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人工衛星の数が2030年までに2万基を超えると予想されるなか、
甚大な衝突被害を引き起こす「スペースデブリ」の問題が深刻化!
2013年に公開されたSF映画「ゼロ・グラビティ」を観た方もいるかと思いますが、この作品はスペースシャトルから出て船外活動をしていたところに「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」が飛来し、無重力空間(ゼロ・グラビティー)に放り投げ出された宇宙飛行士の物語でした。このスペースデブリの問題は、映画のなかだけの話ではありません。現実世界においても、2019年までに、国際宇宙ステーション(ISS)には1400個以上の隕石とスペースデブリが衝突しているようです。
スペースデブリとは、地球の周りの宇宙空間に浮かぶ人工物のゴミのことです。国際機関のスペースデブリ調整委員会は、2002年にスペースデブリについて「機能していないすべての人工物体(その破片および構成要素を含む)で、宇宙空間にあるか、または大気圏内に再突入するもの」と定義しています。
具体的には、使用済み、または故障して活動を停止した人工衛星や打ち上げ後に切り離された使用済みロケット、さらには、それらのボルトやナットなどの部品、爆発や衝突により発生した破片などが考えられます。一方、人工物ではない隕石などはスペースデブリに該当しません。
米国のスペースX社をはじめとした民間企業の台頭や、多くの新興国の宇宙分野への参入により、現在、約9000基あるとされる軌道上の人工衛星(稼働停止したものも含む)は2030年までに2万基を超えると予測されていますが、それに伴ってスペースデブリによる衝突事故のリスクも増大しています。
今の我々の生活は気象衛星やGPS衛星などさまざまな人工衛星に支えられており、それらを抜きにしては考えられないでしょう。新たな人工衛星はもちろんのこと、すでに打ち上げられた人工衛星も寿命による機能停止や故障の発生があるため、代わりとなる人工衛星を計画的に打ち上げる必要があります。しかし、スペースデブリが増えて人工衛星との衝突頻度が高まると、人工衛星を宇宙に送ること自体が困難になりかねません。
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一部の「スペースデブリ」が大気圏で燃え尽きず、
地上の民家に落下して深刻な被害が発生したケースも!
スペースデブリは、人工衛星にとって脅威というだけでなく、地球の重力に引かれて地上に落下し、人的被害を招く危険性もはらんでいます。地球に落下するスペースデブリの多くは大気圏内で燃え尽きますが、燃えにくい材質を使用した部品や大きさが巨大な場合は、燃え尽きずに地上に落下する可能性があります。現に2024年3月、ISSから廃棄された貨物パレットの一部と見られるスペースデブリが、米国のフロリダ州の民家に落下するという事故が発生しました。
スペースデブリのやっかいなところは、新たな人工衛星やロケットを打ち上げなくても、自然発生的に増殖する可能性があるところです。地球の軌道にはすでに数多くのスペースデブリが存在しますが、それが人工衛星などに衝突することで新たなスペースデブリが発生し、それがまた新たな衝突を起こし……とスペースデブリが連鎖的に増殖するリスクも危険視されています。
スペースデブリは、私たちが宇宙を利用していくうえで避けては通れない人類共通の課題と言えるでしょう。そこで、今回は「スペースデブリ処理」関連に注目。銘柄としては、スペースデブリの処理に関わる事業を行っている企業のほか、関連技術を有している企業から選定しました。
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【日東製網(3524)】
漁網の技術を活用したスペースデブリ除去用の「ひも」を開発
日東製網(3524)は、土砂崩れ防護用ネットなどの網・ネットを幅広く手掛ける日本有数の漁網メーカーです。宇宙分野では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、漁網で培った技術を活用したスペースデブリ除去用の導電性網状テザー(ひも)を開発し、現在、実用化に向けて取り組んでいます。株価は、3月29日につけた高値2059円をピークに調整が続いていますが、下値支持線として意識される13週移動平均線まで下げてきたことから、リバウンドが期待されます。
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【大興電子通信(8023)】
スペースデブリ観測システムや高精度軌道決定システムなどを運用
大興電子通信(8023)は、富士通系のシステムインテグレータです。JAXAの筑波宇宙センターにおいて、人工衛星追跡管制軌道力学系の運用業務や、スペースデブリ観測システムと高精度軌道決定システムの運用・解析業務などを手掛けています。株価は、2023年11月に株価水準を切り上げ、3月29日には一時1141円まで買われました。その後は調整が続いていますが、上向きで推移する26週移動平均線が下値支持線として機能しており、押し目狙いのタイミングと言えるでしょう。
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【浜松ホトニクス(6965)】
レーザー装置向けの空間光制御デバイス(SLM)を開発
浜松ホトニクス(6965)は、光電子増倍管で世界シェアを誇る企業です。2022年4月、独自の光半導体製造技術により、有効エリアサイズを従来開発品の約4倍まで大型化し、かつ耐熱性も高めた世界最大級となる液晶型の空間光制御デバイス(SLM)の開発に成功。このSLMは、レーザーの照射パターンを自由に制御するために必要なデバイスとなります。そのほかにもレーザー関連製品を手掛けており、レーザー照射を利用したスペースデブリ除去技術への思惑が高まりそうです。株価は、2023年5月の高値7590円をピークに調整が続いていましたが、足元のリバウンドで上値抵抗線として意識される13週・26週移動平均線を捉えてきているので、上昇トレンドへの転換に期待したいところです。
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【ニコン(7731)】
米国の宇宙航空機部品の受託加工会社「Morf3D」を子会社化
ニコン(7731)は、カメラで知られる光学機器の大手です。宇宙関連製品としては、高精度な光学設計・加工技術を駆使し、衛星センサー用の光学系や天体観測機器などを手掛けています。2021年4月には、宇宙航空機部品の受託生産において全米トップクラスに位置づけられているMorf3D(モーフ3D)を子会社化しました。株価は方向感がつかみづらいところですが、1500円付近での底堅さが見られ、26週移動平均線が下値支持線として機能しているので、押し目狙いのスタンスで。
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【スカパーJSATホールディングス(9412)】
レーザーによるスペースデブリ除去事業のスタートアップを設立
スカパーJSATホールディングス(9412)は2024年1月、宇宙ビジネスに関してさらなる事業領域の拡大を目指し、スタートアップ企業Orbital Lasers(オービタル・レーザーズ)を設立。レーザーによるスペースデブリ除去事業や、高精度で地表面の情報を提供する衛星ライダー事業の研究開発に取り組む計画となっています。株価は年初以降、強いトレンドが継続し、3月25日には1107円まで上昇。その後は調整が続いていますが、13週移動平均線が下値支持線として意識されやすく、リバウンド狙いのタイミングになりそうです。
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【川崎重工業(7012)】
デブリ捕獲システム超小型実証衛星「DRUMS」を開発
川崎重工業(7012)は2024年3月、自社開発したスペースデブリ捕獲システム超小型実証衛星「DRUMS」を軌道上で運用し、仮想デブリを自律的に追尾・接近して捕獲機構を伸展する技術実証に成功しました。今後は実証で得られた成果を活かし、スペースデブリ除去を含む軌道上でのサービスの実現を目指します。株価は2月以降に上昇トレンドが強まり、3月27日には一時5137円まで買われました。その後は調整を見せたものの4700円近くでの底堅さが見られており、煮詰まり感が出てきています。今後、この膠着した状態から上放れれば、大きな株価上昇が期待できるでしょう。
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以上、今回は「スペースデブリ処理」の関連銘柄を発掘しました。
現在のところ、実際にスペースデブリの処理に取り組む民間企業は、世界を見渡しても日本発のベンチャー企業であるアストロスケール1社だけです。スペースデブリ処理の市場はいまだ草創期にあり、現時点で大きな市場性があるとは言いきれません。
しかし、米国政府が2022年9月、任務を終えた低軌道衛星について5年以内に燃え尽きる“廃棄軌道”に移すことを義務づけるなど、スペースデブリ処理を巡っては各国でルールづくりが進んでいます。各国政府による規制の整備の進捗によっては、近い将来、「スペースデブリ処理」の大きな需要が生まれることが期待されるので、今のうちにチェックしておくことをおすすめします。
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