロナウイルスの普及により長期債が売られ、
米国10年債利回りが1.72%まで上昇!
米国では、新型コロナウイルス向けワクチンが多くの市民に行き渡りはじめたことで、経済再開への期待が高まっています。それは景気が強くなることを意味することから、インフレに弱い長期債が売られています。このため、米国の投資家が指標として注目している米国10年債利回りは、2020年8月4日の最安値0.54%から、先週は1.72%まで上昇しました。
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「長短金利差」が拡大したことで純金利マージンが増大し、
ウエルズファーゴやバンクオブアメリカの収益環境が改善
通常、銀行は短期で資金調達し、それを長期で運用します。このため長期と短期の金利差が拡大すると、貸付金利から調達金利を引いた差である純金利マージンが拡大することが期待されます。
連邦準備制度理事会(FRB)が好んでチェックする長短金利差の指標が「10年債利回り−3カ月物Tビル利回り」で、これまで下のチャートのように推移してきました。
「10年債利回り−3カ月物Tビル利回り」は、現在1.73%と、過去のレンジの中央付近に来ていることがわかります。言い換えれば、去年の夏は銀行の利ザヤが極めて縮小した状態でしたが、今はノーマルな状態に戻ったということです。これは、銀行の収益環境が改善したことを意味します。
米国のメガバンクの中で、この長短金利差の拡大により最も恩恵をこうむるのは、バンクオブアメリカ(ティッカーシンボル:BAC)とウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)です。その次にJPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)も恩恵を受けます。
一方、シティグループ(ティッカーシンボル:C)は、グローバル展開している関係で、米国内での貸付け利ザヤの改善の影響は比較的小さいでしょう。
「補助レバレッジ比率(SLR)」の臨時措置が終了しても、
ウエルズファーゴへの悪影響は限定的
FRBは、新型コロナウイルスで経済が暗転した2020年3月に、「補助レバレッジ比率(SLR)の計算をする際は、米国債をリスク資産の計算から除外する」という臨時措置を大急ぎで発表しましたが、先週、この臨時措置を当初の予定通り1年間で終了させることを明らかにしました。
このため、今後はメガバンクが米国債を在庫に持つと、それはリスク資産に計上されてしまいます。メガバンクは「過度のリスクを取ってはいけません!」と指導されているため、米国債がリスク資産に含まれるとなると、今後は米国債をトレードしにくくなります。これは、メガバンクの「稼ぐ力」を抑制させる方向に働くでしょう。
この概念は、少し理解しにくいと思いますので、FX取引に例えて説明しましよう。
ドル/円相場が動きに乏しく、なかなか儲けにくい環境であった場合、普段よりレバレッジを引き上げることで儲けを増幅しようとします。今回、「SLRの計算に米国債も含める」と発表されたことは、FX取引で言えば「レバレッジを落としなさい!」とFRBから行政指導されたのと同じです。
そのため、米国債を活発にトレードしているバンクオブアメリカとJPモルガン・チェースは、せっかく長短金利差の拡大で収益環境が好転したのにSLRの計算から米国債を除外するという臨時措置が終了になったことで、出鼻を挫かれた格好になります。その点、ウエルズファーゴは、あまり米国債のトレーディングに注力していなかったので悪影響が最も少ないと言えます。
「架空口座開設スキャンダル」への罰が解除されれば、
ウエルズファーゴは再び成長軌道に乗ることが可能!
私はウエルズファーゴこそが、今、最も妙味のある投資対象だと考える理由は他にもあります。それは、ウエルズファーゴは架空口座開設スキャンダルの罰として、2018年以降、FRBから「総資産を伸ばしてはならぬ!」という総量規制の対象になっていますが、それが今年のある時点で解除される可能性が高いからです。
FRBは、総量規制解除の条件として「強引な営業姿勢が架空口座開設スキャンダルの原因なので、社内の営業姿勢の改善やコンプライアンスなどの体質を改善すること」という条件を突きつけています。ウエルズファーゴは、それを推進するため、BNYメロンからチャールズ・シャーフをCEOとして招き入れ、改革を進めてきました。
現在、スキャンダルで業績が低迷しているとはいえ、ウエルズファーゴというブランドは、「腐っても鯛」で今でも有名ですし、接客の良さや営業力の強さで知られています。だから、総量規制という“ペナルティー・ボックス”から出してもらうことができれば、ウエルズファーゴは再び成長できると思います。
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⇒米大手銀行の「ウエルズファーゴ」に復活の兆し!? 架空口座スキャンダル発覚以降、業績不振だったが、新CEO就任を機に投資家から見直される可能性が!
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ウエルズファーゴの足下の業績を見ると、2020年第4四半期の決算では、EPSが予想63セントに対して64セント、売上高が予想180億ドルに対して179.3億ドル、売上高成長率が前年同期比−9.7%でした。
純金利マージンは2.13%(前年同期は2.53%)でした。この純金利マージンは、冒頭で説明した長短金利差の拡大により今後拡大する可能性があります。
また、ウエルズファーゴの貸付内容は健全で、第4四半期の損金計上額はわずか5.84億ドル(前年同期は7.69億ドル)でした。ネット・ローン・チャージオフ率(債務不履行となった不良債権の償却率)も0.26%(前年同期は0.32%)と極めて低くなっています。
平均預金残高は1.38兆ドル(前年同期は1.32兆ドル)で、平均融資残高は8997億ドル(前年同期は9565億)ドルでした。つまり、預金が増えて貸付けに回せるお金が増加しているにもかかわらず、融資は総量規制の関係で逆に縮小しているのです。
ウエルズファーゴの第4四半期の総資産利益率(ROA)は0.62%でしたが、これはウエルズファーゴにとってはきわめて不本意な低さだと思います。
【今週のまとめ】
経済再開からの長短金利差の拡大という追い風が吹く中、
総量規制の解除も期待できるウエルズファーゴに注目!
長短金利差が拡大した関係で、現在、銀行が儲けやすい環境になっています。その影響の度合いは銀行によって異なりますが、ウエルズファーゴは最も恩恵をこうむる銀行のひとつです。
また、SLRの計算から米国債を除外する臨時措置が終了したことで、米国債のトレーディングに力をいれているバンクオブアメリカやJPモルガン・チェースは出鼻を挫かれました。一方、もともとトレーディングに強くないウエルズファーゴにとって、悪影響はほとんどありません。
ウエルズファーゴは、過去に起こした架空口座開設スキャンダルの罰としてFRBから総量規制を受けていますが、近くそれが解除されれば再び成長することが許されるので、今後の動向は要注目です。
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