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日経平均株価は8月5日に史上最高の下落幅を記録!
利上げ発表からわずか3営業日で終値で7000円近くも下落!
日経平均株価は8月2日に2216円、5日に4451円と2日続落、翌6日に3217円の反発と歴史的な急変動となりました。今回は株式市場で何が起こったのか、また、そのなかで個人投資家はどう行動すべきなのかを解説したいと思います。
8月5日、日経平均株価は暴落し、終値は前週末比4451.28円(12.40%)安の3万1458.42円でした。下げ幅は過去最大だったブラックマンデー翌日の1987年10月20日の3836.48円を上回り、下落率は1987年10月20日の14.90%に次ぐ史上2番目の大きさです。
また、日経平均株価は8月1~5日まで3営業日続落し、終値ベースで下落幅7643.40円、下落率19.55%を記録しました。わずか3営業日で、投資環境が天国から地獄に一変したと言えるでしょう。
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チャート見ると、2023年末の大納会の終値3万3464.17円を下回り、2024年に入ってからの上昇分をすべて帳消しにしています。
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「円キャリートレードの解消」による急激な円高が、
外需株の値動きに左右されやすい日経平均株価の急落の要因に
今回の相場急変の需給的な主な要因は「円キャリートレードの巻き戻し(解消)」が発生したことです。
円キャリートレードとは、金利が低い円建てで資金を借り入れ、その資金を金利の高い外貨に転換(円売り外貨買い)して、外国債券や外国株式、原油などの商品先物、海外不動産運用など、さまざまな金融商品に投資する取引です。
円キャリートレードでは、日本の金利が上昇したら借り入れコストが上昇します。すると多くの場合、投資対象だった外貨建て資産が売却され、そこで得られた外貨が円に戻され(円買い外貨売り)、円建ての借り入れが返済されます。この「円買い外貨売り」が、外国為替市場での円高要因となりました。
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そして円高が進むと、日本では輸出関連企業の収益悪化が懸念され、電機株やハイテク株のような外需株の株価が下落し、その結果、電機・ハイテク株の影響が大きい日経平均株価を強烈に押し下げることになります。
「日本株の信用買い残の増加」による追い証絡みの売りや
米・雇用統計の結果による「米国の景気悪化懸念」も影響を及ぼす
また、信用買い残の増加も日経平均株価の下落を後押ししました。
7月26日時点の信用買い残は4兆9808億円と、2006年6月以来、約18年ぶりの高水準でした。このような状況で日本株が急落したため、追証絡みの売りが加速し、「下がるから売る、売るから下がる」という負の循環が8月5日まで続きました。その結果、レバレッジを効かせた投資家の多くが致命的な損失を被った可能性が高いと推察しています。
さらに、米国の景気悪化懸念も影響しました。
8月2日に発表された7月の米・雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月に比べ11万4000人増と、市場予想の18万5000人増を大きく下回りました。また、失業率が前月の4.1%から4.3%に上がった結果、「直近3カ月間の平均失業率が過去1年の最低値を0.5ポイント上回ると、景気後退が始まった可能性が高い」という「サーム・ルール」が意識されました。
米国の労働市場の想定以上の軟化を受け、市場では「FRBが9月や11月のFOMCで通常の2倍幅となる0.5%の利下げを実施する」との観測が浮上しています。このため、8月5日の米国10年債利回りは一時3.66%と、2023年6月以来、およそ1年2カ月ぶりの低水準をつけました。また、金融政策の影響を受けやすい2年債の利回りは一時3.65%と、2023年5月以来、およそ1年3カ月ぶりの低水準となりました。
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この米国の長短金利の低下も、先述した「円キャリートレード解消」が起こった一因です。
日銀の「意表をついた利上げ」と「タカ派姿勢」が
米国の金利低下を招き、日経平均株価暴落のきっかけに
ただ、米国の金利低下が背景にあったとはいえ、今回の「円キャリートレード解消」のきっかけは、日銀の意表を突いた利上げと、植田総裁が今後も利上げを続ける姿勢(タカ派姿勢)を示したことで間違いないと思います。
日銀は、7月31日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決めました。そして、植田総裁は「現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、今回示した経済物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べ、さらなる金利の引き上げもあり得るとの考えを示しました。
この日本の金利上昇への思惑が「円キャリートレード解消」のきっかけとなり、ひいては、今回の日経平均株価の暴落へとつながったと見ています。
日経平均VIは8月5日には一時「85.38」まで跳ね上がるも、
翌6日には終値で「51.19」と徐々に落ち着きを見せる
日経平均株価が暴落した8月5日は、日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)が前週末比41.25(140.12%)高の70.69に跳ね上がりました。
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この日経平均VIは「日経平均株価が将来1カ月でどのくらい変動するかを推定した数値」で、通常は20~30ポイント程度のレンジ内で推移しています。しかしながら、日経平均株価が大きく下落して投資家の不安心理が高まると、数値が急上昇します。
日経平均VIは、急上昇後にはその高水準にそれほど長く留まらず、しばらくすると通常のレンジ内に戻っていく傾向があります。8月5日に異常値(5日の高値は14時53分の85.38)をつけたことで、今後、日経平均VIは、通常の20~30ポイント程度のレンジ内に戻っていく可能性が高いと見ています。実際、翌6日の日経平均VIは、終値で51.19まで下落しました。
よって、日経平均株価の値動きも徐々に落ち着いていくことになるはずです。
8月6日の急上昇は「ベアマーケット・ラリー」なので、
日経平均株価に対して安易に「強気」になるのは厳禁!
テクニカル的には、8月5日の安値3万1156.12円が当面の底値になったと見ていますが、日経平均株価は200日移動平均線(8月6日時点で3万6866.96円)を2日時点で割り込んだので、現在は中期の下落トレンドが発生中だと考えられます。このため、日経平均株価が少なくとも200日移動平均線を上回るまでは、慎重な運用スタンスを崩さないことをおすすめします。
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なお、8月5日までの急落の反動で、それなりの規模のリバウンドが発生する見通しですが、安易に強気になるべきではないと見ています。というのは、そのリバウンドは「ベアマーケット・ラリー(弱気相場の途中で発⽣する一時的な上昇相場)」の可能性が高いからです。
例えば、8月6日の日経平均株価の終値は4営業日ぶりに大幅反発し、前日比3217.04円(10.23%)高の3万4675.46円でしたが、このような急落後の急反発が「ベアマーケット・ラリー」です。
先物を売り建てていた投資家や、個別銘柄を空売りしていた投資家からの利益確定の買い戻しに加え、「バーゲンハンティング(暴落時に株を買う)」狙いの投資家の買いが一斉に入り、日経平均株価が急反発しただけのことです。
「日銀の政策スタンスが“マーケットフレンドリー”に変化した」とか「FRBが緊急利下げを行う」など、政策当局のスタンスに大きな変化・改善が見当たらないなかでの単なる「短期的な売られ過ぎの修正高」に過ぎません。このような「ベアマーケット・ラリー」では、粛々と買いポジションを決済して現金比率を高めていくことをおすすめします。
それにしても、8月1~5日のような規模の暴落はなかなか体験できるものではありません。しかしながら、あのような急落があっても大丈夫なような「資金管理(リスク管理)」が、投資家には求められるのです。常に最悪のケースを想定したうえで相場に臨むことを心掛けてください。
当コラムの読者の方には株式市場で生き残り、かつ成り上がっていただきたいので、くれぐれもリスク管理を徹底した運用を行ってください。
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