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バイデン米大統領は、5月14日、連邦政府の借金限度額を定める「債務上限」の引き上げを巡り、野党・共和党のマッカーシー下院議長ら米国議会の与野党トップと、16日に再会談する見通しを示しました。
そのバイデン氏は、5月9日、債務上限引き上げを巡る野党との交渉が進展しない場合、 19日~21日に広島市で開かれるG7広島サミットへの対面出席を見合わせ、オンラインでのサミット参加になる可能性に言及していました。しかしながら、同じく5月14日、バイデン氏は18日に広島で日米首脳会談を行い、G7サミットにも予定通り出席する考えを示しました。
バイデン氏は、債務上限の交渉について「私はもともと楽観主義者だ。私たちだけでなく、彼らも合意に達したいという気持ちがあると思う。私たちは合意ができると考えている」と語ったそうです。
また、イエレン米・財務長官は5月13日、米国の債務上限問題を巡る交渉について「進展している」との認識を示しました。
ですが、マッカーシー下院議長が15日、「見解には大きな隔たりがある」と述べたことから、現時点において、私は、そう簡単には合意はできないと見ています。もちろん、バイデン氏の楽観見通しが実現することを望みますが、政治的な駆け引きはまだまだ続くと、慎重に見ておくべきだと考えます。
連邦政府債務の上限が引き上げできず、デフォルトが長期に及べば、
株式相場は45%下落し、830万人が失業する試算に!
ちなみに、米国議会予算局(CBO)は5月12日、連邦政府債務の上限引き上げができなければ、米国が6月の最初の2週間のある時点でデフォルト(債務不履行)する「重大なリスク」があると発表しました。ただし、6月15日以降に税収が入ってくると「おそらく少なくとも7月末まで資金調達を継続できるだろう」とも分析しています。
よって、市場が最初にデフォルトするのではないかと身構える時期は、6月の最初の2週間でしょう。米国政府が何とかやり繰りして、その2週間を乗り越えることが出来たら、次はデッドラインとされる7月末が接近したタイミングで、再び身構えることになると見ています。
なお、米国の大統領経済諮問委員会(CEA)による分析では、最悪シナリオとして、デフォルトが長期に及べば2023年7~9月期に株式相場は45%下がり、830万人が失業、GDP成長率はマイナス6.1%になるとの試算を示しています。だからこそ、ほとんどの投資家がデフォルトの発生確率は限りなくゼロに近いと思っていても「恒例の政治的チキンレースの結果」に身構えざるを得ないのです。
次回6月のFOMCで金利の行方がどうなるのかは、
インフレの高止まりにより、まったく見えない状態に
一方、連邦債務上限問題のネガティブなニュースを受け、消費マインドが冷え込んでいるようです。というのは、ミシガン大学が5月12日に発表した5月の消費者態度指数は、57.7と市場予想の63.0を下回り、2022年11月以来の低水準となったからです。
その一方で、消費者が予想する5年先のインフレ率は3.2%と2011年以来の高水準となりました。また、5月のNY連銀製造業景況指数は、前月のプラス10.8から42.6ポイント低下し、マイナス31.8でした。
製造業の景況感や消費マインドが冷え込んでいるのに、期待インフレ率が高止まりしている状況が続くようだと、今後、米国経済のスタグフレーション(不況とインフレが併存する状態)が懸念されかねません。
また、インフレ高止まりにより、6月13日~14日開催予定のFOMCで金利据え置きとなるのか、それとも追加利上げとなるか、まったくわからなくなってきたと感じています。
ちなみに、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は5月15日、「インフレ率は依然として目標の2%を大きく上回っており、われわれは任務を完了させる必要がある」と述べました。アトランタ連銀のボスティック総裁も同日、「インフレ指標の大半は、依然として当局目標の2倍だ。つまり、残された道のりはまだ長いということだ」と述べました。
今後、6月のFOMCでの追加利上げの可能性が高まるようだと、米国の株式市場が動揺する展開が危惧されます。
米国金融市場を取り巻く環境が不透明ななか、
日経平均株価は右肩上がりでの上昇が継続!
このように、米国経済と米国金融市場を取り巻く環境が不透明なのに、5月に入っても日本株は非常に強い動きを続けています。
日本株上昇の牽引役は、海外投資家です。5月第1週(1~2日)の投資部門別株式売買動向を見ると、海外投資家の買い越し額は1602億円で6週連続の買い越しでした。海外投資家は6週間で、2兆3180億円も買い越しました。今後に関しては、海外投資家の買いが細ったり売り転換したりするようだと、需給面から今回の日本株の上昇局面はいったん終了すると見ています。
日経平均株価については、5月16日の終値が2万9842.99円で、一時は2万9916.56円と3万円の大台目前まで上昇しました。
テクニカル的に見ると、5日移動平均線(16日現在2万9421.31円)、25日移動平均線(同2万8693.41円)、75日移動平均線(同2万7972.28円)、100日移動平均線(同2万7583.86円)、200日移動平均線(同2万7647.57円)のすべてを上回っています。また、4月17日から5月16日まで、25日移動平均線は19日連続で上昇し、中期の上昇トレンドが継続中です。
※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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日本株の過熱感が警戒されるなか「低PBR銘柄」や
「高配当利回り銘柄」のうち業績の良い銘柄を保有しよう!
ただし、足元の日経平均株価は一本調子で上昇してきており、短期的な過熱感は否めません。このため、今後「日経平均株価が5日移動平均線を下回り、かつ5日移動平均線自体が下向き」の状況になるケースでは、それなりの値幅を伴った調整が始まると覚悟しておきたいと思います。そして、その場合は「守り重視の運用」に切り替えることをおすすめします。
なお、仮に調整がスタートしたら、6月9日の先物・オプションのSQ算出日前後まで続く可能性が高いとも考えています。逆に言えば「日経平均株価が5日移動平均線を下回り、かつ5日移動平均線自体が下向き」になるまでは、現在の上昇トレンドが継続すると見ておくべきと考えています。
調整入りのきっかけとして一番可能性が高いと見ているのが「債務上限の引き上げ問題を主因にした、米国の金融市場の混乱」です。このケースでは、現在“カンカンの強気”になっている感のある海外投資家も流石に“リスクオフ”になり、日本株を売り越してくると考えます。
なお、足元の日本株の上昇ピッチの速さの主因は、海外投資家の積極的な先物買いと観測されています。このため調整が始まれば、6月のSQに向けて、先物の買い方の手仕舞い売りが加速して、裁定解消売りやヘッジ売りが誘発され、結果として値幅を伴った調整に発展するリスクは決して低くはないと見ています。
正直なところ、調整を入れながら上昇してきていたら短期的な急落を危惧する必要はなかったのですが、4月下旬からこれまでの上昇がほぼ一本調子で、かつ上昇ピッチが速く、「先物を中心とした踏み上げ相場」の様相を呈しているため、先物の売り方の買い戻しが一巡したら、先物市場の需給が劇的に悪化するケースを心配しておく必要があるのです。
こんな相場環境ですから、資産面で割安な「低PBR銘柄」や、配当利回りが下値サポート要因になる「高配当利回り銘柄」のうち、好業績が見込め、チャートも良好(例えば、株価が少なくとも25日移動平均線を上回り、かつ25日移動平均線自体が上向き)な銘柄を中心に物色することをおすすめします。
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